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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

【日本MMA】ザ・グレイテストファイト・オブ・ジャパン2013 上半期【名勝負】

今年の上半期に日本で行われた総合格闘技の試合の中で、特にお気に入りの試合の感想をまとめてみました。
せっかくなので苦手なランキング形式に挑戦してみました。予想通り10試合に絞れません!(笑)

1位

[バンタム級]
堀口恭司 vs. 石渡伸太郎
(『VTJ 2nd』6月22日, TDCホール)


「Sougou」を「MMA」に変えた二人。目には見えない堀口の「日本最強」のベルト。

キング・オブ・パンクラシストとして修斗王者を倒すために敵地に単身乗り込んだ石渡の漢気とオールラウンドな支配力。そして本陣の王者として彼の猛攻を跳ね除け一気に斬り裂いてみせた堀口の爆発力と強い意志。
両者の全身全霊の戦いは、ショー要素を色濃く残す日本の"Sougou"から放れた"MMA"…つまり打投極の回転の中で心技体を競い合うという総合格闘技修斗)の本質であり理想形…の片鱗を垣間見ることができた勝負でした。まだ「"Sougou"のアメリカ風味版」という印象を受けるVTJの中でひときわ輝く戦いで、そこには目には見えないものの確実に日本バンタム級頂点の座がありました。
二人の流した血と汗によって作られた頂点を形有るものにする為にも、VTJのベルトを作ってほしいとすら思いました。場を作るのが団体とファンであるなら、それを輝かせるのは選手です。エンターテイメントとしてのSougouは嫌いじゃないですし、真摯に追求すればそれもまた一つの「道」であると思います…が、MMAでアスリートとして勝つということをテーマに道を進むのであれば、どんな道筋であれもう一度原点に立ち返り、成すべきことを示す必要があると考えますし、私はそのようなMMAのファンです。VTJが今のコンセプトを貫くなら、選手の「刹那的な輝き」を見出し、"Sougou""MMA"に生まれ変わらせる可能性を広げるような団体になってほしいです。

2位

[ヘビー級]
マーク・ハントvs.ステファン・ストルーフェ
(『UFC on Fuel TV 8』3月3日, さいたまスーパーアリーナ)


正真正銘のヘビー級トップ戦線対決。諦めないハントの拳が摩天楼を打ち崩す。

K-1で一番好きだった選手がマーク・ハントで、UFCヘビー級で最も期待してる若手がストルーフェだったので、試合が生で観れるだけでもうお腹いっぱいなカードでしたが、試合内容もまたドラマチックでありつつ残酷なものでした。
ハントは生粋のキックボクサーです。今でもそうです。しかしUFCで「勝つために」、様々な局面での対処力を鍛えてきました…すべては「KOで勝つ」ために。これはMMAの本質を見事に捉えていると思いますし、ハントはやはり生粋の戦士なのだな、と感じました。口で覚悟を言うのは誰でもできますが、実戦でそれを証明できるのが戦士であると思います。それはシガーノとの決戦に敗れ、足を大きく傷つけた今も変わりません。
そして初来日戦で敗れ深い傷を負った若き柔術摩天楼」ストルーフェ。全体重を一本の腕に浴びせる必殺「摩天楼十字」を代表とする彼の長身を活かしたテクニックは唯一無二の武器であり、しかしその若さ故か心の乱れの針が多きく揺れ動いてしまうこともありました。3R開始前の疲労しきった表情。そして追い詰められた時の相手の土俵で打ち合ってしまった現実。そして顎の骨折と心臓の病が今彼を襲っています。
勝利と敗北は傷を生み、勝利した者はより大きな「壁」へ立ち向かう業を背負う。ヘビー級の激闘の裏で「頂点」を勝ち取るコンバットスポーツの残酷な本質を垣間見ることのできる試合です。

3位

[バンタム級]
水垣偉弥 vs. ブライアン・キャラウェイ
(『UFC on Fuel TV 8』3月3日, さいたまスーパーアリーナ)


日本大会で勝つ!"インテリジェント・スナイパー"ガッキーがメジャー初連勝で男泣き!


