『100% Fight 44 -シセ vs. ミシュチェンコ-』
2021年10月29日(金)
シルク・ボルマン&モレノ劇場 (フランス パリ)
『100% Fight(ソン・ポーソン・ファイト)』はフランスで最も歴史あるMMAプロモーション。
その始まりは2005年の『Xtrem Gladiators(エクストレム・グラディエーターズ)』まで遡ります。
『Xtrem Gladiators』は、MMAが禁止されたフランスにおいてパウンド&肘打ちの無い「パンクラス(パンクラチオン)ルール」を独自に採用し、フランスにおけるMMA大会を初めて開催しました。
その後は2008年に新イベント『Contenders(コンテンダーズ)』を開催。
『Contenders』を経て、2009年にフランスMMA『100% Fight』第1回大会が開催されたのでした!
2020年にフランスでMMAの国内開催が公認されるまでの長い間、フランスのMMA選手は国外(欧米圏やカナダのケベック州などのフランス語圏)でキャリア構築を余儀なくされてきました。
『100% Fight』はそんな厳しい時代にあって、パウンドを禁止した「パンクラスルール」でMMAフランス国内大会を開催してきたのは前述の通りです。
『100% Fight』によってMMAキャリアを芽吹かせた若い才能たちの中には、経験を積んでメジャー契約を勝ち取った選手もいます。
現UFCヘビー級王者フランシス・エンガヌーがまさにその筆頭であり、テイロー・ラピリュス、ミカエル・ルブー、メフディ・バクダッド、ナスルディン・イマヴォフ、ファレス・ジアムといった選手達が過去から現在に至るまでメジャー参戦を果たしてきました!
2020年のパンデミックは『100% Fight』にも暗い影を落としましたが…
ついに今年の10月に活動再開、『100% fight 44』が開催されました!
会場にはパリのサーカス一座「シルク・ボルマン&モレノ」の劇場が選ばれ、中央の円形ステージにMMAケージが設置されました。
本大会はFMMAF(フランスMMA連盟)の統括によるケージ&統一MMAルールで試合が行われ、『100% Fight』において「パウンド&肘打ち」が全面解禁された記念すべき大会となりました。
『100% Fight』を率いる「アッチ」ことステファン・ショーフォリエ代表は2022年までに7大会の開催をすでに発表しています。
『100% Fight』から他プロモーションでも活躍中のファバカリ・ディアッタやケヴィン・ペッシ、ズーナマ・シセ、エマニュエル・ダワ達に続く、フランスMMAの新たな才能がこの舞台で開花される事を期待しています!!
それでは試合レビューです!
<メインイベント ヘビー級 5分×3ラウンド>
ズーナマ・シセ(フランス)
vs.
フランスMMAの剛腕、シセが4年ぶりの復帰戦に挑みました。
1ラウンド、シセは四つ組みでケージに詰めると、右四つからミシュチェンコの左内腿を掬ってTDに成功します。
シセはサイドを獲って押さえますが、ミシュチェンコは下からシセの首を巻き込みスリーブチョーク(エゼキエルチョーク)気味に絞めていき、シセが振りほどこうとスペースを開けたところで脱出して立ち上がります。
互いにパンチを振り合いながら正面から組み合う展開が続きます。
シセは左右オーバーハンドで攻めながらボディロックを獲り前へ崩しにかかりますが、ここをミシュチェンコがウィザー&内股で逆に投げ返してTDを成功。
ミシュチェンコはハーフのまま両腕で枕を作ってクロスフェイスに押さえると、頭の後ろ手で四の字を組みシセの頭部をクラッチします。
ミシュチェンコはシセの頭部を固定すると胸部で圧迫し、ここでシセがタップアウト!
結果はミシュチェンコが1ラウンド一本勝ち!
ミシュチェンコが極めた技は「スマザーチョーク(窒息絞め)」と呼ばれる技で、両腕で頭部を固定し胸部で圧迫して窒息させる絞め技です。
MMAでも割と珍しい形のフィニッシュでしたね~!チョークが得意なミシュチェンコならではの一本勝ちでした!
復帰戦でメインイベンターを務めたシセは無念の一本負けでしたね~;
ベテランのイメージですけどまだ27歳、ここからの再挑戦も観てみたいです!!🔥
<コ・メイン ウェルター級 5分×3ラウンド>
ジョエル・クアジャ(フランス)
vs.
1ラウンド、クアジャがじりじりと圧力をかけてシャボルタスにケージを背負わせ、シャボルタスのレベルチェンジに前蹴りを合わせ、続けて右クロスで追撃します。
シャボルタスは圧力に思うように動くことができず、クリーンヒットではない攻撃に蹲ってしまうシーンも。
最後はクアジャがケージを背負わせて前蹴り&フック連打でダウンさせレフェリーストップ。
結果はクアジャが1ラウンドTKO勝ち!
