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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

「LFA 84」全試合レビュー!パンデミックの中で闘う過酷さ…そして最高のタフファイト王座戦!!!

 


「LFA 84」はCOVID-19パンデミックの中で再始動を果たしました。

4週連続の無観客大会の1週目だった今大会でしたが、パンデミックの影響による欠場、カード変更等多くのトラブルが見られた大会となってしまいました。

当初に予定されていたカード7つのうち順当に行われたのは3試合のみ。残り1試合は2カードの片方の選手同士が緊急に組み直されるという慌ただしいものです。

選手の調整にも影響が出ていたのは明らかで、精彩を欠いてしまう選手も見受けられたと思います。

それでも試合は組まれて、勝敗はつきます。4試合のレビューです!!

 

第一試合 LFAフェザー級 5分×3ラウンド

ブルーノ・"タイガー"・ソウザ vs. カムエラ・カーク

 

町田流空手の継承者ソウザが柔術家のカークと相対した一戦。

試合前はカークが地力で有利かな~と思っていましたが、ソウザが予想以上の進化を見せて打撃戦でカークを翻弄しました。

ソウザはリョート・マチダ達に師事する町田流空手の使い手ですが、LFA初戦のマット・ハメル戦ではレスリング勝負で圧倒されてしまいました。結果はハメルが後頭部へパンチを打ってソウザが反則勝ちを拾いましたが、課題を突き付けられた試合でした。

今回のソウザは今まで以上に慎重かつ長い距離を維持して闘っていて、スタイルの進化が見られた一戦でした。カークに四つに組まれてもフレームをかけて正面勝負を避けたのも良かったです。

ソウザはボディへの前蹴りを多用していました。カークはDWCSでビリー・クアランティロにボディを打たれ続けて逆転負けしており、ソウザも弱点としてボディを狙った可能性があります。それでもカークは前進してフックを振るい、結果として勝負はスプリット判定となる接戦になりました。

カークがいつものようにテイクダウンを狙わなかったのは、カーディオに不安があったからかもしれません。パンデミックの影響かもしれないな~と思ったりしました(憶測ですが;)

 

第2試合 LFAキャッチウェイト(150lb、68kg)

ショーン・ウェスト vs. ボストン・サーモン

DWCS一期生サーモンが再起を懸けた試合は、苦い結末となりました…。

サーモンに挑む形になったCaged Aggressionバンタム級元王者のウェストですが、想像以上にサーモンに拮抗できていたのが素晴らしかったです。四つ勝負にも負けていないし、パンチの打ち合いでも拮抗していましたね~。

サーモンもカーフキックやミドルキック等、引き出しの多さでウェストを徐々に削り込んで行きます。サーモンらしい攻め方で、二人とも明らかにKOを狙うフルスイングの打ち合いが展開されました。

そして左ストレートからの右フックが相打ちになりダブル・ノックダウン!往年のカルロス・コンディットvs.ダン・ハーディーを彷彿とさせる衝撃シーンでした。

ここまでは名勝負でしたが、最後の最後にアクシデントが起こってしまいました。ダメージから復帰したウェストが立ち上がろうとしたサーモンの顔面に膝蹴りを打ち込み、サーモンが失神してしまいます。サーモンは右膝と右掌をマットにつけていたので、これは完全に反則となってしまいます。

千載一遇のチャンスを自らのミスで逃して反則負けとなってしまったウェスト…。これは痛恨のミスでしたね~;サーモンにとっても苦い勝利となってしまいました…

 

第3試合 LFAウェルター級 5分×3ラウンド

マイコン・メンドーサ vs. カシアス・ケイン

アンドレ・フィアリョとタイラー・レイがCOVID-19感染者と接触していた事で欠場になってしまい、二人と対戦予定だったケインとメンドーサが緊急で試合を行う事になりました。

MMAはコンバット・スポーツなので才能勝負な面もありますが、結局はスポーツなので準備や調整がしっかりしていないと良いパフォーマンスはまず出来ません。この試合は調整の差が露骨に出ていた試合だと思います。

ケインは本来ボクシングの技巧に優れた選手ですが、この試合ではいつものキレがほぼ見られず、みずから組み付いてテイクダウンを狙う事に終始しました。集中力もいつもに比べて良いとは思えず、準備が出来ていないように感じましたね~;

一方でメンドーサはとにかく素晴らしかったです。普段はのらくらムエタイなイメージの人ですが、今回は首相撲からリフト&スラムでテイクダウンを奪い、蹴りの連打で距離を支配するとホイールキック(後ろ回し蹴り)をボディに刺してガッツリと効かせます。

ケインも踏ん張りを見せてテイクダウンを取りますが、メンドーサはボトムから三角絞めに捉えて一本勝ち!調整に差はあるとは感じましたが、それとは関係なくメンドーサが見事な攻めで快勝を手にしました!!