2012年3月の日本大会で"神風"カリアソのアグレッシブな打撃により判定負けとなったガッキー。岡見に続き2009年よりメジャーリーグで戦い続ける粗削りかつピンポイントな打撃を持つ日本の金網育ちにとって、2013年3月の日本大会はリベンジの舞台でもありました。
対戦相手のブライアン・キャラウェイは試合でパズルのように関節技を組み立て続ける"サブミッションパズル・アーティスト"であり、打撃×寝技の趣旨がはっきりと分かりやすい試合になると予測していました。
しかしやはりそこはUFC打撃でも攻め立てるキャラウェイにガッキーも踏み込み切れず、2Rには遂にヒットを受けダウンキャラウェイ得意の極め技の波状攻撃に引きずり込まれますが、耐えて、耐えてここを凌ぎきったガッキー。3Rには固さを吹きとばし怒涛の攻めを続け、ギリギリの勝利を手繰り寄せました。
これまでメジャーリーグでは一勝一敗を繰り返していたガッキーですが、この勝利でついに連勝を果たしました。次戦もいよいよ今週末。「UFC Fight Night 27」で"メキシコの新風"エリック・ペレスと対戦します。勢いに乗る新鋭に対し、先輩メジャーリーガーとして堂々と立ち会ってほしいと願っています。
※作成中に試合が終わってしまいました。気迫溢れる堂々とした立ち会いで見事判定勝利!!
いよいよ3連勝で次戦はランカーとの対戦となるでしょう。ガッキーおめでとう!!!

4位
[ライト級]
徳留一樹 vs. クリスチャーノ・マルセロ
(『UFC on Fuel TV 8』3月3日, さいたまスーパーアリーナ)


メジャーデビュー戦で闘志爆発。諦めない試合を魅せた日本大会「陰の主役」徳留。


UFC日本大会という大きなチャンスを見事に白星で決めた徳留の気持ちが伝わる名勝負です。マルセロは母国ブラジル大会だったとはいえ"狂犬"リザ・マダディとガッチリ組み合い殴り合いを制したブラジルMMAの重鎮の一人。打ち気の強さと寝技での実力差から不安も多かったのですが、その不安を跳ね除けるファイティング・スピリッツを魅せてくれました。序盤に良いヒットを食らうも下がらずに組み合いをしかけ何度もテイクダウンを取ると、マルセロのガードを怖がらずにパウンドを打ちこみ試合の流れを掴み、価値ある判定勝利を掴みました。残念ながら次戦のベガス大会で行われたノーマン・パーク戦では、パークのキレのあるヒット&アウェイ戦法と根性の前に主導権を奪い返せないまま判定で敗れてしまいました。次戦はサバイバル戦となるため、ポテンシャルの高さを活かせるような技の引き出しをたくさん増やして、対戦相手に策を作らせない・策にハマらない戦い方を目指して欲しいです。

5位
トリプル受賞。

[バンタム級(56kg級)]
渡辺健太郎 vs. 清水清隆
(『修斗 3rd 2013』7月27日, 後楽園ホール)


"直心会の乱射砲"渡辺の本領発揮。KOP清水との「動vs.静」の高速打撃戦を制す。


パンクラス王者として5連続防衛を重ね、修斗では挑戦者として裸一貫で闘う"修行僧"清水。対する渡辺は前戦で寝業師の飛猿No.2のロングフックでKO負けを喫し、汚名返上のビッグマッチとなりました。開始早々切り裂くようなステップから強烈なオーバーフックで清水を吹き飛ばす渡辺と、真っ直ぐなストレートで渡辺を正確に射抜く清水という正反対の打撃の応酬となりました。判定では清水のディフェンスを掻い潜りボディ、アッパー、フックと巧みなコンビネーションで地道にヒットを重ねた渡辺がギリギリの勝利を手にしました。
渡辺のラッシュの速さと地道に削るボディが如何なく発揮された試合でした。次戦は是非とも神酒×飛猿の間で決まるバンタム級チャンピオンに挑戦させてほしいです。敗れた清水もすぐさま9月の『PANCRASE 252』で山本篤との防衛戦が決定。果たしてこの決断は吉と出るのでしょうか。
※作成中に山本の負傷によりチャンピオンシップが延期となりました…。残念ではありますが、清水の渡辺線でのダメージを考えると結果的により万全の状態でチャンピオンシップが行われることになったのではないかと思います。

[ウェルター級, 次期挑戦者決定トーナメント決勝戦]
鈴木槙吾 vs. 大類宗次朗
(『PANCRASE 245』2月3日, ディファ有明)


