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〔シンガポールMMA〕〖Rebel FC 2〗試合レビュー!芦田崇宏の「反逆」トーレスに迫る!

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REBEL FC 2 -Battle Royale- 〈'14年8月1日〉 
〔環太平洋MMA〕 ジャスティン・レオン(Justin Leong)主催 
シンガポール (サンテック・シンガポール国際展示場)


今年初めに紹介したシンガポールの新興MMA団体「Rebel FC」の第2大会が開催されました。
今大会はフェザー級の8人制トーナメントの準々決勝が開催され、元メジャーファイターが2名参戦することで注目を集めました。
試合場は今回も白いマットに赤い枠、黒い支柱の六角ケージ。
全選手入場はもう一つ六角の赤い舞台が用意され、映画「パシフィック・リム」のメインテーマを生演奏するという、なかなか面白い趣向が取られていました。
ちなみにトーナメントのうち、マイケル・トービンパット・プロムランカの試合は、プロムランカの計量失敗により中止になってしまいました。
トービンはトーナメントを不戦勝扱いになり、準決勝に進むことができるようです。

〔第1試合 ライト級 5分×3ラウンド〕

シャフィック・サマド 〈ジャガーノートファイトクラブ
シンガポールシンガポール出身
20歳 "ザ・スラッシャー"
vs.
ケニー・トンプソン 〈SSFマレーシア〉
アメリカ合衆国アメリカ(スプリングフィールド)出生 マレーシア現マレーシア在住
25歳 "ブラックマンバ"


[選手紹介]
サマドは地元シンガポールの新鋭の一人です。
RFC旗揚げ大会にも出場し、ファン・ギョピョンと開幕からダウンを取り合うジェットコースター・ゲームを展開。あっという間の秒殺決着で負けてしまいましたが、強烈なインパクトを残しました。
ジェイソンマスクを被っての入場です!
トンプソンはマレーシア在住のアフリカ系アメリカ人。リーチに勝り、ムエタイをルーツに持ちます。
軽快なファンクミュージックにノって入場。コール時にはアーチェリーのポーズ。

[1ラウンド]
アップライトの構えからカウンターを狙うトンプソンに対し、サマドは遠距離からのオーバーハンドの連射でヘッドショットを狙います。
前蹴りやロー、接近戦のアッパーで反撃するトンプソンですが、サマドの勢いを止められず。打ち合いで下がったところにサマドの左オーバーハンドがテンプルを貫通し、トンプソンがダウンしレフェリーストップ。

【シャフィック・サマド勝利 1ラウンドKO(左オーバーハンドフック)】
互いにヒートアップして自分の距離から外れてしまうヒヤヒヤ試合でしたが、接近し過ぎたトンプソンを逃さずプランを完遂したサマドが一撃KO勝利で魅せました。
サマドは前大会の秒殺KO負けからしっかり成長して、自ら攻め続ける気持ちの強さを見せました。シンガポールMMAファイターとして、これからの成長が楽しみな選手ですね。


〔第2試合 女子ストロー級 5分×3ラウンド〕

メイ・ウーイ 〈ブラジリアン・ファイトクラブMMA
シンガポールシンガポール(ベドック)出身
38歳 プロデビュー戦
vs.
シャルマ・デヴァイア 〈ファイトコーズMMA
フィリピンフィリピン(バギオ)出身
27歳 プロデビュー戦


[選手紹介]
ウーイは地元シンガポール出身、バルセロナ五輪(1992)出場の元水泳選手です。
前大会でアマチュア選手として初勝利を飾り、今回満を持してのプロデビューとなります。
デヴァイアも今回がプロデビュー戦となります。

[1ラウンド]
両者ムエタイスタンスで睨み合い。圧力をかけていくデヴァイアですが、ウーイがタイクリンチで押し込みテイクダウン。
一気にマウントを取ったウーイが顔面にマウントパンチを連打し完全制圧。

【メイ・ウーイ勝利 1ラウンドTKO(マウントパンチ連打)】
勝利したウーイはやや不満顔。ストップが消化不良だったのでしょうか。
38歳という遅咲きデビューのウーイですが、高い向上心のある選手であり、RFC女子選手としての活躍が期待されますね。
試合後にはコーチとカポエイラを披露!フラストレーションを発散するかのごとく踊りまくっていました(笑)