 

第4試合 メインイベント LFAフェザー級王座戦 5分×5ラウンド

ジャスティン・ゴンザレス vs. ジェイク・チルダース

※ゴンザレスが第3代LFAフェザー級王者に

 

COVID-19パンデミックに振り回された本大会ですが、メインイベンターの二人は仕上がり、試合内容ともに本当に素晴らしかったです!この王座戦へ賭けて来た二人の情熱を感じる試合でしたね~!

この試合は質実剛健、真っ向勝負のゴンザレスの攻撃に、柔らかくスムースな曲者チルダースがどう切り返すかが一つの焦点でした。

ゴンザレスは「攻めが強いが予想外のハプニングに脆い」可能性があるタイプ、チルダースは「圧倒的攻撃力の前にはスムースさを出せずに潰されてしまう」可能性があるタイプと予想していました。そこを切り抜けられるかの「証明」を期待する一戦だったと思います。

結果として、二人とも「証明」を見事に果たしてくれた一戦でした!この時点でかなり満足しましたね~。二人とも本当に素晴らしいMMA選手だと思います。

ゴンザレスはボクシングに秀でると思ってはいましたが、本当にレベルが高かったです。ほぼチルダースのパンチを先に読み、回避&カウンターを次々に合わせる様は圧巻でした。フットワークもかなり洗練されて美しいです。

チルダースは何と言っても猛攻を耐えてあわや大逆転と思わせた2ラウンドの肩固めでしょう。キムラスイープからバックグラブを奪い、反転するゴンザレスに待っていたとばかりの肩固めの罠で捕獲したのは見事でした!結果的にセットアップしきれず仕留めきれませんでしたが、逆転勝ちへの十分な可能性を魅せたと思います。

しかし、ここで極められなかった事がチルダースにとって致命傷でした。ゴンザレスもその後はテイクダウンを狙う事なく徹底したパンチ主体の打撃戦に切り替えましたね。特に3ラウンドに見せたダックアンダーで組み付きながらサイドへ回り、死角からパンチ連打で即追撃するのは最高でした!レベルチェンジもかなり上手くて、ボディアッパーやクリンチニー(首相撲で固めて膝蹴り)も非常に洗練されていました。

ゴンザレスは2ラウンドのピンチを乗り切ってチルダースを破壊的な打撃で撃ち抜き続けてレフェリーストップTKO勝ち。LFAフェザー級のベルトを歓喜と共に腰に巻きました!最後までタフに闘い続けた二人のパフォーマンスに拍手です✨

 

終わりに

今回のLFAでは、COVID-19パンデミック下で最高のパフォーマンスを見せられるよう準備する事の大変さを改めて痛感した大会でしたね~。

むしろ期間が長引けば長引くほど、身体の調子も落ちてきて調整も難しくなってしまう危惧もあります。過酷な状況下で試合をする選手、そして無念の欠場となってしまった選手、どちらも本当に過酷です。

大前提としてMMAというスポーツは準備期間が必要です。準備期間なしに闘えば、モチベーションも調整も技術も最高の状態を出すことはまず不可能でしょう。それでも試合を行うという事は賭けです。

現実的に立場や関係で試合をせざるを得ない事もあるでしょう。逆に、こういう非常時にこそ真価を発揮できるナチュラルな強さの選手も間違いなく存在します。それぞれの事情を憶測で想像する事は野暮です。

全ては試合場のなかで起きた事を観るのみ。観届けるのみ。

懸命な人達の姿を通じて、改めてそんな初心に立ち返ったのでした。

 

来週もLFAは続きます!!どの選手もがんばれーーーー!!!!🔥🔥🔥