"野生児"鈴木 vs. "サイボーグ"大類。ベルトを目指す二人の精神力が激突した決勝戦


"不落城"KOP佐藤の連続防衛により拮抗したウェルター級戦線の活性化の為、2012年より開催されたトーナメント。二度目の挑戦を狙う大類の"サイボーグ"とも称される不動の体躯から放たれる精密フックが鈴木を捉えていきます。リーチ差のある打撃に苦戦する鈴木ですが、自ら踏み込むタフな打撃戦で徐々に距離を掴むと、持ち前の野生的なカンから踏み込んでカウンターを炸裂。一撃逆転KO勝利でタフな精神戦を制しました。
敗れた大類はこの試合を持って選手としての引退を表明し、勝利した鈴木は5月に王者佐藤を持ち前の野生の打撃で追い詰めるもリング落下のアクシデントで腰椎を負傷、そのまま精彩を欠き無念の一本負けを喫しました。双方とも十分に傷を癒してから、次のステップでの活躍を期待したいです。
鈴木についてはリング落下のアクシデントが大きく響いた結末であったと思いますし、せっかくの名勝負から生まれた価値ある挑戦権、できればもう一度王座挑戦へのチャンスをあげてほしいです。あくまで鈴木本人が望むならですが…。

[バンタム級, チャンピオンシップ]
DJ.taiki vs. 前田吉朗
(『DEEP 62』4月26日, TDCホール)


蘇った"皮肉屋の死神"DJ、"浪速のスピードスター"前田とのラバーマッチを制し、有終の美を飾る。


バンタム級転向後、強化されたレスリングとリーチを活かした打撃のラッシュでDEEPメンバーと激闘を繰り広げてきたDJ。攻守のスイッチが一気に切り替わる皮肉屋のアグレッシブストライカーは、2012年より開催されたバンタム級王座決定トーナメントを制し王座挑戦に臨みました。王者の前田とはパンクラスフェザー級時代に一勝一敗、王座も懸けて戦った因縁の関係であり、二人のラバーマッチ(決着戦)でもありました
試合は初速の速い打撃のラッシュと寝技で前田がDJを追い詰めるも、2Rに圧力で距離を掴んだDJがコーナーに落いつめアッパーからの怒涛のラッシュで一気に前田を崩しKO勝利ラバーマッチに勝利し生涯初のベルトを巻き、格闘家として有終の美を飾りました。今後もゆかり王国バンタム級チャンピオンとしての活躍に期待しています。

6位
ダブル受賞。

[ウェルター級(70kg級), 環太平洋チャンピオンシップ]
佐々木信治 vs. 小知和晋
(『修斗1st 2013』1月20日, 後楽園ホール)


宿敵と相まみえし"闘裸男のエース"、限界点を打ち破り悲願の王座戴冠へ。


「広島にベルトを」。広島を拠点とし研鑽を積む早業の寝業師、ササロックこと佐々木の覚悟の一戦です。
かつて唯一のKO負けで逃した環太平洋のベルトへの二度目の挑戦、しかも相手はその後敗戦した最も苦手とするハードパンチャータイプの「天敵」小知和。佐々木にとってここまで燃えるシチュエーションもありません…が、だからといって打撃の威力で小知和を上回れるほどMMAは、小知和は甘くありません。試合は「天敵」の猛打に圧されテイクダウンを思うように奪えない佐々木の劣勢が続きます。
しかし2R、小知和の猛打を掻い潜った佐々木は左ストレートでカウンターを決め、勝機を逃さず一気に小知和を崩しきり完全勝利。「天敵」の土俵に踏み込み一瞬の隙を貫き勝利を引き寄せる劇的な逆転を見せてくれました。涙の戴冠を見せた王者はパンクラス出陣、再び「天敵」といえるロングリーチのストライカー、ボグダン・クリステア(オランダ)と激突します。勝利した佐々木と敗れた小知和。共に次戦で更なる「限界点」を越えてくれることを期待したいです。

[フライ級(54kg級)]
江泉卓哉 vs. 増田"BULL"徹平
(『PANCRASE 250』7月28日, ディファ有明)


