2020年に世界中を襲ったCOVID-19パンデミック。
MMAにおいても多大な影響と多様な選択に迫られたことは、ブログでも紹介してきました。
多くのMMAプロモーションが休止に追い込まれながらも、各プロモーションが試行錯誤を繰り返しながら一つ、また一つと復帰していく…
2021年はまさにMMAというスポーツの力強さを感じることができた1年間でした。
今回は、2020年初頭以降の「アフターCOVID-19」から新たに活動を開始したMMAプロモーションたちを7つ紹介します。
過酷な時代に力強く芽吹いた新たなMMAの舞台たち。
MMAが国や文化を越えた国際的なスポーツとなる上で分岐点となるであろうこれからの10余年、未来に向けて歩み始めたMMAプロモーション達をぜひ観ていきたいです!!
それでは紹介です~ノシ
- #1 XMMA(エクストリーム・ミックスドマーシャルアーツ)
- #2 Open FC(オープン・ファイティング・チャンピオンシップ)
- #3 Brasilian FS(ブラジリアン・ファイティング・シリーズ)
- #4 Zaruba FN(ザルバ・ファイト・ナイト)
- #5 LFL(レベルス・ファイト・リーグ)
- #6 ATF(アミール・ティムール・ファイティング)
- #7 CFL(ケージ・ファイティング・リーグ)
- おわりに
#1 XMMA(エクストリーム・ミックスドマーシャルアーツ)
代表 バートン・ライス
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『XMMA 1』より ジェームズ・ヴィックvs.アンドレ・フィアリョ
『XMMA』は2021年5月から活動を開始した、元々はカナダにルーツを持ったアメリカ合衆国のMMAプロモーションです。
『XMMA』には、元々2007年にカナダのケベック州でバートン・ライス代表によって創立された『初代XMMA』が存在します。2021年から始まった『新生XMMA』は、バートン・ライス代表によって再興された二代目のXMMAです。
『初代XMMA』はフランス語圏カナダ人たちを中心とした現在で言うフィーダーリーグ的な存在で、後に『UFC』で活躍するノルディン・タレブ、ジョン・マクデッシ、ケイジャン・ジョンソン、ミッチ・ガニョン、ライアン・ジモーといったカナダMMA選手たちの若き日の研鑽の舞台となりました。
現代カナダMMAの築いた礎の一つである『初代XMMA』でしたが、2009年にケベック州のMMA会場で起きた乱闘事件を発端とした規制活動の余波を受けて活動休止を余儀なくされてしまいました…(´;ω;`)
そのような過去から実に10年を経た2021年に、アメリカ合衆国のフロリダ州を新たな拠点とした『新生XMMA』が電撃復活を遂げたのでした!
『XMMA 2』より ルイ・サノダキス vs. コーディ・ギブソン
『新生XMMA』はメジャーMMAで活躍していたベテラン選手たちや、諸事情で活動を休止していた選手たちが多く集う舞台として注目を集めています。
『UFC』元コンテンダーのジェームズ・ヴィックやジョン・ダドソン
『Bellator MMA』前王者のダニエル・ストラウスやウィル・ブルックス
『PFL』前リーグ出場者のスティーブン・サイラーやアンドレ・フィアリョ
活動休止から復帰したフランシスコ・リヴェラやマーカス・ブリメージ
などなど、数多くの名選手たちが参戦していますね~。
『XMMA 3』より アンジェロ・トレヴィーノ vs. ホセ・カセレス
尤も、現在の『新生XMMA』はまだまだ往年の名選手たちのてんこ盛り状態です。
MMAプロモーションとして『新生XMMA』がどう進んでいくのかは、タイラー・レイやアンジェロ・トレヴィーノ、ケヴィン・フェルナンデスといった新しい才能たちの活躍次第であると感じますね~。
10年越しの復活を遂げた『新生XMMA』のこれからの発展に期待していきたいです!
#2 Open FC(オープン・ファイティング・チャンピオンシップ)
本拠地 ロシア サマラ州
代表 アレクサンドル・グリャノフ
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『Open FC 4』より ヴラジミール・セリヴェルストフ vs. エフゲニー・エローヒン
『Open FC』は2020年12月末にスタートし、2021年から本格的に活動を初めたロシアのサマラ州を拠点とするMMAプロモーションです。
ロシアのサマラ州では、現在はハビブ・ヌルマゴメドフが権利者となりダゲスタン共和国へ拠点が移された『Eagle FC』の前身となる『Gorilla FC(Battle on Volga)』が開催されてきました。
『Gorilla FC(Battle on Volga)』のアレクサンドル・グリャノフ代表はハビブ・ヌルマゴメドフに自身のプロモーション運営権を譲り渡すと、新たなサマラ州拠点のMMAプロモーションを創立して再出発しました。そのプロモーションこそが『Open FC』というわけです!
