クロネコMMA図書館🐾

ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

【10年後は】『MMAってスポーツなの?』という事を考えてみるひとりごと。【どーなってる?】


これからのMMAについて、いちファンの個人的な展望です。
テーマは「MMAってスポーツなの?」。


「スポーツ」は本来「ルールに基づいて身体や頭脳を動かして遊ぶこと」全般を指します!
頭脳を使うスポーツを「マインドスポーツ」、身体を使うスポーツを「フィジカルスポーツ」と呼んで区別しますが、じゃんけんからかけっこまで、本来はとっても広い意味があります。

わたしが思うに、「スポーツ」と呼ばれるものは以下の3点が守られています。

①「お互いに楽しみ、お互いに讃え合う」ことが大前提としてある。
楽しむことはスポーツにおいて何より大切な事です。
ただし「自分だけが楽しい」ことと「楽しいスポーツである」こととは違います。
大事なのは「一緒にやろう!」という「相手と一緒に楽しむ」という気持ちです。
特にフィジカルスポーツでは怪我がつきものですから、相手を敬う気持ちはとても大事ですね。

②共通した「試合形式」と「判定基準」があり、優劣をつける場合は「得点」によって「加点」または「減点」が判定される。
難しい感じがしますが、要は「どっちにも点がちゃんと入って、どっちからもちゃんと点を引く」ということです。

③公式の「試合」として結果を残す場合は、得点とその採点経過は正しく明示され、判定基準に基づき説明される必要がある。
あくまでも「試合(ゲーム)」としてやる場合。遊びとしてだけなら必要ないです。
「何点とって何点とられたからこういう結果になりました」ということを誰にでも自信を持って伝えられないと、「試合結果」としては説得力がないです。

これら3つのことを守って行われると、「これはスポーツだ!」と感じます。
2つしか守られなかったときは「これ、スポーツかな?」と感じます。
1つしか守られていない、またはまったく守られていないと、「スポーツじゃないなコレ!」と感じます。
かるたや徒競走、玉入れなんかをイメージしてもらえると、なんとなく言いたいことを感じてもらえるのではないでしょーか。


で、MMAです。
MMAって何なん?というのはまた別の機会に置いとくとして。
そもそもコンバット・スポーツ(格闘技)というものは、伝統的なマーシャル・ア-ツ(武術)や近代的なコンバット・テクニック(格闘術)といった実戦のための戦闘術を「スポーツ」として楽しもうぜ!というものであります。
そんなビックリなコンセプトから始まっているので、
①そもそも「相手の命を奪う、又は自分の命を守る」ことを本質とする戦闘術を、「楽しむ」ことができるのか?
②「ダメージを与え合う」という特異な性質を、どこまで明確に得点化できるのか?
③同様に、どのように得点化したものを配点し、結果として表明すればいいのか?

といった感じの問題が出てきます。じゃんけんのようにはいかないですね。特に①はとっても大事です。

それに対して、わたしの回答はだいたいこんな感じになります。
①「一対一の疑似生存競争(サバイバルゲーム)」としての楽しみ方と讃え合い方がある。
「生き残るためにいかに的確で迅速な選択をするか」ということが転じて「どう生きるか」に繋がる。
実際に傷つき、傷つけ合う格闘技がそれ以外のスポーツと一線を画す部分であると感じます。
つまり「痛みを越える」精神性の鍛錬と、「相手を超える」練磨された技術による現状打破が格闘技の楽しみであり、試合という「疑似的危機空間」の中で自分をさらけ出し合うことにより、互いを讃え合うことを目指す、ということです。
「命を奪わず命を奪い合うスポーツ」が格闘技であるということであります。大事なので長くなりました。
②攻撃時の接触(コンタクト)に注目し、成功と失敗の是非よって加点または減点を行う。
格闘技は基本的に「一対一形式」で行われるスポーツです。
その中でルールに定められたまたは禁止されていない「攻撃」を「得点化」することでスポーツとしての基盤を作ります。
一対一でやるものですので接触すること=攻撃(得点)のチャンス」となります。
接触が得点になる」ものと「接触してからの攻撃が得点になる」ものの二種類があります。
前者が打撃(ストライキング)によるもので、後者が組技(グラップリング)によるものです。
③成功した攻撃の回数、部位、効果性をもって配点し、最終的な評価とする。
評価基準は大きく分けて3つあります。
❶「攻撃」を何回成功させたか。
❷「攻撃」をどの部位に成功させたか。
❸「攻撃」を成功させた結果、どの程度相手を危機的状況にさせたか。
格闘技の特徴として❸があります。❶と❷は多くのスポーツで見られますが、❸は格闘技にしか無い得点基準ですね。
❸は簡単に言えば「完全決着(フィニッシュ)したか?」ということです。生き残りへの最も近道は相手をフィニッシュする、つまり相手を肉体的、精神的に追い詰めて「参った」させるということです。
そうして相手を追い詰め切った場合はそれまでの得点に関わらず完全決着が最も尊重される評価となり、「絶対評価」として試合が終了します。
逆に勝負が拮抗し❶と❷の特典が互角になったときには、どちらがより長く、より深く相手を追い詰めたかという❸が最も有力な得点評価基準となります。


