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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

中央アジアの衝撃!カザフスタンMMA『Alash Pride(アラシュ・プライド)』大会レビュー

 

画像元: Alash Pride FC's Instagram | © Instagram. 2016

 

Alash Pride / Tech-Krep FC Selection16 2016.10.22 Almaty

開催地:アルマトイ 会場:バルアナ・ショラカ・スポーツパレス

プロモーター:ダニヤル・カスカラオフ(Daniyar Kaskarauov、APFC代表)

スタッフ:アジズ・タスタエフ(Aziz Tastayev、司会進行) 

 

Alash Pride Fighting Championship (アラシュ・プライド・ファイティング・チャンピオンシップ)は、2011年から続くカザフスタンの老舗MMAプロモーションです。APFCはカザフスタンMMAの練習チームを設立し、カザフスタン選手の為のトーナメントを開催する等、同国のMMAを代表するMMAプロモーション。ONEフライ級王者のカイラット・"カザフ"・アフメトフも、APFCフライ級王者で同プロモーションのエースでした。他にも、WSOFとの契約が決まった7勝無敗のサンボ世界選手権3連覇者アルマン・"スンカル(鷹)"・オスパノフ等、今後世界戦へと進出するであろう魅力的なファイターも多くいますね。日本からも清水俊一渡辺竜也等が参戦しています。今大会はロシアのTech-Krep FCとの共同開催で、APFCウェルターカザフスタン・トーナメントの決勝戦も行われました。試合場は八角形ケージで、インターバルをケージの外で取るのが特徴的です。

現在はVK(ヴェーカー)で今大会が配信中なので、ちょっと観てみるのもアリかもです。

 

それでは大会レビューです↓

 

・・・

 

第十試合 メインイベント ライトヘビー級 5分3R

アスルジャン "サック" バヒットジャヌリー(25)

vs.

ディミトリー "シュコリニク" シュミロフ(20)

"シュコリニク"は「男子学生」の意味。

 

1Rから距離を詰めて打ち合う両者。サックが勢いよくフック&ローキックを当てるが下腹部に当たり中断。再開後サックがワン・ツーで攻めるが、またもローキックが下腹部に当たりイエローカードが提示されます。再開してハイキック、胴回し蹴りと攻め続けるサック。シュミロフは左ジャブで距離を作り、サックのミドルをキャッチしてケージに抑え込む。シュミロフが内股を狙うが耐えたサックはボディロックで逆にハイクラッチ、シュミロフもTDを耐えて打撃戦へ戻る。サックが左から右のワン・ツーフックを何度も当て、シュミロフの組みを突き放すとシュミロフはバランスを崩し転倒。サックはシュミロフのオープンガードの上からポスチャー&パウンドを打ち込む。シュミロフはロールしてエスケープするがグラつく。サックがシュミロフのダブルレッグを切り、フックの連打を当ててケージを背負わせる。サックがレバーショット&側頭部への右フックを当てるとシュミロフはダウン。サックは上から鉄槌を落とし続ける。うずくまるシュミロフを見てレフェリーが試合をストップ。

 

終始圧力をかけ続けたサックが、パワーでシュミロフを押し切って1RTKO勝利しました。

 

第九試合 コ・メインイベント フライ級 5分3R

シンギス "シャフ・カザク" カイラノフ(28 APFCフライ級カザフスタン・トーナメント優勝者)

vs.

アレクサンドル "コザック" クルピェンキン(22) 

"コザック"は「コサック」の現地読み。

 

1R。長いコンパスを持つシンギスが鋭い左ストレートでプレッシャーをかける。コザックはレベルチェンジからシングルレッグTDに成功。シンギスが下から十字を狙うが潰してノースサウスマウント&パウンドで攻める。シンギスが脇を差してロールしリバーサル成功。シンギスが抑え込もうとした所でブレーク。再開後は再びコザックのシングルレッグTDが決まり、シンギスのガードを割ってサイドへ。シンギスは下からシングルアームロックを狙うが失敗、フルガードから三角締めも狙って防ぎ切りブザー。