増田の「猛牛戦法」と江泉のハイスピード・サブミッション。フライ級の醍醐味を濃縮した名勝負。


157cmという小柄な身体からハイスピードの打投極を魅せるパンクラス軽量級の名勝負製造機、江泉。宇津木との激戦に敗れ、ランバーと田原に連敗し正念場となった一戦で現れたのは、パンクラス初参戦…というか関東初上陸を果たした"BULL(雄牛)"増田でした。
増田の試合は初めてだったのですが、開始直後からいきなりオーバーハンド・フックを振り抜きそのままタックルに行き、組み付けば思い切りの良い投げで上を取っていく荒々しい戦法で度胆を抜かれました。まさしくニックネームの如し、二本の腕がさながら牛の角のように江泉を威嚇し追い詰めていく「猛牛戦法」とでもいうべき独特のスタイルが実に魅力的でした。
そして江泉も冷静に距離をコントロールしながら、最後は増田の投げに合わせてアクロバティックな腕十字を極め一本勝ち。初の一本勝利で鮮やかな復活を決めました。息つく時間ゼロ、緊張感がMAXのままフィニッシュまで行くシーソーゲームっぷりが実に軽量級らしい試合でした。「鮮やかさ」という意味ならナンバーワンですね。敗れた増田もいまどき珍しい「負けっぷりまでカッコいい」選手なので、再上陸を楽しみにしています。

7位
[フェザー級]
チェ・ドゥホ vs. 昇侍
(『DEEP CAGE IMPACT 2013』6月15日, 後楽園ホール)


"ライジング・サムライ"後楽園に散る。韓国新世代の次なるステージは?


今年2月に横田一則とのチャンピオンシップに挑戦した昇侍(しょうじ)は、打撃で優勢場面を作るものの、終盤の体力差がものをいい攻め切れずにベルトを逃しました。その次戦、再び挑戦権を得ようとせん昇侍の前に立ちはだかったのが「DEEP韓国勢」の新鋭、ドゥホでした。ドゥホは脆さも見せるもののリーチの長い手足と当て感の良さで連勝中であり、昇侍の汚名返上の絶好の機会でありました。
試合は開始直後から一発一発がKO狙いの激しい打撃の交差戦に。ドゥホのリーチを掻い潜りパンチをヒットさせる昇侍と身体能力の高さを見せるドゥホの鍔迫り合いが続きますが、やはり体力差がじわりと開く2Rにドゥホのアップキックがヒット。そのままドゥホが昇侍をカウンターからパウンドアウトしTKO勝利を手にしました。
勝利したドゥホはUFCと契約の噂も耳にしますが詳細は不明。ですが身体能力と打撃の上手さは光るものがあるため、目をつけられている可能性はあると思います。昇侍自分の武器を理解し、勝つための乱打戦であったと思います。良い試合でした。

8位

[バンタム級, チャンピオンシップ]
中村謙作 vs. 友田隆志
(『GRACHAN 9』4月29日, ディファ有明)


友田のケージクリンチを耐えた中村、制空権を支配しベルト奪取。更なる「強い挑戦者」の登場に期待。


昨年のトーナメントでケージクリンチからのテイクダウン&ショートパンチで力の強さを見せチャンピオンの座を勝ち取った友田の初防衛戦。対戦相手は同トーナメント一回戦で友田と戦ったストライカー、夜桜龍爾の打撃を掻い潜りケージに体重を乗せたフロントチョークを極めて強烈なインパクトで挑戦者となった中村。ケージルールを上手く使う戦法を見せてくれた両者によるGRACHANバンタム級の総決算ともいえる試合となりました。組み付く友田のプレッシャーを中村が躱しながらパンチをヒットさせていくという展開に。友田はテイクダウンを奪うもののそこからの展開を作りきれず、逆に中村は徐々にペースを掴み伸び伸びとした試合で王者をコントロールすると、最後はカウンターのフックでダウンを奪いTKO勝利。トーナメントから続くチャンピオン戦線に生き残り新王者となりました。
BGMに乗せて様々なタイプの選手がケージの中で混じり合うGRACHANですが、ベルトを作り、良い王者が生まれたからには、良い防衛戦を組んでほしいというのが率直な希望です。中村もまだまだ強くなって欲しい選手ですし、ひと段落ついたこの階級を活性化させる新たな脅威となれる「強い挑戦者」の登場を期待したいです。

9位
トリプル受賞。

[バンタム級]
石司晃一 vs. 原田ヨシキ
(『DEEP CAGE IMPACT 2013』6月15日, 後楽園ホール)


