9月23日(土)に開催予定のUFC日本大会。
レジェンド・キックボクサーグーカン・サキのMMAデビュー戦など、他競技から幅広いファンの来場を意識した大会として、今までとは違う仕掛けをしていきている印象のある本大会ですが、ハイグレードなMMAの試合を魅せるカードとしては、UFCフライ級の怪物ジャスティン・スコーギンズに大逆転の一本勝ちを決めた佐々木憂流迦(ささき うるか)のランキング入りを懸けた挑戦が非常に熱いですね~!!
今回はそんな憂流迦と対する「MMAフライ級の古豪」にして「フライ級最強格の根業師」である、ジュシエル・フォルミーガについて紹介します!
本名:ジュシエル・ダ・シウヴァ Jussier da Silva
ミドルネーム:フォルミーガ Formiga
国籍:ブラジル人
出身:ブラジル ナタール(リオグランデ・ド・ノルテ州)
所属:キムラ・ノヴァ・ユニオン
関連人物:ジャイル・ロレンソ(チーム代表) ヘナン・バラオン(チームメイト)
ルーツ:柔道(黒帯)、ブラジリアン柔術(黒帯)
スタイル:寝技のポジション・コントロールからのサブミッション
得意技:ミドルキック、裸締め
主な経歴:修斗南米バンタム級王座(防衛3回)、TPF3戦、UFC9戦 ほか
入場曲1:「Monster」 Kanye West
入場曲2:「Árvore de Bons Frutos」 Pregador Luo
入場曲3:「O Hino」 Fernandinho
選手紹介
ミドルネームの「フォルミーガ(Formiga)」はポルトガル語で「蟻(アリ)」を意味します。
正しくは「フォルミーガ・アトミカ(Formiga Atômica)」が短縮されたもので、これは「アトム・アント(邦題「怪力アント」)」というアメリカのヒーローアニメのキャラクターの名前を指すと思われます。
「アトム・アント」は原子の力を持つ主人公のアトム・アントがそのパワーで事件を解決していくスーパーヒーロー作品で、小柄な体躯から強大なパワーを生み出すという意味があるのかもしれません。
「小さな体と大きな力を持つスーパーヒーロー」という意味では、フォルミーガのミドルネームは王者デミトリアス・ジョンソンのミドルネーム「マイティマウス」と近いものを感じます。
フォルミーガはUFCでフライ級が設立した2012年以前より125lb級(123lb級)で活躍してきた、MMAフライ級のレジェンドファイターの一人です。
修斗時代には後楽園ホールで小島"BJ"伸一(こじま しんいち)に勝利し、母国ブラジルではミシャエウ・ウィリアンやアレシャンドリ・パントージャ、ジュニオール・アビディ(シンディー・オリヴェイラ)を相手に南米王座を保持し続けるなど、ブラジルMMA軽量級を牽引する存在として注目を集めます。
そして、アメリカMMAフライ級の黎明期とも呼べるTPF(タチ・パレス・ファイツ)フライ級において、寝技師フォルミーガは曲者イアン・マッコールや新鋭ダレル・モンタギューと並ぶMMAフライ級の代表格となっていきます。
TPFでは、今年の修斗で扇久保博正(おうぎくぼ ひろまさ)と激戦を繰り広げたダニー・マルティネスに勝利した後、マッコールとの激戦の末に初敗戦。
しかしこの試合も、寝技ではマッコールをコントロールするなど接戦でした。
日本から参戦したマモルこと山口守(やまぐち まもる)を得意のバックポジションで封じた熱戦は、日本でも有名ですね~。
vs.イアン・マッコール戦 (「TPF 8」 2011年2月18日)
当時のフライ級最高峰の戦い!フォルミーガのベストバウトの一つですね~。
そんなフォルミーガがUFCと契約したのは、マイティマウスの王座獲得から少し遅れた頃でした。
デビュー戦でマイティマウスの王座挑戦権試合という破格の待遇でしたが、ここで爆裂マジシャンジョン・ダドソンにKOで敗戦し、王座挑戦とはなりませんでした。
その後は母国ブラジル大会を拠点としてUFCで活躍、好試合を重ねるもジョセフ・ベナヴィデスやヘンリー・セフードらとのトップ・コンテンダー戦で一歩及ばず敗戦してしまい、現在まで王座挑戦権を逃し続ける歯がゆいポジションにいます。
今年の試合では獰猛さを持つメキシカン・タスマニアンデビルレイ・ボーグに競り負けてしまい、今回の憂流迦との試合は、いよいよ王座戦線への生き残りを懸けた戦いとなるでしょう。
フォルミーガは現在UFCフライ級5位に座しており、憂流迦にとってもフライ級で存在感を確定させる為の大きな一戦となります!