 

2R。シンギスがミドルキックを当てて距離を詰める。コザックは応戦するも距離が遠く、TDを潰されて下へ。シンギスが腕を巻き込んだノースサウスからアームロックを狙う。コザックはロールして上を取り返すが、シンギスが三角締めを極めて一本。

 

今年のAPFCカザフスタン・トーナメント覇者シンギスが、その冠に劣らぬ強さで完勝!最後の三角締めはリバーサルが来ることを見越して罠に嵌めたテクニカルなムーブでした。

 

第八試合 APFCウェルターカザフスタン・トーナメント決勝戦 5分3R

ディミトリー "ニビェスナイ・ヴォイン" クジノフ(30)

vs.

スルタン "ショーナ" キヤロフ(25)

"ニビェスナイ・ヴォイン"は「天空の戦士」の意味。

 

1Rは高純度の打撃戦。クジノフがシングルレッグを狙うも長身のスルタンはスプロールで防ぐ。クジノフがスルタンのミドルキックをキャッチしてTDを成功させるも速攻でブレークがかかる。再開後、クジノフは右ストレートを当ててレベルチェンジ、ハイクラッチに掲げるも一旦離れて打撃戦に戻る。スルタンは左ジャブから圧力をかけてカウンターのアッパー&膝蹴りを狙い、クジノフはステップで一定距離を保ちつつ強烈なワン・ツーでビッグヒットを狙う展開が続く。スルタンが右ローキックを決めて飛び膝蹴りも、クジノフはダブルレッグでキャッチしてTD成功。インサイドガードでポスチャーを狙うも速攻ブレーク。クジノフがレベルチェンジからダックアンダーを決めてTD成功。再びトップを取って1R終了。TDを確実に決めたクジノフが優勢だが、速攻ブレークもあり攻めきれず。

 

2R。クジノフがスルタンのミドルを掴んでTD成功。フルガードのままポスチャーを狙いますが、スルタンが下から腕十字を極めて一本。

 

スルタンがレスリング勝負に苦しみながらも、見事なサブミッションでトーナメントを制覇!

 

第七試合 ライトヘビー級  5分2R

アスラン "ズヴィエル" カイシノフ(19)

vs.

マゴメット "ノックアウチェル" アフメドフ(30)

"ズヴィエル"は「獣」、"ノックアウチェル"は「強打者」の意味。

 

1R。右フックから脇を差して倒しに行くアフメドフ。カイシノフがウィザーで防ぎ足払いを狙うも、アフメドフはケージに抑えボディロックから外掛けTD。アフメドフはパウンドを打ちながらトップキープしてケージに押し込み、カイシノフの三角締めを潰して尚もパウンド。ここでアフメドフがグラウンドで膝蹴りを出してしまい一時中断。再開後にカイシノフがパウンドを受けながらもヒールフックを仕掛け、ヒールで応戦するアフメドフのグリップを抜いてリバーサル。カイシノフがサイドから一気にマウントを奪いパウンドで反撃する。アフメドフもブリッジからリカバリーして再びトップを取り、ポスチャー&パウンドで主導権を引き戻す。ケージに追い詰め強烈なパウンドを打ち続けるアフメドフに対し、カイシノフはインサイドガードをせり上げつつ両腕で両脚を抱える様にクラッチし、アフメドフの腹部内臓部分を両腕&両脚で圧迫(!)。呻き声を上げたアフメドフが堪らずタップし一本。

 

まさかの胴絞め(「ジャックポット」という技だそうです)でカイシノフが大逆転勝利!!初めて観た極めでしたね~!

 

第六試合 フェザー級  5分2R

イーグル "ゾロトーイ・ティグル" ジュルコフ(23)

vs.