"30万賞金マッチ"で才能発掘。石詞が鮮やかな寝技で原田の乱打を封印する。


"30秒以内にKOした勝者に30万円を与える"というビックリ企画が実現したこの試合。負傷により長期欠場からの復帰戦でこの試合を迎えた石司(いしづか)と、トーナメントでDJに敗れ再起をはかる原田によるピリピリした主導権の奪い合いが見事な試合でした。件の30秒はお互いアグレッシブに行くもののあまり噛み合わず過ぎてしまいましたが、その後乱打を振り回し、ギロチンを仕掛けるなど荒々しく攻める原田をしっかりと凌ぎ、寝技で地道にトップを奪い削っていった石司がチョークで一本勝ち。厳しい局面を耐えきっての復活勝利を挙げました。

[ウェルター級(70kg級)]
榊真嗣 vs. 冨樫健一郎
(『修斗 2nd 2013』3月17日, 後楽園ホール)


"狂蜂の純正レスラー"榊に立ちはだかった"闘竜門"富樫の熟練の職人技。清々しい下剋上マッチ。


CRAZY BEE「第四の男」と称される2012年新人王の榊。初の3ラウンド戦に挑んだ新鋭の対戦相手に選ばれたのは、修斗ウェルターコンテンダーとして鎮座する「竜の門番」富樫。オールラウンドでタフな強さを持つ富樫にガンガン突っ込んでいく榊。そんな榊を捌きギロチンで捉えるなど熟練の技を見せる富樫と、若さと体力に勝り徐々に打撃でも富樫を捉えはじめる榊と双方光る動きを見せます。3Rにはヒットから見事なテイクダウンを決めた榊が判定勝利。見事ベテラン富樫超えを果たした榊はこれで堂々ウェルター級戦線に割って入ることに。富樫も昨年のISAO戦に続く連敗ではありますが、技をかけるタイミングから熟練のキレを魅せてくれました。

[ウェルター級(70kg級), インフィニティトーナメント一回戦(準々決勝)]
大尊伸光 vs. ジャイアン貴裕
(『修斗 3rd 2013』7月27日, 後楽園ホール)


修斗の"開拓精神"に光明射す。剛腕タイソンvs.寝業師ジャイアンのド根性マッチ。


昨年よりランカーにより犇めき合う現状に新たな光を射すべく開催された「インフィニティ・トーナメント」昨年の優勝者の飛猿&山本がチャンピオンシップに挑戦するなど修斗の「開拓精神」が良い方向に向かっているといえるこのトーナメントが今年はウェルター級で開催。一回戦からアグレッシブな試合が続きますが、中でも非常に活き活きとした名勝負でした。
ジャイアンは入場で同門の内藤のび太を引き連れて登場(この内藤もかなりの曲者で好きです)。基本入場の仮装は好きじゃないんですけどもこの二人はジャイアンのび太で分かりやすく、どちらも実力があるという点できちんとエンターテイメントしてて面白かったです。タイソンも中央でジャイアンでなくのび太の方を睨みつけるというノリの良さが○。(ちなみにジャイアンはこの時のび太を両手を広げて守っていました。心の友よ!(笑))
試合ではタイソンの名前の通りの剛腕ラッシュが炸裂すると、ヒットを貰いながらも食らいつくジャイアンが素早い寝技で極めに行く攻守の入れ替わる展開が続きます。それでも勢いの落ちないタイソンが徐々にジャイアンを押しきり判定を勝ち取りました。入場から試合終了までテンションを上げてくれた二人がもっと大きな舞台で活躍できることを期待しています。

10位
[バンタム級, ネオブラッドトーナメント決勝戦]
藤井伸樹 vs. 野中翔
(『PANCRASE 250』7月28日, ディファ有明)


確かな寝技テクニックでNBT3連続チョーク・アウト。アライアンスの"新血統"藤井に期待大。


今年のパンクラスNBT(ネオブラッドトーナメント)で一際強さを見せつけたアライアンスの新星、藤井。寝技のトップを奪うフィジカルに加え、鮮やかに極めるタイミングも素晴らしい。特に準決勝の諏訪園岳との凄まじいポジション取り合戦は素晴らしかったです。決勝では野中の思い切りのよい打撃を凌ぎ寝技に持ち込むと、最後はバックマウントからのチョークで一本勝ちし文句なしの優勝。次戦はより進化してランカー食いに挑戦してほしいところです。

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その他ノミネート試合
[ミドル級]
桜井隆多 vs. 桜木裕司 (『DEEP CAGE IMPACT 2013』6月15日, 後楽園ホール)