シャボルタスは恐怖に足が竦んでしまったような硬直がみられ、十分な動きを見せることができませんでしたね~💦
クアジャも実力をしっかり魅せることが出来ないまま決着となりました。
MMAは自らの恐怖との闘いでもある事を痛感させられる一戦でしたね…(´;ω;`)
<ライトヘビー級 5分×3ラウンド>
ヤン・クアジャ(フランス)
vs.
カラル・ハモディ(フランス)
『100% Fight』でキャリアを積んできた生え抜き選手同士の一戦!
1ラウンド、ハモディがダブルレッグでTDを仕掛けるも、クアジャはリバーサルして防御します。
ハモディはフックから果敢にTDを狙いますが、クアジャはスイープで脱出して容易には寝技に持ち込ませません。
クアジャは右オーバーハンドを振り抜いてラリアート気味に打ち込むと、左右フックを次々とヒットさせます。
クアジャは左ダートからスイッチして右フック、ボディロックを獲るとチェアスロー(小外掛け裏投げ)でTD!
クアジャは立ち上がり際に左フックを連打、首相撲からハモディを中央へ崩すと左右フックに合わせ次々とスイッチ、ハモディを追い込みます。
最後はクアジャが狙い澄ました右ストレートでダウンを獲りノックアウト!
結果はクアジャの1ラウンドKO勝ち!!
クアジャはダレン・ティルのような縦構えのムエタイスタイルで、パンチをよく見てスウェーバックしながら、構えをスイッチ(シフト)させて強打を打ち込みKOしました。
豪快なフィニッシュでしたね~~!bb
<フェザー級 5分×3ラウンド>
デヴィッド・トナティウ・クロル(メキシコ/フランス)
VS.
ソフィアン・ブガムーン(フランス)
1ラウンド、ブガムーンが背を立てて遠距離から右ストレート&左ハイを打ち込み、クロルがダックイン&フットワークで潜り込みフックを振るう打撃戦が展開。
ブガムーンは飛び膝蹴りを打ち込むも、クロルも脚を掬いTDに成功。
ブガムーンは左ジャブ&右フックで攻め、クロルは鯖折りでTDしてパウンドで攻めます。
2ラウンド、ブガムーンが左スティッフジャブで距離を制して主導権を握ります。ジャブから右ストレート、左ミドキック、飛び膝蹴りと思い切りよく攻め続けます。
クロルは残り1分でアンクルピックを獲りTDに成功し、バックを獲ります。
3ラウンド、ブガムーンが左ジャブから右ストレート、構えをシフトして左フックを振るい打撃のラッシュを仕掛けます。
クロルも前蹴り、右ボディフックで反撃し、アンクルピックで再びTDする事に成功。パウンド連打で攻めた所で試合終了!
結果はブガムーンが判定2-1のスプリット勝ち!
打撃でブガムーン、寝技でクロルと優勢がはっきり分かれた試合でしたね~。クロルは打撃を完全に喰らってはいなかったものの、ブガムーンの波状攻撃に足が止まってしまった事が影響したように感じますね~。
とはいえ、TDをしっかり獲ったクロルの勝ちも十分あり得た接戦であったと感じます!
<ウェルター級 5分×3ラウンド>
ルスタム・セルビエフ(チェチェン共和国/ベルギー)
vs.
1ラウンド開始からセルビエフが左ハイ、膝蹴りとアグレッシブに打撃を仕掛けます。
マズレンコもアッパーにカウンターを合わせて反撃を見せるも、徐々に後退しケージを背負わされていきます。
セルビエフは打撃に意識を散らしておいて狙い澄ましたレベルチェンジ&ダブルレッグTDに成功!
セルビエフが一気にパウンド連打で攻め込みレフェリーストップ!
結果はセルビエフが1ラウンドTKO勝ち!
AKAでハビブ・ヌルマゴメドフのスパーリングパートナーを務めていた経歴も持つセルビエフ。
目標であるUFC契約に向けて更なる進化を遂げていって欲しいです!
<ウェルター級 5分×3ラウンド>
アティラ・コバス(トルコ/フランス)
vs.
バイサングル・チャムソディノフ(チェチェン共和国/フランス)
1ラウンド、コバスが小刻みにヘッドスリップしながら打撃を放つのに対し、チャムソディノフは蹴りをカットしてTDを獲って攻めます。
チャムソディノフは四つ組みでケージへ寄ると体落でTD、コバスは一度立ち上がりますがチャムソディノフは更にチェアスロー(小外掛け裏投げ)でTDして攻めていきます。
2ラウンドもチャムソディノフが右ハイキックからのボディロック&チェアスローでTDを獲って攻め続け、続く3ラウンドも右ハイから小外掛けでTDし試合を支配します。
最後はチャムソディノフがマウントを奪って肘打ち&パウンド連打でレフェリーストップ!