クシュタルビェック "ディアス" アミルビェッコヴァ(23

"ゾロトーイ・ティグル"は「金色の虎」の意味。イーグルで金色で虎…(凄い名前だ…)

 

1R。イーグルが強烈なローから右ストレート、打ち合いから一気にTDしてサイドマウント。ケージに寄せながらパウンド。ディアスはヒールフックを狙いつつ脱出を図るも、スプロールで潰したイーグルが一気にスピニングチョークを極めて一本。

 

イーグルがパワーと技術で魅せて見事な1R一本勝ち。名前負けでない実力を証明しました!イーグルは本来APFCライト級トーナメント決勝戦を行う予定が対戦相手の欠場で代役とのワンマッチになった経緯があるので、今後決勝戦がどうなるのかも気になりますね~。

 

第五試合 バンタム級 5分2R

イリヤル "ジナミット" アスハノフ(24)

vs.

カシム "ジェビェ" アヌアルビェック(26)

"ジナミット"は「ダイナマイト」の意味。

 

1R。イリヤルが距離を詰めるがカシムがレベルチェンジからダブルレッグTDを決め、猪木アリから左パウンドを打ち込む。立ち上がったイリヤルの膝蹴りが下腹部に当たり中断。再開。イリヤルのミドルから打撃戦へ。詰めるイリヤルとリーチを使ってワンツーをは放つカシム。イリヤルのミドル、アッパーがヒット、カシムもミドルで反撃。カシムが左突きから距離を作ると、レベルチェンジでTDに成功。再び猪木アリから左パウンド。立つイリヤル。イリヤルがミドルから距離を詰め、カシムがケージに抑えたところでブザー。拮抗のラウンド。

 

2R。距離の取り合いからカシムが組み付く。差し合いを取ったカシムだが、ケージを掴んだ事でブレークされ、イエローカードを提示される。再開後一気にTDを取るイリヤル。下から腕十字&三角締めを狙うカシムだが、イリヤルのパウンドをフリーの顔面に受けて失敗。グラウンド&パウンドで削るイリヤル。立ち上がるカシムをスプロールからギロチンに捉えたイリヤルが、そのままゴゴチョークを極めて一本。

 

力強さと巧みさを魅せたイリヤル"ダイナマイト"が、見事な2R一本勝ちで完全勝利!

 

第四試合 バンタム級 5分2R

ジャスラン "アコイリー" カラクロフ(25)

vs.

カナット "スカラ" ラヒモフ(35)

"スカラ"は「岩石」の意味。

 

1Rは打撃戦。ジャスランが右フックからハイクラッチしリフト、TDを耐えるスカラと差し合いから膝を打ち合うもジャスの下腹部に当たり中断。スタンドで再開。重いローを飛ばすスカラ。ダブルレッグからスラムTDを決めたジャスがインサイドガードでポスチャー&パウンド。ジャスがニーバーを仕掛けるも耐えられスタンドへ。ジャスの連打が入って優勢のままブザー。

 

2R。スカラは頭を振りながらロー&ミドル。ジャスの右フックにスカラのローが下腹部にヒットし中断。偶発的だがスカラにイエローカード。後が無いスカラが一気に距離を詰めて右&左フックをヒット。気合の咆哮を上げるスカラだが、距離が詰まり過ぎてジャスにTDされる。ブレークから激しい打ち合い。ジャスのTDを切って腕十字を取るスカラ。腕十字を耐えたジャスがトップを取り、ケージに寄せてパウンド。最後は猪木アリのまま終了。勝利を確信した様子のジャス。

 

判定は3-0でジャス。良い打撃を当てたスカラでしたが、TDとイエロー一枚でジャスが勝利。

 

第三試合 フライ級 5分2R

バフティヤル "トゥルクペン" ニシップビェック(19)

vs.

ファルホット "ウズベク・ウルフ" ナザロフ(21)

1Rに空手出身のトゥルクペンが鮮やかなハイキックをヒット。ナザロフも右ストレートで反撃しダブルレッグTDを決めましたが、トゥルクペンは下から腕十字を極めて一本。

 

トゥルクペンが速攻の1R一本勝ち!

 

第二試合 フライ級 5分2R

ティムル "ティム" ダンガロフ(25)

vs.