日本屈指のパワーファイターである"筋肉王"隆多兄さん(41)と、昨年には素手ルールで菊田さんを鮮血のKOで下し、改めて打撃の切れ味を証明した"拳の侍"桜木師範(36)という日本屈指のミドル対決です。
日本ミドル級で有数の破壊力を持つ師範の打撃に対し兄さんの戦略が注目でしたが、試合開始早々から堂々距離を詰め乱打戦を展開し、ケージ際では鋭い睨み合いを見せます。最後は打撃戦のなか兄さんのカウンターフックが顔面を捉えKO勝利。どんな対戦相手でも真っ向勝負で受けて立ってきたタフガイならではの、パワー全開かつクールな試合を見せてくれました。

[ライトヘビー級]
ヴァンダレイ・シウヴァ vs. ブライアン・スタン (『UFC on Fuel TV 8』3月3日, さいたまスーパーアリーナ)


お互いの意地と意地がぶつかり合った名勝負。ヴァンドの勝負師としての強かさな強さも感じることができました。
しかし、ブライアン・スタンの試合を観てきたファンとしては、彼のファイトスタイルが明らかにおかしかったのも事実です。
少なくとも彼はどんな試合でも生き残る事を考えて最善策を取る毅然とした要塞であったし、砂嵐の中に特攻するようなゴリ押しの戦闘機ではありませんでした。
どこか自分がいないような、そんな彼の特攻っぷりは胸がつまりそうでした。
この試合を経てスタンは引退。私生活でもトラブルを抱えていたというスタンですが、コメンテーターとしても毅然とした自分らしさを貫いていってほしいです。

[バンタム級(56kg級), 世界チャンピオンシップ]
神酒龍一 vs. 飛猿☆No.2 (『修斗 3rd 2013』7月27日, 後楽園ホール)


山口マモル、BJ小島、漆谷が海外団体と契約、空位となったバンタム級王座を懸けた一戦。
試合内容自体は攻め切れない神酒と粗が見えてしまった飛猿という感じなのですが、この試合の見どころは修斗世界チャンピオンシップが5Rで行われるようになって初めてのフルラウンドを通じた接戦だったということです。しかも結果はドローにより王者は誕生せずという波乱。
順当にいけばもう一度再戦があるでしょう。つまり王座戦の決着戦、MMAの「6ラウンド」が観れる可能性が高いということに注目しています。このことは日本人MMAファイターが長期戦を生き抜くために大切なプロセスだと思います。ちなみに僕は反則減点ありでも飛猿のギリギリ勝利だと思いましたので、フルラウンド神酒というジャッジは「?」という感じでした。寝技で神酒があそこまで追い込まれていた姿はまったく目に入らなかったという事でしょうか。修斗とは「全てリアルファイト」であることが存在意義であるので、ここはもうちょっと騒がれていいのでは?とも思います。

[ミドル級(77kg級)]
佐藤洋一郎 vs. 高木健太 (『修斗 2nd 2013』3月17日, 後楽園ホール)

日本のウェルター級(修斗ではミドル級ですが)でも有数のストライカーである佐藤洋と高木の再戦。前戦の高木の肘斬りTKO勝利が印象的でしたが、今回もお互いヒットを重ねながらもクリーンヒットを許さない緊張感ある試合でした。試合が2ラウンドであった為か本格的に動き出そうという所で終わってしまったのがなんとも残念。そしてやっぱり高木は肘有りルールで観たいなぁというのが正直な感想でした。高木は9月1日のパンクラス系金網大会「Bayside FIGHT」に出場予定なので、そこで活躍できると良いのですが。佐藤洋も相変わらずの重いパンチで良かったので、もう一段殻を破るようなフィニッシュを期待したいです。

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ニューカマー紹介
試合自体は名勝負とはいえないものの、今後に期待を持てる試合。
[ミドル級]
安西信昌 vs. 久松勇二 (『PANCRASE 247』5月19日, ディファ有明)

対戦相手不足に悩まされた元ライトヘビー級1位のパワーレスラー、安西信昌(あんざい しんしょう)がミドル級転向。久松の技術を全て上回り圧倒的な強さをみせたミドル級デビュー戦でした。久松がロープから何度もはみ出したため試合が中断し打投極の強さが観れなかったのが残念でしたが、この勝利によって9月30日の『PANCRASE 252』で、現在ミドル級1位のウィル・ノーランド(アメリカ)とチャンピオンシップ挑戦権を懸けた対戦が決定。圧力の強いムエタイ系ストライカーであるノーランドに対し、若くレスリングスタイルに特化した安西の武器が通用するか。初の本格的な世界戦で全力を尽くして勝ちに行ってほしいです。