試合への展望
フォルミーガのスタイルは、スピードと寝技のポジション・コントロールで相手の勢いを封じながら攻めていくテクニカルなグラップラー(寝技師)です。
特にバックポジションを奪う鮮やかさにかけてはMMAフライ級でも世界屈指を誇り、一言でいうなら「バックの鬼」といえます。
しかし、UFCにおいては得意の寝技以外に打撃戦にも対応しており、総合的に実力を上げていると感じます。
vs.山口守(マモル)戦 (「TPF 10」 2011年8月5日)
フォルミーガの「バックの鬼」っぷりが炸裂した試合です!
立ち技においては、オーソドックス(右構え)のムエタイスタンスを崩さずにスタンダードに攻めていきます。
実は見た目以上にリーチが長く、それを有効に使った長打を効かせていくのも強みです。
左右どちらからも強烈なミドル&ローキックを放ち、パンチでは懐に入ったところで大きく振りぬいていくワン・ツー&フックが特徴的です。
パンチはパワーショット気味で勢いがある反面貫通力は弱めで、懐に入った場面では死角からの打撃(特にパンチ)を察知しきれない弱点もあります。
組技&寝技においては打撃戦からレベルチェンジしてシングル&ダブルを仕掛けるほか、相手との組み合い、崩し合いを制することで有利なポジションを奪うなめらかな動きが特徴的です。
得意のポジショニングですが、フィジカルで抑え込んでいくのではなく、むしろ相手にスウィープ&リバーサルを仕掛けさせておいて、そこをチェイスしていく事で相手を根負けさせて支配するという、粘り強いスタイルを持ちます。
特に先述のバックポジションを相手の立ち上がり際に追尾して取るのが非常に上手く、この追尾力がかなりスピーディーで観応えがあるのが好きなところですね~。
一方でフィジカルで潰されてしまうのには弱く、特に後半戦にかけて消耗してくると寝技でもややロックが緩んでしまう場面もみられます。
全体的に「テクニックとスピードで根負けさせて支配して勝つ」「一方でパワー差で圧されると反撃しきれず負けてしまう」のがフォルミーガの特徴かな、と感じます。
憂流迦もUFCフライ級3戦では全てバックポジションで優勢を取ってきているので、この試合は寝技師同士による「バック・ポジションの使い手対決」という見方もできると感じますね。
フォルミーガにとっては、憂流迦の長身とリーチをいかに自分の「勝利のメソッド」にはめ込めるかが注目といえます。
警戒すべきは憂流迦の長打とトップを取られることで、ローやミドルを効かして寝技でも先手を取ってポジションを支配していきたいのかな、と感じますね~。
憂流迦にとっては、逆にいかに長打を決めてフォルミーガの泥沼に序盤で捕まらないようにするかが大事かな~と思います。
後半戦であれば寝技のポジショニング合戦でも体格差が優位に働く可能性はあると感じますし、その為にも後半戦にガス残量を残しておける体力の強化が大事になってくると感じます。
お互いに得意なテリトリーが近く、警戒し合い打撃戦中心になる可能性もあれば、寝技で泥沼のポジショニング・ウォーとなる可能性もあると感じます。
噛み合うにしろ、噛み合わないにしろ、日本MMAにとって大きな意味のある試合であると思います!
憂流迦がフライ級屈指の寝技師を倒し、その強さを確固たるものとできるか。
それともフォルミーガが「アトム・アント」として憂流迦の長身と寝技を封じきるのか。
UFCフライ級にライバル無き暗闇の時代だからこそ、両雄の激突に期待したいです!
おまけ
氷風呂に入るフォルミーガ。
ひや~~~!!(冷たい)