クロネコMMA図書館🐾

ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

UFC日本ry④ エース水垣偉弥の大一番!"ファンクマスター"アルジャメイン・スターリング迫る!


水垣偉弥(みずがき たけや)MMAバンタム級メジャーシーンの黎明をWEC時代から支え、戦場がUFCに移っても変わらず頂点の戦場で生き残り続けている日本人選手です。
しかし、昨年チャレンジャーの座を懸け挑んだドミニク・クルーズ戦では、"ドミネイター"のテイクダウンから脱出する際にアッパーを連続被弾し、ほぼ1分で無念の完敗を喫しました。
再起をはかる復帰戦は4月18日。トップコンテンダー戦から一転し、プロ全勝無敗のニューカマーの突き上げを受けることになりました。
頂点の戦場に残れるかの瀬戸際に立たされているであろう水垣。
今回はそんな彼に挑戦するUFCバンタム級戦線を躍進中のニューカマー、"ファンクマスター"スターリングを紹介します。

----


(↑スターリングの水垣戦直前の紹介PV。8分20秒あたりで妹さんも出てます(笑))

アルジャメイン・スターリング(Aljamain Sterling)

異名 "ザ・ファンクマスター" ("The Funk Master")
出身 USAニューヨーク(コートランド)
所属 セラロンゴファイトチーム
MMAの経歴 ROCバンタム級王者(防衛0回) CFFCバンタム級王者(防衛3回)
他競技の経歴 カレッジレスリング NCAA dⅢオールアメリカン(合計2回)


ジャマイカ人の両親のもと、ニューヨークで20人兄弟の一人として育ったスターリング。
カレッジレスリング仕込みの強烈なテイクダウン&トップキープ力を持つ彼は、昨年2月のUFCデビューから2勝0敗1koの好成績を残しています。
UFC以前を含めても10勝0敗2ko3sub。現在まで敗戦はありません。
ノーランカーでありながら6位の水垣とカードが組まれた背景には、Foxの前座第一試合で米国の若きニュースター、スターリングが無敗のままレジェンドに打ち勝つことへの期待が感じられ、また彼にはその期待に応える十分な素質があるとも感じます。

スターリングのMMAスタイルは"ファンクマスター"の由来にも繋がる予測不可能かつテクニカルなレスリングがベースであり、そこに柔術技とパウンドが混ざることで相手の体力&精神力を削り落とすスピーディーかつタフなスクランブリングの強さが光るスタイルになっていると感じます。
打撃についてはセラロンゴの二大司令塔の一人、レイ・ロンゴに師事してキックボクシングの技術向上に取り組んでおり、基本的にスタンドではリーチの長さと豊かなフィジカルを活かしたロー&ミドルキックで相手を突き離してテイクダウンの距離を作ることを主に置いていると感じます。
軽やかなステップ&サークリングからリーチを活かした蹴り技で距離をコントロール、相手が距離をつめようと前に出た所で一気にテイクダウンを決めて寝技で削る。この戦法で相手の精神をじわりじわりと折り潰す筋金入りのレスラー、それが現在のスターリングです。

カレッジレスラー出身で"ファンキー"なMMAファイターといえばベン・アスクレンを連想しますが、スターリングもアスクレンのスタイルを手本にしたことで練習仲間からファンキーな男であると評されたと語っています。プロとして異名を持とうと思った時、既に"ファンキー"はアスクレンの異名であったため、スターリングは自らを"ファンクマスター"と名乗るようになったといいます。また彼はカレッジレスラー時代にジョン・ジョーンズと交流を深め、彼の誘いでMMAの世界に足を踏み入れており、2人のチャンピオンが彼をMMAにいざなったとも言えますね。


----

USMMAの未来を担う選手の一人として期待を受けているであろうスターリング。
水垣の左フックからダッキングインファイトに持ち込みたいボクシングスタイルと、スターリングの遠距離からテイクダウンし体力&精神力を削りたいレスリングスタイルとはまさに水と油、対照的で交わりにくいスタイル同士の闘いといえます。
水垣はここまで勝負所が完全に食い違う相手と闘った経験が少なく、UFC側としても水垣がレスリングスタイルに対応できるか知りたいが故のカードであると感じます。
逆に言えばここで勝つことで水垣の評価は再び大きく持ち直すと思われ、このニューカマーとの戦いは想像以上に重要で今後の評価を左右する一戦だと思います。

水垣はUFCにてバルクアップが著しく、スターリングの強靭なフィジカルを凌駕はいかずとも対応することはできると予想します。ただし寝技のスクランブリングではやはりスターリングが一枚上手でしょうし、極めるのは困難なので水垣は立ち技で攻めたいところですね。
スターリングの方もボクシングについては未だ反応しきれない場面が見られ、その弱点をリーチの長さと身体能力、レスリング技術でカバーできていたからこその全勝記録だと感じます。水垣は「格上」として、まずスターリングとフィジカルのぶつかり合いで拮抗し、更にインファイトに持ち込むことで勝機を見出して欲しいです。

特に注目しているのは水垣がスターリングの蹴りをどう対処するかです。スターリングは蹴りで相手をコントロールし、自身のリズムも作っているように観られます。ウーゴ・ヴィアナ戦ではスピンキックやサイドキックも混ぜたダンスのような自在な動きで完全にヴィアナの動きを封じてしまいました。スターリングの蹴りを自由に打てせてはならない。逆に言えば蹴りを封じればリズムを崩すまでいかずとも出足を鈍らせられるのでは、と予想しています。もっともスターリングは成長のスピードも早く、レイ・ロンゴに打撃を師事していることから水垣のボクシングの脅威はしっかり把握され、対策されているとみるべきでしょう。

水垣にとってはある意味クルーズ戦よりも大一番となるでしょう。
"ファンクマスター"スターリングは才能や向上心に溢れていてこれからも応援していきたい選手です。しかし、水垣にもコンテンダーとして今までのスターリングの対戦相手たちとは格が違うんだ!という姿を見せて欲しいと思っています。
日本のエースvs.米国のニューカマー。
運命の一戦は間もなく始まります!!


余談ですがスターリングは「ファンク○○」といった言い回しがお気に入りみたいですね~。
ウーゴ・ヴィアナ戦前のインタビューでは"ウルヴァリン(ヴィアナの異名で御存じマーベルヒーロー)"に対し"ファンクニートー(ウルヴァリンの天敵マグニートーの捩り)"を自称していたりします(笑)
水垣戦でも「ファンクダディ」を自称していて、ファンク=彼のアイデンティティーなのかなぁと思います。
今後もこのレパートリー増えていくのかもチョッピリ気になりますね。