[フェザー級(60kg級), 環太平洋チャンピオンシップ]
佐々木憂流迦 vs. 徹肌ィ朗 (『修斗1st 2013』1月20日, 後楽園ホール)

修斗軽量級で奇才を放つエンターテイナー、"柔術天狗"佐々木憂流迦(ささき うるか)が環太平洋のチャンピオンベルトを手にした試合。アクロバティックな飛びつき技や鮮やかなバックポジションで魅せるスピードタイプの寝技師ウルカに対し、"寝技宇宙人"徹は食らいついて離さないネバりのあるパワータイプの寝技師。対照的な寝技を持つ二人の気迫あふれるポジション取り争いが展開された接戦となりました。この接戦に勝利したウルカは7月の防衛戦で昨年のインフィニティトーナメントを制した山本賢治と対戦すると、カウンターストレート一発で秒殺KO勝利。環太平洋王座を返上し次戦で堀口との世界チャンピオンシップを希望しました。この試合は是非年内の然るべきタイミングで組んでほしい試合です。

[フライ級, 次期チャンピオンシップ挑戦権試合]
和田竜光 vs. 中村優作 (『DEEP 62』4月26日, TDCホール)

バンタム級から新設のフライ級に転向した吉田道場のニューカマー、和田竜光(わだ たつみつ)が王座を懸けて引き分けとなった中村と再戦した試合。ノーガードから大砲のようなロングフックを連打する"日拳大蛇"中村に対し、テイクダウンも混ぜた右フックでアグレッシブに攻めた和田の一撃が後退した中村にジャストヒットしKO勝ち。攻めの姿勢を崩さないオールラウンドで真っ直ぐなスタイルの和田は、8月の『DEEP 63』で巧みな足技を使う元谷友貴(もとや ゆうき)の持つフライ級チャンピオンベルトに挑みます。若さと勢いに溢れる二人新世代によって作られる新階級の可能性に期待したいです。
※作成中にチャンピオンシップが終わってしまいました。最後まで両者の気持ちが折れない良い試合でしたので、5ラウンド戦で観たかったです。勝者はTDを取り抑えきった和田でしたが、元谷も精神力の強さを見せました。共に未完成であると思いますし、DEEPで試合を重ねるなら再戦も観たいですね。まずは新王者となった和田に、挑戦してくるであろうベテラン組越えを期待したいです。

[スーパーフライ級(57kg級)]
古賀靖隆 vs. 安永有希 (『PANCRASE 247』5月19日, ディファ有明)

昨年末にスーパーフライ級KOP清水とのめまぐるしい打投極の回転を見せたNBT2011年王者の"ファンキー・イエローモンキー"安永有希(やすなが ゆうき)。安永の復帰戦となった今試合ですが、NBT2012年王者の古賀靖隆(こが やすたか)が出会い頭に強烈なカウンターをヒットさせ衝撃の秒殺ノックアウト勝ちを見せた試合です。古賀は次戦の北方大地戦でも打撃でプレッシャーをかけKO勝ちし、挑戦者候補として一気に存在感を見せてきました。古賀は寝技主体のスタイルから明確なレベルアップが見れたのがとても印象強く、次戦で更に殻を破っていくことを期待しています。


[バンタム級(56kg級)]
飛猿☆No.02 vs. 渡辺健太郎 (『修斗 BORDER』4月7日, 平野区民センター(大阪市))

修斗インフィニティトーナメントを制した飛猿☆No.2(とびざる, 本名 猿田洋祐(さるた ようすけ))の高い身体能力が爆発した試合。5連勝中の渡辺健太郎(わたなべ けんたろう)との修斗軽量級の新鋭対決は、序盤から打撃を打ち合い制空権の奪い合いが展開され、渡辺がテイクダウンを警戒し距離をとったところに飛猿のロングフックが炸裂。飛猿が有無を言わさぬ一撃KO勝利でチャンピオンシップへの出場権を手にしました。まだまだ二人とも伸びしろがありそうで、お互いがレベルアップした状態での再戦も見たいです。同大会で対戦したフライ級(52ky級)のオニボウズ(本名 山本忠昭(やまもと ただあき))マッチョ・ザ・バタフライ(本名 加藤昌良(かとう まさよし))の二人にも期待しています。