これらを踏まえて、MMAの代表格であるUFCを見てみます。
①州アスレチック・コミッション管理課のもと、「MMAの安全なスポーツ化とその促進」を大前提に掲げている。
UFCが常に前面に押し出していることがまさに「これは安全なスポーツなんだ!」ということです。
上記の通り、格闘技は戦闘技術の本来の目的から脱却した戦闘技術交流であり、この「安全である(それを可能な限り保障する)」ということが「スポーツ」として大前提に必要です。
さらに思うのは、UFCが生まれたUSAは「暴力が隣人として出歩く国」であり、格闘技をスポーツ=遊びとすることには想像以上の壁があるのではないか、ということです。
日常的に暴力が隣にあるからこそ「そんなもん(暴力)とMMA(スポーツ)を一緒にするんじゃねぇ!!」という意志を明確に形にして提示していかなければならないのだと思います。
MMA統一ルールに基づいた、「打投極」3分野の成功と失敗による加点・減点
MMA統一ルール(Unified Rules of Mixed Martial Arts)には明確な得点基準は表記されていませんが、格闘技の接触による3つの分野の得点基準が用いられています。
[打]拳、肘、膝、足の4つの部位における相手の頭、胸、腹、椀脚への接触(打撃)の成功による加点。
(反則部位への打撃は失敗とし、減点および失格の対象となる)
[投]相手の首、胴、腰、腕脚に接触してからの投げ技により、胴または尻を地面に接触させることによる加点。
(場外への投げまたは後頭部を接触させる投げは無効または減点および失格の対象となる)
[極]なんらかの接触状態から、相手の頭、腹、背中に自身の胴または脚を接触し動きを封じる、または相手の頭、首、胴、腕脚に負荷を加え戦闘不能にすることによる加点。
(反則部位への負荷、また反則とされる方法での負荷は減点および失格の対象となる。)
③10点式マスト判定によるKO(ノックアウト)、一本(サブミッション)、判定(ディシジョン)の結果表示
10点式マスト判定(ten-point must system)とは、互いにラウンドごとに10点を持ち点とし、相手の加点により「減点」していくことで点差をつけ、全ラウンド終了時に各ラウンドの点数を「合計」した結果を表示する判定方式のことです。よくある10-9とか10-8とかいうアレです。10-8ならラウンドを取った方の選手が「2点分の優勢」を取ったということです。
「マスト」というのは要するに「各ラウンドで可能な限り点差をつけなければならない」ということです。いろいろ説明するとかなりめんどくさいのでやらないですが、MMAでは基本的に必ず勝者が決まるような採点方式になっているということです。(ドローが無いっていうわけではないです)
で、これが一見良いような感じなんですが、実は問題点がかなり多いです。というのもこの方式はボクシングの判定方式をそのまま持ってきて突っ込んでるものなんですが、ボクシングにある「ダウン」という点数形式がMMAには無いのです。また、投げ技のいわゆる「一本」も無ければ、関節技の「キャッチ」という点数形式も無いです。
そのような「試合の途中ストップがほぼ無い」ことがMMA最大の魅力なのですが、こと「スポーツの採点」を考えたときには非常にめんどくさいですね。なにしろ明確な点数基準が「誰も分からない」!なんじゃそりゃって感じですが、ダウンや一本、キャッチの感覚はみんななんとな~くあるため、「あ、これダウンだな。あれは一本かな?」みたいな感じで見て、決めるわけです。
要するに「点数方式を採用してるけども各攻撃による点数は各採点者次第」ということです!
さらに他にもヒット数の判定だの支配時間の判定だの各効果技の点数差だの指摘すればきりがないのですけれども、ここで書き切るのはとても難しいので今は置いておきます。


と、いうわけで「MMAってスポーツなの?」ていうテーマへのわたしなりの勝手な回答では…
①と②は不十分ながら将来に期待が持てる感じですが、③はまだまだ長~い道のりを登るレールが敷かれたっていうくらいだと思います。
なので、MMAは、スポーツ!…かな~?」くらいではないかと、思います。
超歯切れ悪い答えですが、これが現状だよな~と感じます。
わたしとしてはUFCが進めているMMAスポーツ化は最高にCool!!だと思いますし、超応援してます。超応援してます(二回目)。
MMAが「今のまま」スポーツ化すれば、それは格闘技の完全スポーツ化に他ならないからです。
こんなややこしいものを完全にスポーツにできちゃったらもうそりゃ歴史的偉業意外の何ものでもないです。
なんといってもいつ壊れるかもしれない橋を渡りながら、「メジャースポーツ化」を諦めず歩んできたZUFFA社の「開拓精神(フロンティア・スピリッツ)」には素直に感銘を受けていますし、この精神が消えぬ限り、更なる進化をしてくれるという期待もあります。

言いたいことは何かというと、何かとメジャースポーツ!といって不動の地位っぽいMMAUFCですが、その実はスポーツとしてのアイデンティティすらまだあやふやで、それを皆で頑張って、頑張って、頑張ってなんとか「史上最高のスポーツ」にしていこうぜ!ってやっているのが現状だと思うのです。
それはあと10年後にMMAが存在していれば、スポーツになれるかもしれなくもないんじゃないかな?というくらい、途方もなく大変なことだと思いますし、でもそれを澄まし顔でチャレンジしていく今のMMAを取り巻く姿勢は素晴らしいと思いますし、だから応援していきたい。
日本の総合格闘技の道は、この「MMAスポーツ化への挑戦」という野望に乗っかって共に協力し高め合うか、「スポーツとしての要素」を捨てて独自のシュートスタイルを作り貫いていくかの二択だと思いますし、どちらをとってもそれは良いことなのだと思います。

果たしてMMAは10年後も生き、「スポーツ」と認知されるのか。それは今の決断と開拓が決めていくのだと、これを書いていて思ったのでした。