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UFC日本ry⑥フランスMMA10番目の刺客!テイロー・ラピリュス拳の挑戦状。【vs.憂流迦】


昨年の『ムニョスvs.ムサシ』に続き、今年も通算四度目のUFCドイツ大会となる
『UFN 69 -イェンジェイチュクvs.ペネ-』(ベルリン大会)が開催されます。
本大会のメインでは隣国ポーランド初のUFCチャンピオンである
ヨアンナ・イェンジェイチュク(UFC女子ストロー級女王)が初防衛戦を行い、コメインでは
地元ドイツの重鎮デニス・シヴァー(ドイツ)に復帰戦となる川尻達也(日本)が挑みます。
そんな中でプレリミナリー(前座試合)第一試合ではもう一人の日本選手がフランスの新鋭と対戦します。今回はそんなフランスの新鋭、テイロー・ラピリュスの紹介です。



テイロー・ラピリュス(Taylor Lapilus)

異名 "ダブルインパクト" ("Double Impact")
出身 
f:id:paky21:20200516163416p:plainフランス(ヴィルパント)
所属 クロスファイト・パリ(パリ)
MMAの経歴 KOCフェザー級王者(防衛0回) 
         100%Figjtフェザー級トーナメント優勝('12年)
他競技の経歴 ブラジリアン柔術(青帯)


弱冠22歳でフランス10人目のUFCファイターに選ばれたラピリュスにはダミアン・ラピリュスというお兄さんがおり、二人は兄弟でMMA選手として活躍しています。
お父さんのフェリックスは溶接工で、兄弟は父親の仕事をときに深夜まで手伝う側、元MMA選手のフェルナンド=ロペス・オウォンニビィが率いるクロスファイト・パリというトレーニングセンターでMMAの練習に励んできたといいます。
ラピリュスのミドルネームは初期の"TGV(テジェヴェ、フランスの国営高速鉄道のことです)"から現在の"ダブルインパクト(二倍の衝撃)"に変化しています。これは自分の技術すべてがお兄さんのダミアンと共に作り上げたもので、自分が強ければそれは同時に兄の強さの証明にもなるというラピリュスの想いが込められているそうです。

フランスの国内でのMMAの評判は決して良いものではありません。
世界MMA連盟(IMMAF)のフランス代表で国内コミッションの初代会長も務める
ベルトラン・アムースといった好意的な人々がいる一方、フランスのスポーツ大臣や柔道連盟からは「野蛮なもの」として厳しい批判を受け、国内でスポーツとして完全な認可を受けることはできない現状であるといいます。
この問題はフランス国内での結論を待つしかありませんが、そのような厳しい環境の中でMMAを続け、UFC契約を果たしたラピリュスは応援したい選手です。

ラピリュスはUFCで勝つために、現在は溶接工の手伝いを休んでMMAの練習に集中しているそうです。
昨年10月に件の強豪デニス・シヴァーとの対戦が決定しますが、これは開催地のスウェーデンMMA連盟から安全を考慮して中止になってしまいました。いわば不戦敗ともいえる裁定ですね。

ラピリュスは今年4月の『ゴンザガvs.クロコップ2』(ポーランド大会)で念願のUFCデビュー。同じくデビュー戦のロッキー・リー(台湾)を相手に悔しさを爆発させるような闘いをみせます。
体格に勝るリーのテイクダウンを強靭なフィジカルとタイクリンチからの膝蹴りで凌ぎ、予想外の長打と威嚇でリーを徐々に消耗させるラピリュス。
最終的にはリーの精神力の強さから判定にもつれ込むんだものの、ほぼ完封といえる内容で判定勝利を収めました。

この試合を最後にラピリュスはフェザー級を去り、次戦でバンタム級転向初戦を迎えることになります。
次戦の舞台であるベルリン大会のプレリミナリー(前座)第一試合で、UFC連勝を懸けて
佐々木憂流迦(日本、本名:佐々木佑太)との対戦に挑みます。

佐々木は約180cmという長身痩躯&素早いポジショニングからスピード&才能で速攻を仕掛けるセンス重視のグラップラーであり、予想不可能な攻めと勢いで魅せる強さがある一方で、劣勢に回ると極端に攻めの鈍る不安定さも併せ持ちます。
対してラピリュスは170cm以下という小柄さに対し180cm越えという極端に長いリーチを持ち、予想外の長打と組み際の強靭なフィジカルで削り局面ごとに競り勝っていく安定感がある一方、やや定石通りで決定打に欠ける所が不安要素といえます。
スピードと寝技の佐々木フィジカルと打撃のラピリュスというカードであり、両者ともに互いのアドバンテージを封じ、自分の得意分野に持っていくことが大事になる試合といえますね。

ラピリュスとしては打撃とフィジカルのアドバンテージを活かして佐々木の速攻を弾き、徐々に組み膝や圧力で削っていき失速させつつKOを狙う戦法かな~と思います。ちょうど先月の『ミオシッチvs.ハント』(豪州大会)ダニエル・フッカー(ニュージーランド)日沖発(日本)にKO勝ちしたような試合展開を狙いたい感じではないかと予測しています。
佐々木としては持ち前のスピードは活かしつつも、不用意に打撃で攻めずにまずは立ち組みでチャンスを窺っていくという感じでしょうか。

ラピリュスにとっては初のバンタム級転向が、佐々木にとっては長期遠征の経験不足からくるガス欠が不確定要素ですね。佐々木は昨年の『マチダvs.ダラウェー』(ブラジル大会)でのリアンドロ・イッサ戦でもガス欠が見られ、3Rの削り合いを耐えられるのかも気になる所です。
一方のラピリュスもリー戦ではほぼスタンドの打ち合いに終始したため、柔術ベースの寝技の強さを観たいという気持ちもありますね。

二人とも穴はあれど自分の強みのある選手であり、この試合の勝者はUFC本土上陸にグッと近づくと思います。
互いに持ち味をぶつけ合い、次戦に繋がるような試合になって欲しいです!!!




※おまけ

(ラピリュスのMMAデビュー戦。ベルギーでデビュー戦同士の試合だったそうです。)

ちなみにラピリュスの右腕には天使のタトゥーが彫られています。
(超大雑把に原文を訳すと)ラピリュス曰く「は格闘技の試合で倣うべき規範であり、天使は侍を見守る存在である」そうです。
なんだか不思議な組み合わせ&独特な解釈だなぁ~と思ったので、蛇足ながら無理やり訳して載せてみました。…もしかしたらどこか訳し間違えてるかもしれませんが;;