結果はチャムソディノフが3ラウンドTKO勝ち!
チェチェン共和国の出身である弱冠20歳のチャムソディノフ、強いですね~✨
サンボor柔道の投げ技で試合を掌握した完勝でした!
<フェザー級 5分×3ラウンド>
ラムザン・ジャンビエフ(チェチェン共和国/フランス)
vs.
1ラウンドからジャンビエフが速攻を仕掛け、サークリングするグレゴリャンを左リードフックで捕まえるとTDに成功。
ジャンビエフはファーサイドに飛びながらマウント、バックライドと次々とポジションを獲ります
最後はジャンビエフがバックマウントから両腕でパウンドを振らせてレフェリーストップ。
結果はジャンビエフが1ラウンドTKO勝ち!
ジャンビエフはチェチェン共和国出身の21歳、現在はフランスへ移住している期待の新鋭ファイターです。
ジャンビエフやチャムソディノフといった「カフカス地方出身のフランス移民」達はUFCで活躍中のナスルディン・イマヴォフ*1にちょっぴり経歴が似てますね。
才能に溢れたレスリング&カフカスパワーで活躍していって欲しいです!🔥
<ライト級 5分×3ラウンド>
ノア・グニョン(フランス)
vs.
ジェシー・シャトーヌフ(フランス)
1ラウンド、開幕グニョンがTDを狙うもシャトーヌフはスイープで引っ繰り返して上を獲ります。シャトーヌフはパウンドを狙うもスペースが空き猪木アリ状態に。
グニョンはすぐに立ち上がり立技に戻すと、右ロー、左ハイと蹴り込みながらボディロックスラム等で果敢に攻めます。
シャトーヌフも反撃し、首相撲からの肘打ち合戦などMMAルールらしい攻防が続きます。
2ラウンドになるとグニョンが距離を上手くとりヒット&アウェーの打撃からシングルレッグで片脚を掬います。
グニョンは片足をハイクラッチで抱えながら小外に刈ってTD成功。
マウント&バックマウントを獲ると裸絞めでタップアウト!!!
結果はグニョンが2ラウンド一本勝ち!
グニョンはデビュー戦とは思えないウェルラウンドなMMAを魅せてくれましたね~✨
<ウェルター級 5分×3ラウンド>
vs.
トマス・グロート(フランス)
1ラウンド序盤にグロートが四つ勝負でケージに詰めて圧力をかけ、リトヴィネンコがウィザーから小手投げでカウンターTDを狙います。
グロートは投げられるもすぐに正対、ダブルレッグで掬って逆転のTDを成功させます。
上を獲ったグロートはパウンドと肘打ちを打ち込み攻め込み、リトヴィネンコも下からガードを狙いますが激しく流血してレフェリーストップ!
結果はグロートが1ラウンドTKO勝ち!
パウンド&肘打ちが全面解禁されたフランスMMAの新しい一面を印象づける試合でしたね~。
<フライ級 5分×3ラウンド>
vs.
エレン・コシュクン(フランス)
開幕から強振パンチを振り抜き合う打撃戦が展開!
1ラウンドは先制打を打ち込んだガダエフがガンガン攻め込みます。
しかし、2ラウンドの開始直後にコシュクンが右クロスで逆転ダウンを奪い、ラッシュで畳みかけてレフェリーストップ!
結果はコシュクンの2ラウンドTKO勝ち!
駆け出し同士の二人による、駆け引き無しのぶつかり合いでしたね~💦
以上、新たな一歩を踏み出したフランスMMA『100% Fihgt 44』レビューでした~!
今年はフランスMMAにとって、まさに大きな躍進となる一年でした。
FMMAFの長年の努力が実を結び、昨年についに国内MMA開催の公認されたことで『MMA GP』等の新たなフランスMMAイベントが参入を果たしました。
さらにMMAの最高峰UFCでは、フランスMMA出身のフランシス・エンゲヌーとシリル・ガーヌの二人がヘビー級の王座&暫定王座を獲得しました!
二人は共にフランスMMAの公認を目指し尽力してきたフェルナンド・ロペス・オウォンニビィさんに師事した選手です。
国内の逆境に負けずMMA解禁のために闘い続けてきた数々の人達の尽力を経て…ついにフランスMMAは大輪の花を咲かせました!!
来年1月には、フランスMMA出身の二人により、最高峰UFCのヘビー級王座が競われます。
来年もフランスMMAにとって飛躍の年となる事を願っています~~~✨🥰✨