〔第3試合 ライト級 5分×3ラウンド〕

ファン・ギョピョン/황교평 〈コリアン・トップチーム〉
韓国韓国出身
25歳 "テポ/대포(大砲)"
vs.
クリス・バラス 〈ファイトワーク・アカデミー〉
イングランドイングランド(トーキー)出身
28歳 


[選手紹介]
ギョピョンはKTT期待の新鋭です。ガッシリした上半身からフルスピードのフックを連射する破壊力から「大砲」の異名をとります。
前大会では地元の期待選手サマドにダウンを取られかけるも、大砲を炸裂させ圧巻の秒殺KO勝利を見せました。
バラスは地元イングランドからの出張組。英国選手らしいキック+柔術のスタンダードスタイルの持ち主です。

[1ラウンド]
ローキックを空振りスリップしたバラスが寝技を要求し、ギョピョンはパウンドを打ち勝負に行きます。
バラスがラバーガードに抑え込もうと足を絡めますが、ギョピョンはパウンドを当てながら逆に押し込んでいきます。アームバーも狙うバラスですが不発。ギョピョンはコントロールを続けて堅実にポイントを取りました。

[2ラウンド]
お互いに消耗し、手数を抑えた慎重な打撃戦が展開。
バラスは遠距離からスピンキックや前蹴りを放ちますが、ギョピョンの勢いを止められません。
ギョピョンはフックのコンビネーションを果敢に打ち込みます。消耗のためKOまではいかないものの、バラスのローにカウンターを合わせフラッシュダウンを取るなど、このラウンドでも優勢に。

[3ラウンド]
一撃を狙うギョピョンはこのラウンドもバラスの蹴りにカウンターを合わせていきます。
バラスは細かくローを当てていきますが、ギョピョンは突進でバラスをつき飛ばし、テイクダウンを取ります。そのまま抑え込んだギョピョンがこのラウンドも優勢に。

【ファン・ギョピョン勝利 判定(3-0 ユナニマス)】
「大砲」のようなフックで勝利したギョピョン。
3ラウンドを通して攻め続ける体力と気持ちの強さも見せた、素晴らしいパフォーマンスでした。

〔第4試合 フェザー級 5分×3ラウンド トーナメント準々決勝〕

内村洋次郎/ウチムラ・ヨウジロウ 〈イングラム
日本日本(埼玉県)出身
29歳
vs.
レイドン・ロメロ 〈ヨーヤン・カンピラン〉
フィリピンフィリピン出身 
27歳 "レッド"


[選手紹介]
内村は待ち拳に秀でるストライカーです。柔軟なステップワークで打撃をかわし、カウンターで落とすスタイルを持ち味としています。
マルロン・サンドロに引き分け、高谷裕之にkOで負けてしまいましたが、初の海外トーナメントで名誉挽回を狙います。
ロメロは「フィリピーノ・ボロパンチ」の異名をとったフックを武器とする選手です。
やや打たれ弱くスタミナに欠けるものの、好戦的なスタイルで活躍するフィリピン選手です。

[1ラウンド]
遠距離の探り合いからロメロがテイクダウン、これを返した内村がハーフコントロールします。サイドにパスした内村ですが攻め切れず、ロメロはスウィープして逃れ、片足に組み付いてテイクダウンを狙います。
内村は堪えながら肘を側頭に当てると、この一撃でロメロがダウン。動けないロメロを内村がパウンドアウトしました。

【内村洋次郎勝利 1ラウンドTKO(マウントパンチ連打)】
内村が肘打ちでダウンを取ってきっちりとフィニッシュしましたね。
内村は昨年とても期待していた選手ですが、待ち拳ゆえに相手につきあいすぎる=攻め手を相手に委ねるところが格上の選手相手だと弱みとして出てしまっていました。今回もサイドをパスしてからの攻め手が無かったのが気になります。
とはいえ海外戦でもしっかり持ち味を出せたのは大きいですね。
「アイラブレベルエフシー!アイラブシンガポール!センキュー!」のマイクも良かったです(笑)こういうアッケラカンとしているところは内村の一番の魅力ですね。

