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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

2018年3月 カナダMMA『TKO 42』大会前のカード紹介【ララミーvs.アンドレジーニョ】

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3月16日(金、現地)にカナダMMA最大プロモーション『TKO 42』が開催されます

まだ再来週と遠いですが、熱いメーンカードたちから4試合を紹介です!

 

◆□◆ TKOフェザー級チャンピオンシップ 5分5R ◆□◆

 

"ザ・トゥルース"

TJ・ララミー(王者)

"The Truth" TJ Laramie : Champion

オンタリオ州ウィンザー出身 マキシマムトレーニングセンター所属

所見:ボクシングとレスリングの連携により、勇猛果敢に攻め込むインファイター

得意技:ショートフック、ダブルレッグTD、ポスチャー※1からのパウンド

vs.

"アンドレジーニョ"

ジョアオン・ルイス・ノゲイラ(挑戦者)

"Andrezinho"João Luis Nogueira : Challenger

セアラー州フォルタレザ出身 チームノゲイラ所属

所見:強力なフック連打と優れたポジショニング、関節技で大局を掴む試合巧者

得意技:オーバーハンド、リードフック※2、ギロチンチョーク

 

年末にTKO軽量級のエースとなった「小さな巨人」ララミーが早くも初防衛戦です。

現TKOで最強の挑戦者であろう、"アンドレジーニョ"ノゲイラと激突します。

 

昨年末に王者となったララミーは小柄でリーチも決して長くはないですが、スイッチしながら放つ蹴りから相手の打撃を恐れずインファイトを仕掛け、ショートパンチ&TDの連携で翻弄する勇猛果敢なスタイルが魅力です。

昨年のフェザー級チャンピオンシップでは、新鋭の双璧であったシャール・ジョーダンをダブルレッグTD(テークダウン)で抑え、ポスチャー※1からパウンドや肘を打ち込み完封勝利で王者になりました。

対する挑戦者アンドレジーニョは、TKO参戦後わずか一勝で王座挑戦権を手にしました。

理由はララミーが唯一敗れたアレックス・モーガンに勝利したからで、モーガンから挑戦権を勝ち取ったといえます。

モーガンは優れたジャブ&ストレートで狙撃するストライカーで、ララミーは果敢に踏み込むもストレートを被弾し敗れましたが、アンドレジーニョはジャブを避けて懐に潜り込み、得意のオーバーハンドやリードフック※2を当て、ダブルレッグTDを決めてモーガンに勝利しました。寝技ではポスチャーやハーフポジションに引き込み、パウンドや関節技で攻めています。

 

ララミーは上記の通り接近戦に持ち込んでレスリング勝負に持ち込みたい所だと思いますが、経験豊富で隙の無いアンドレジーニョを抑えきることは難しく、全局面でぶつかり合う勝負を期待したいです。

個人的にはアンドレジーニョに想い入れが深いのですが、ララミーもデビュー戦が日本で(3年前のパンクラスです)、ずっと観てきた選手なので、良い試合になって欲しいと願っています!

 

※1=「姿勢維持」。正確にはポスチャー・イン・ガード。ガードポジションに入ったままトップコントロールすること。

※2=「前手のフック」。リードとはリードハンド(前手)のこと。ちなみに後ろ手はリアハンド。

 

◆□◆ TKOフェザー級 5分3R ◆□◆

 

"エアー"

シャール・ジョーダン

"Air" Charles Jourdain

ケベック州ブロイユ出身 アカデミープロスターMMA所属

所見:強烈な打撃と首相撲に裏打ちされた、攻撃的なトリックスター

得意技:ストレート、膝蹴り、首相撲からの膝蹴り、レッグスウィープ※3

vs.

"ザ・マンティス"

マタール・ロー

"The Mantis"Matar Lo

ダカール出身 オンタリオ州オタワ在住 OAMA/ヘンゾグレーシー柔術所属
所見:長い手足で強烈な打撃を放ち、首相撲と連携して一撃KOを狙うスナイパー
得意技:遠い間合いから放つラウンドキック※4、首相撲からの膝蹴り、アームバー
 

ラミーとのエース決定戦に完敗し、今回が復帰戦となるトリックスターのシャール。

セネガル蟷螂」マタールとのムエタイストライカー対決が決定。かなり熱いです。

 

シャールはムエタイと柔道とが合わさった、攻撃的なスタイルの持ち主です。

終始前に出続けてパンチを連打し、跳び膝蹴りも打ちます。接近すると首相撲から膝蹴り、そこからレッグスウィープ※3でTDし、ポスチャーから怒涛のパウンド、金網を掴み飛び上がってのボディへの踏み付けなど、トリッキーな攻めで相手を翻弄します。

シャールはトリックスターとしての強さがあり、センセーショナルな勝ち方で人気も高い選手です。一方で受け身な戦いは苦手で、ララミー戦では終始ボトムポジションから上手く攻められず精彩を欠く敗戦を喫してしまいました。

対するマタールは蟷螂の異名通りに細身に長い手足を誇るロングレンジストライカーです。

リーチを活かした懐の深さと強烈無比なラウンドキック※4が最大の武器であり、首相撲からは崩して膝蹴りで攻めていきます。

シャールと同じく首相撲からのレッグスウィープも得意で、長い手足で相手を覆うように組み付き、そこからアームバーなど関節技に捉えていきます。

マタールもまた、センセーショナルなKO勝ちと蟷螂のような長い手足のアフリカンというキャラクターの強さから人気の高い選手です。

 

二人とも攻撃的かつセンセーショナルな勝ち方で、ムエタイをルーツにしていることからも、1Rから激しい攻防を期待してしまいます。

遠距離からも攻撃でき、組みにも対応できるマタールが有利かな、と思いますが、シャールが持ち前のトリッキーさで主導権を握れば、そのまま一気に勝つ可能性もあると思います!