マゴメット "ビェリ・ティグル" カジエフ(22)

"ビェリ・ティグル"は「白い虎」の意味。

 

1Rはカジエフが伸びるワン・ツーからダブルレッグTDに成功…するもマットが濡れていたようで中断して清掃。スタンドで再開。ガツガツ打ちに行くティム、カジエフも応戦。カジエフは再びレベルチェンジからダブルレッグTDを狙い、ティムがこれを切るもカジエフはドライブしティムをケージに抑え込む。カジエフが抑え込みつつ両足ハイクラッチでTD成功。トップを取ったカジエフがグラウンド&パウンド。ティムはインサイドガードから脱出を試みるも、カジエフがリカバリーして削り続ける。

 

2RもティムのミドルにカウンターTDを成功させたカジエフがグラウンド&パウンドで削り続ける。ティムはカジエフの首をギロチンに捉えるも反撃しきれない。残り二分でブレーク。攻め疲れかガス欠したカジエフがTDを切られる。ティムの右ストレートがカジエフの顔面を捉える。崩れながらもTDを成功させるカジエフ。そのままケージに押し込みつつトップキープする。ティムは下から関節技&膝蹴りを仕掛けるも防戦一方。ブザーで優勢はカジエフ。しかし立ち上がれないカジエフ。かなりガス欠は激しい様子。

 

2Rドロー裁定で、延長Rに突入。

プレッシャーをかけるティム。動きの鈍いカジエフだが、シングルレッグで組み付くとダブルレッグでリフトしTD成功。このRもリプレイの展開へ。一旦ブレークが掛かるも再びリプレイ。再度ブレークしますがティムもガス欠を起こし、バックブローをミスして崩れるように倒れて三度リプレイへ。ティムは下から腕十字を狙うも潰され、カジエフがサイドキープして脇腹に膝蹴りを入れた所で試合終了。

 

延長判定はカジエフ。両者デビュー戦ながら、自分の試合をやり通せたカジエフが勝利。

 

第一試合 ライト級 5分2R

ジアス "ヴズルーイ" イェルラヌーイ(27)

vs.

アルマン "アン・ナスル" アリーモフ(32)

"ヴズルーイ"は「爆風」、"アン・ナスル"は「鷲」の意味。

 

1Rは打撃戦。拳法スタンスのジアスが強烈な右ストレートでガンガン圧力をかける。キックスタンスのアルマンはローキックを打ち距離を離すと、そこから細かいワン・ツー&ローで反撃する。ジアスがハードヒットの打撃で優勢を取ったままブザー。

 

2Rも打撃戦で開始。ローで距離を守っていたアルマンだがケージまで詰められ、脱出の際をジアスに踏み込まれ右ストレートを躱しけれず被弾。この一発で更にプレッシャーをかけるジアス。ジアスとの打ち合いで右&左を被弾したアルマンはレベルチェンジ&ダブルレッグTDを決める。アルマンがサイドを狙うが、ジアスはしっかりと片足でバリアを作りガードを割らせない。隙間が出来たところでジアスがロールして脱出する。打撃戦に戻ると、アルマンのローキック&右フックにジアスが右ストレートをカウンターで合わせて行く。よろけるアルマンをジアスがケージに追い詰めたところでマウスピースが飛び中断。再開直後のブザーで試合終了。

 

判定は3-0でジアス勝利。右ストレートの大砲が冴える完勝でした!

 

・・・

 

以上、APFC大会レビューでした!

全体的に、カザフスタンMMAのパワーと技術、そして層の厚さを感じた大会でしたね~。

アジアンの骨太さとヨーロピアンの力強さを兼ね備えたカザフスタンMMAファイター達。

それでいて個性あふれる多様なMMAスタイルが観られ、今後が楽しみになってきました。

世界へと進出していくであろうカザフスタンMMAに期待です!!

 

おまけ

ジャクソン・ウィンクMMAに出稽古するAlash Prideチームの動画レポートです!

動画はシリーズ1~4までありますよ~。チームの一体感を感じます!