〔第5試合 フェザー級 5分×3ラウンド トーナメント準々決勝〕

ウィル・チョープ 〈ジャガーノートファイトクラブ
アメリカ合衆国アメリカ(カリフォルニア サクラメント)出生 タイ現タイ(マハー・サーラカーム)在住
23歳 "ザ・キル"
vs.
マウリシオ・ドス・サントスJr. 〈フルハウス
ブラジルブラジル(ミナスジェライス ベロオリゾンテ)出身 
33歳 "ファクサオン"


[選手紹介]
チョープは元空軍出身、退役後に格闘家を志しタイに移住したアメリカ人ファイターです。
長身とリーチを活かした遠距離からの狙撃が主武器で、右のわき腹には「不間断」という刺青が彫ってあります。
昨年までUFCで活躍していましたが、空軍退役の理由が奥さん(現在は離婚)への家庭内暴力であったことが発覚、カットされました。その後マレーシアでムン・キボムにも負けてしまいました。
おなじみのバンダナ姿で、堂々とした入場です。
ドス・サントスは主にミナスジェライス州で活躍している選手で、今回のシンガポールは初の海外戦です。
骸骨模様のバンダナとブラジルの国旗を観客に投げ渡しての入場です。

[1ラウンド]
ドス・サントスは一気にギアを上げて詰め寄ると、突進してテイクダウンを取ります。押し込んでコントロールしようとするドス・サントスですが、チョープは左腕でギロチンに絞めてスウィープ。パンチと肘打ちで強引にトップを取り返します。
ドス・サントスはバタフライガードからヒールフックを仕掛け、不発したもののトップを取りかえします。そのまま猪木・アリの膠着状態が続きました。パウンドの印象でチョープ優勢か。

[2ラウンド]
ドス・サントスは果敢に懐に入って、テイクダウンから再びトップを取ります。チョープは足で侵入を阻止しながら立ち上がると、遠距離からキックで攻めます。ドス・サントスのテイクダウンを切り、スタンドを要求します。
必死に組み付いていくドス・サントスですが、消耗が激しく逆にチョープに押し返されて、何度もスタンドを要求されます。それでももう一度ドス・サントスがテイクダウンして終了。このラウンドはテイクダウンを取り続けたドス・サントスを支持したいです。

[3ラウンド]
このラウンドも果敢に攻めるドス・サントスは、テイクダウンを取るものの抑え込めずに返されてしまいます。チョープはトップコントロールしながらパンチを打ち込みますが、こちらも消耗してしまい決め手を打てません。ドス・サントスはヒールフックを狙うなど脱出を試みますが、チョープは抑え続けます。それでも最後に立ち上がったドス・サントス。打ち合いをして試合終了。このラウンドはチョープ優勢です。

【ウィル・チョープ勝利 判定(3-0 ユナニマス)】
攻めあぐねながらも体格差を活かしたチョープが、ドス・サントスの攻撃を防ぎきって勝利しました。
リーチゆえに接近戦に脆いチョープですが、流れが来た時に強引にコントロールしに行ったのが良い結果に繋がったと感じます。
ドス・サントスも体格差を恐れなず最後まで攻め続けていたのが良かったです。

〔第6試合 フェザー級 5分×3ラウンド トーナメント準々決勝〕

ミゲル・トーレス 〈トーレス・マーシャルアーツ〉
アメリカ合衆国アメリカ(インディアナ ニューシカゴ)出身
33歳 "アンヘル"
vs.
芦田崇宏/アシダ・タカヒロ 〈ブレイブ〉
日本日本(埼玉県)出身 
25歳 


[選手紹介]
トーレスはメキシコ系アメリカ人であり、バンタム級で一時代を築き上げたレジェンドファイターです。
メキシカンボクシングにルーツを持つ伸びのあるパンチと柔術テクニックで'08年にWECバンタム級の王者となり、3連続防衛を果たし君臨しました。
その後ブライアン・ボウルズとジョセフ・ベナビデスに負けトップ戦線からは脱線するものの、UFC、WSOFとメジャーの舞台で活躍。今年からフェザー級に転向し新たな挑戦をしています。
芦田は東京都を中心に活躍する選手で、今回が初の海外戦となります。
ガッシリした身体とスタミナを武器に圧力をかけ、ストライク&テイクダウンの二択で堅実に攻めるスタイルですね。
津田勝憲に寝技で完敗するものの、そこから連勝を重ねてトーレス戦の白羽の矢が当たりました。
ビーストウォーズOPの「WAR WAR! STOP IT」をBGMに、手拍子にノッて軽快に入場です。

