「UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)」はCOVID-19の世界的な流行を受けて開催を中止していましたが、来週末の「UFC 249」には一転して開催に向けた強い姿勢を見せています。
開催地については現在多くの州でスポーツ開催が禁止されている事もあり、未だに不透明です。その為、アブダビやベラルーシ、詳細不明の離島など複数の情報が錯綜していました。
しかし、ここにきてネイティヴ・アメリカン居住区の管理下にある「タチ・パレス・カジノ」で「UFC 249」が開催されるという情報が新たに出回っています。
ネイティヴ・アメリカン居住区におけるMMA開催…その長い歴史
ネイティヴ・アメリカン居住区は州の管轄外にあり、MMAが州認可を受けられなかった厳しい時代にも「KOTC(キング・オブ・ザ・ケージ)」等のイベントを独自に開催してきた歴史があります。
「タチ・パレス・カジノ」は「軽量級MMAの聖地」とも呼べる会場であり、カリフォルニア州のMMAの発展を見守り続けて来ました。MMAの歴史的に重要な意味を持つ試合が行われて来た会場でもあります。
初期「WEC」の開催地
「タチ・パレス・カジノ」は初期WEC(ワールド・エクストリーム・ケージファイティング)の開催地です。Zuffaに経営権が移行するまで、WECはタチ・ヨクト族のネイティヴ・アメリカン居住区において運営されていました。
WECはもともとネイティヴ・アメリカン居住区のMMA組織であり、Zuffa後もベルトの羽根飾り状のレリーフ等にその名残を残していたと感じます。
Zuffa後の試合が有名なWECですが、初期WECはユライア・フェイバーやニック・ディアズ、カロ・パリジャン、ギルバート・メレンデス等、後にMMAの第一線で活躍する選手達が頭角を現した舞台です。それらの試合も「タチ・パレス・カジノ」を中心に行われました。
フライ級黎明期の最高峰「TPF」の開催地
WECがZuffaに経営権を移行した後、当時の関係者達はノウハウを活かした独自のMMA組織を立ち上げます。
「PFC(パレス・ファイティング・チャンピオンシップ)」という名前の組織で、リングで試合が行われました。PFCからはジョセフ・ベナヴィデスやチャド・メンデス、エヴァン・ダナム、マーク・ムニョス等の選手が台頭しました。日本からも後のパンクラス王者である中山巧(タクミ)がPFCに参戦していました。
PFCが活動を終了すると共に、新たなMMA組織が「タチ・パレス・カジノ」にて開催されるようになります。
「TPF(タチ・パレス・ファイツ)」という名前の組織で、実質的にPFCの後を継いだイベントでした。TPFはケージで試合が行われました。
「PFC」と「TPF」はMMAの歴史的に重要な意味を持つイベントです。その理由は「アメリカにおいて初めてMMAフライ級を創設・開拓したイベント」であったからです。
イアン・マッコール、ジュシエ・フォルミーガ、ダレル・モンタギュー…彼らはTPFフライ級の主役となった選手達です。その戦場には、日本からも修斗二冠王の山口守(マモル)が参戦していました。
TPFフライ級は当時のフライ級MMAにおいて最高峰の舞台であり、UFCフライ級が創設されてからも若手選手の登竜門であり続けました。
「タチ・パレス・カジノ」はアメリカにおける軽量級MMAの発展を見守り続けてきた聖地なのです。
・・・というわけで、思い出の聖地「タチ・パレス・カジノ」の紹介でした!
UFCが州管轄外での開催をしようとネイティブ居住区に行くというのは、いかにも切迫感を感じてしまいますね~。(開催が確定したわけでは無いですけれども)
なんだかUFCが開催を危ぶまれた厳しい時代を思い出してしまって、なんとも憂鬱な気分になるのでした。
聖地「タチ・パレス・カジノ」でCOVID-19が発症してしまったら、わたしにとって非常に辛くて苦しいですし、開催地に関わらず危険性は十分にあるといってよいでしょう。
MMAに関わる全ての人々(特に主要メディア)がギリギリまで開催の是非を問い論じ続けるべきですし、感染対策や周辺地域への配慮等について詳細を公表するよう訴え続けていくべきでしょう。ドラマチック本能や分断本能に流されない客観性を伴う決断を求めたいです。
MMAはいま再び社会的な存在価値を問われる時が来ています。