[メガトン級(無差別級), チャンピオンシップ]
長谷川賢 vs. 藤沼弘秀 (『DEEP 63』8月25日, 後楽園ホール)

前王者レヴァン・ラズマゼの返上後、新王者となった長谷川賢(はせがわ けん)の初防衛戦。テイクダウンからのパウンドで藤沼を消耗させると、フットスタンプを連打し完全勝利で防衛を果たしました。重量級選手として存在感を示した長谷川。防衛戦では"ビッグボディ"こと関根秀樹(せきね ひでき)戦を、同階級で研鑽を積む"金メダリスト"石井慧(いしい さとし)との対戦などを観てみたいです…どちらもかなり可能性は低い気がしますが。長谷川がライトヘビー級に転向する可能性もあるかもしれませんが、いずれにしてもより強い対戦相手との試合経験を積める場を選んでいってほしいです。

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おまけが本編
日本人選手お気に入りの入場曲ランキング
1位
『Galaxy(ギャラクシー)』エバラ健太
原田ヨシキ 入場曲)

作曲者さんのサイトで一部視聴ができます。
『DEEP CAGE IMPACT 2013』での原田の入場曲。
テクノポップ調の浮遊感のあるサウンドと、演奏者エバラ健太さんの優しい歌声がミックスして雄大な銀河(ギャラクシー)を感じさせてくれる一曲です。
この曲は原田ヨシキの為に作曲されたもので、歌詞も自分の弱さと向き合い、頂点を目指し戦う強い意志を美しく歌っていて、穏やかなメロディラインの中に確固たる意志を感じさせてくれます。

2位
『Soul Bossa Nova(ソウル・ボサ・ノヴァ)』クインシー・ジョーンズ
(安永有希 入場曲)

AmazonのDLサイトで一部視聴ができます。
安永有希のロボットチックなモンキーダンスのバックで流れている曲。
日本人なら誰もがCMで聴いたことがあるであろう名曲であり、吹奏楽の楽曲としても親しまれています。
作曲者のクインシー・ジョーンズさんは今年でなんと80歳!ファンキー・ジャズの軽快でポップなサウンドと安永の変則的なステップという不思議な組み合わせが観客のワクワクを誘います。

3位
『Rising(ライジング)』吉田兄弟
岡見勇信, 佐々木憂流迦 入場曲)


ファンキーな津軽三味線エレキギターのユニゾンが炸裂する吉田兄弟の代表曲である和式ロック。
UFCで岡見が「日本代表」として使用する曲であると同時に、エンターテイナーウルカの"天狗"の入場曲でもあります。大きな覚悟を背負って入場する岡見のシーンも非常に燃えますし、真っ赤な着物を翻し、傘と天狗面で颯爽と登場するウルカの色気のある入場もナイスですね。

4位
『零(ゼロ)』和装侍系音楽集団MYST.(ミスト) 
神酒龍一 入場曲)


パンチの精密射撃を武器とする神酒の入場曲。
もうチーム名を見れば説明不要な(笑)ノリノリのエレキサウンドが入場曲にピッタリですね。
次戦の飛猿とのリマッチの入場も盛り上がりそうです。

5位
『Superstar(スーパースター)』FIRE BALL(ファイヤーボール)
石渡伸太郎 入場曲)


石渡の入場でかかるパンチのきいたバックサウンドが特徴的なレゲエミュージック。
レゲエ畑ではないのですが、石渡の完全戦闘モードな表情とポップなドラムが妙なハーモニーを生み出していて試合に向けて一気にテンションが上がっちゃいます。
はやくまた会場で聴きたいですね~。がんばれ石渡!!

番外編
『Some Nights(サム・ナイツ)』Fun.(ファン)
アンディ・メイン入場曲)


パンクラスでABと激しい寝技戦を繰り広げたTUF出場者でナム・ファンの友人、アンディ・メインの入場曲です。
私はすっごいFun.のファンなので(ギャグじゃないです)、メインの試合をチェックした時に入場曲がサムナイツで勝手に期待値が上がってしまいました(笑)
パンで流れたときは「やったー!」と一人で感無量で既に満足していましたが(オイ、試合も面白かったので再来日も期待しています。


いよいよ8月も終わりですね。
後期は忙しいので観れる試合も減っていしまいますが、のんびり熱く観戦していきたいです。