[1ラウンド]
距離を維持した睨み合い。トーレスは伸びのあるコンビネーションで顔面に細かく当てていき、芦田はローキックを当てつつ慎重に踏み込んでいきます。トーレスのフックに合わせて芦田がテイクダウンし、パウンドを狙いますがトーレスは足で突き離し立ち上がります。芦田はフックからテイクダウンに繋げて、トーレスのスウィープを抑え込んでコントロールします。トーレスも脱出を試みますが芦田はしっかり抑え込みきります。テイクダウンを成功させた芦田が優勢か。

[2ラウンド]
2ラウンドもお互い慎重に距離を取りながら打撃戦が続きます。パンチに伸びが出てきた芦田は近距離の打撃戦でも拮抗。左ストレートを顔面に打ち込みグラつかせ、テイクダウンを切って抑え込みます。ポスチャーアップでコントロールを狙う芦田ですが、トーレスは回転してスウィープし脱出し、逆にボディにパンチを当ててフラッシュダウンを取リ返します。芦田はバックから三角フックでガッチリとコントロールされますが、暴れ続けて足を抜きます。このラウンドは拮抗していますが、最後のバックコントロールトーレスか。

[3ラウンド]
芦田のハイキックが顔面を捉えグラつくトーレス。攻める芦田ですがトーレスのローが金的に入ってしまい一時中断。再開すると芦田は一気に接近、芦田が押し切る形でテイクダウンからガードで抑え込みます。トーレスは消耗が見られるものの、下からのバタフライガードで芦田に主導権を握らせず立ち上がります。芦田も消耗しますが、左フックでトーレスは明確に嫌がり後退してしまいます。トーレスは芦田のハイキックにカウンターでテイクダウン、芦田もこれを切ってガードからコントロールします。芦田は最後までトーレスを抑え続けました。

ミゲル・トーレス勝利 判定(2-1 スプリット)】
拮抗した試合でしたが、ジャッジ2名が支持したトーレスが勝利しました。
ざっくりこの試合をまとめると、
[1R] トーレスはパンチで優勢 芦田はテイクダウンとトップコントロールで優勢
[2R] トーレスはボディでフラッシュダウンを取り、バックコントロールで優勢
    芦田はストレートで明確に打撃の優勢、トップコントロールで優勢
[3R] トーレスは明確な優勢なし しかし芦田に完全に主導権は握らせなかった
    芦田はハイキックとフックで明確に打撃の優勢、トップコントロールで優勢

となります。
トーレスは2R、芦田は3Rを取り、1Rは両者良い場面を作っています。
この1Rが割れる可能性は十分あると思います。ジャッジ・ブレットはトーレスのパンチを、ジャッジ・モーガンは芦田のテイクダウンをそれぞれ支持した結果、29-28のジャッジで割れたのだと思います。少なくとも「納得のできる範囲内の判定」です。
しかしもう一人のジャッジ、ロジャー・チャンはフルマークでトーレスにつけ30-27のジャッジを下しています。
これはちょっとビックリな判定です。「納得のできる範囲外の判定」でしょう。
上記のように両者の優勢場面は拮抗し、尚且つ3ラウンドは芦田が優勢です。
芦田にとっては3ラウンドの優勢すらまったく観てもらえなかったという事ですから何じゃそりゃという感じでしょう。。
トーレスにとっても、3Rのパフォーマンスで優勢が取れてしまうのは本人のためにならないでしょう。劣勢を覆せるほどの優勢場面は無かったと思います。


トーナメント準決勝はトーレスvs.チョープ、内村vs.トービンになるようですね。
本大会も前回に劣らぬ良い内容の試合ばかりでしたが、「最後の最後で(ジャッジが)やっちまったなー!!」という感じでした。
Rebel FC的には露骨にトーレス推しなところもあり、トーナメントということで再戦もなさそうですが、芦田の名誉挽回の場は作ってあげてほしいな、と感じました。
実際現場でもジャッジに判定内容について抗議した方もいるようで、芦田のパフォーマンスは決してトーレスに劣ってはいませんでした。
次戦も自信を持って、格上の選手に挑んでいってほしいですね!!

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