 

※3=「足払い」。主に立ち技で相手を転ばせること。

※4=「回し蹴り」。ハイ・ミドル・ローキックなど横に振り抜く蹴りの総称。

 

◆□◆ TKOフライ級チャンピオンシップ 5分5R ◆□◆

 

”ザ・カナディアンフェノム”

ジョーダン・グラハム

"The Canadian Phenom" Jordan Graham

オンタリオ州ベルビル出身 ロイヤリストマーシャルアーツ所属
所見:キレのある長打で攻め続ける、恐れ知らずの期待の新鋭ファイター
得意技:回転の速いフック連打、跳び膝蹴り

vs.

"エックス"

マルコム・ゴードン

 Malcolm "X" Gordon

アルバータ州カルガリー出身 アドレナリンMMAレーニング&フィットネス所属

所見:素早いボクシングによる鮮やかなコンビネーションを魅せるストライカ

得意技:ショートクロス※5、スイッチしても打てる両利きのジャブ

 

TKO初のフライ級チャンピオンを決める一戦に、勢いに乗る新星ジョーダンが登場です。

対戦相手は大抜擢のベテランストライカー、マルコム。非常に趣深いカードです(最高)

 

ジョーダンはキレのあるストレートや膝蹴りと、恐れ知らずの突貫力が武器の新鋭です。

昨年にデビュー戦をTKOで飾り、インパクトのある二連勝で王座戦にたどり着きました。

細身で長身なのでTDで押し敗けるものの、足を巧みに絡めてフックしながら寝技でもアグレッシブに攻めていきます。昨年末には格上のトニー・ララミーに恐れずに攻め、二段跳び膝蹴りでダウンさせて完勝しました。

相対するマルコムは、素早いボクシングで鮮やかなKOシーンを生み出すストライカー。

ディフェンス面で脆いところが弱点ですが、パンチの打ち合いでは無類の強さを誇ります。

特に必殺の一撃であるショートクロス※5は、独特の軌道を描くマルコムの代名詞といえます。

マルコムはTKO 36でキャッチウェート戦(階級から外れた双方の同意した体重契約)に敗れてしまったものの、カナダのお隣ミシガン州MMAのWXCで王座獲得&18秒KOで防衛成功という成果を挙げて、王座戦に大抜擢を受けました。

 

TKOやMFCの無いカナダMMAの充電期間の時代を引っ張ってきた一人であるマルコムと、その時代に発達したアマチュアMMAで勝ち抜き大舞台で華々しくデビューしたジョーダン。

世代を超えて激突するカナダMMA頂上決戦。大いに期待しています!!

 

※5=「近距離のクロスカウンター」。顎先端の側面を相手の腕の外側から打ち抜くフック。

 

◆□◆ TKOウェルター級 5分3R ◆□◆

 

"ザ・ボス"

コリン・ビッキ
"The Boss" Collin Baikie

ラブラドール州ノースウェストリバー出身 トライスタージム所属

所見:リードフック&ストレートの強振パンチで相手を粉砕するパワーファイター

得意技:ストレート、フック

vs.

"ザ・マシーン"

ミカエル・デュフォー

"The Machine" Michael Dufort

ケベック州ソレル出身 ファイトクラブサンジャン所属

所見:ギロチンチョークや裸絞めを得意とする、極め時を逃さないグラップラー

得意技:パウンド、裸絞め、ギロチンチョーク

 

壊力抜群の強振フックで勝っても敗けても熱い試合で魅せるビッキが登場。

得意のギロチンで一本勝ちするも超過してしまい階級を上げたデュフォーを迎え撃ちます。

 

ハードパンチでガンガン前に出て粉砕するビッキに対し、裸絞めやギロチンといったチョーク技にキレ味を誇るデュフォー

デュフォーウェルター級初挑戦であり、ビッキがパワー差で短期決着を決めてしまうのか、それともデュフォーが斬り返して新階級で勝利を挙げるのか。

短期決着の多い二人なので、消耗戦になった時にどこまで動けるのかにも注目です。

 

◆□◆

TKOが8年ぶりにサプライズ復活してから1年3ヶ月経ちました。新たな新鋭達の台頭に昨年末には5階級で新王者が誕生と、プロモーションの体勢が急速に整ってきていると感じます。

MFCが活動休止してからの2年間はカナダMMAに大きなプロモーションが無い充電期間の時代でしたが、その分リージョンMMAプロモーションやアマチュアMMAの体制が活性化し、結果として現在のTKOの勢いにもつながったと感じます

今年もTKOでカナダ戦士達のたくさんの名勝負が観られることでしょう!