『Open FC 10』より ヌルスルタン・ルジボエフ vs. アレックス・ジ・パウラ
『Open FC』は2021年に急成長したMMAプロモーションの一つです。年内で12大会を開催し、ヘビー~バンタム級までの男子6階級に王者が誕生しました。バンタム級では賞金1億円グランプリ(8人制トーナメント)が開催され、フライ級グランプリ(4人制トーナメント)も現在進行中です。
最近ではベラルーシの『Belarusian FC』やカザフスタンの『Alash Pride』など、近隣国のMMAプロモーションとも提携し、現地大会を共催しています。
『ACA』や『Eagle FC』では禁止である女性のMMA試合が組まれることも魅力です。『Open FC』では優勝賞金40万円の女子ストロー級グランプリ(4人制トーナメント)も開催されました。
『Open FC 12』より マリーナ・シュトヴァ vs. ヴィクトリア・ドゥダコヴァ(女子ストロー級GP決勝戦)
先日の『Bellator MMA』ロシア大会でアナトリー・トコフと熱戦を繰り広げたタジキスタン出身のシャラフ・ダヴラトムラドフは、『Open FC』で実績を挙げてメジャー契約を掴んだ選手です。
『Open FC』にはロシアを中心にカフカス山脈圏や中央アジア、南米ブラジルの選手が集い、新たなロシアMMAのビッグプロモーションとして頭角を現しています!
#3 Brasilian FS(ブラジリアン・ファイティング・シリーズ)
本拠地 ブラジル サンパウロ
代表 ルーカス・ルチクス
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『Brasilian FS 1』より ジョアブ・ソウザ vs. ルイス・パウロ・バルボーザ
『Brasilian FS』は2021年8月から活動を開始した、ブラジルのサンパウロを拠点とするMMAプロモーションです。
『Brasilian FS』はブラジルの若手プロモーターであるルーカス・ルチクス代表によって創設されました。ルチクス代表は『UFC』『ACA』『KSW』などのビッグプロモーションとの契約に携わっており、ジョニー・ウォーカーやリヴィーニャ・ソウザ、タリタ・ベルナルドなどの若手選手達のマネージャーを務めた経歴を持ちます。
『Brasilian FS 1』より リオナルド・ヴァスコンセロス vs. マイリントン・アゼヴェド
ルチクス代表は過去にも『Future FC(現Future MMA)』や『Bison FC』といったブラジルの地域MMAプロモーションの運営に携わってきました。
2019年に創設された『Future FC』はジョルジュ・オリヴェイラ代表との共同運営で、フィーダーリーグ『LFA』と提携して国際的なサーキットへの架け橋を作るなど、新しいブラジルMMAリーグとして注目を集めました。
ルチクス代表はその後『Future FC』の運営から離れると、新たに『Brasilian FS』を立ち上げたのでした!
『Brasilian FS 3』より ダニエル・メロ vs. カウアン・フェルナンジス
『Brasilian FS』は名前の通り出場選手のほとんどがブラジル選手であり、『UFC』などメジャー経験者からキャリア駆け出しの若手に至るまでバリエーション豊かな経歴の選手が一同に会しています。
ブラジルMMAのスタンダードともいえる「ブラジリアンムエタイ×ブラジリアン柔術」の使い手達による白熱した攻防が展開されており、純正ブラジルMMAを堪能しながら未来のブラジルMMAプロスペクトを期待させる魅力を感じますね~。
『UAE Warriors』で絶賛活躍中のヴィニシウス・ジ・オリヴェイラのように、ブラジルMMAの未来を担う新鋭たちの飛躍に期待しています!
#4 Zaruba FN(ザルバ・ファイト・ナイト)
代表 ユーリィ・シプコフ/アルチョム・ヴィザルト
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『Zaruba FN 1』より ラミール・ウスボフ vs. アレクサンドル・コシュベイ
『Zaruba FN』は2020年10月から活動を開始した、ウクライナのオデッサを拠点とするMMAプロモーションです。
『Zaruba FN』はユーリィ・シプコフとアルチョム・ヴィザルトという2人の代表によって共同運営されています。2人は共にイベント会社を経営するプロモーターであり、それぞれの経験を活かして「南海の真珠」オデッサに新たなウクライナMMAの舞台を作り上げることに成功しました。
『Zaruba FN 2』より アナトリー・エギヤザリャン vs. アレクサンドル・コロンタイ
ウクライナはMMAが誕生する2000年以前、ソビエト連邦時代から『Absolute FC』などのミックスファイト大会が開催されてきた歴史を持ち、「MMAの始祖」としてブラジルや日本とも並ぶ重要な国であると感じます。当時の『Absolute FC』筆頭戦士イゴール・ボブチャンチンは日本でも有名ですね~。
MMAに所縁あるウクライナですが、MMAの格闘スポーツとしての急速なメジャー化には対応しきれていないのも現状です。なかなかプロMMA選手として自立することが難しい状況のなかで、『Zaruba FN』はメジャーへと繋がるウクライナMMAリーグへの成長を目指している注目のプロモーションといえます。
『Zarba FN 4』より ドミトリー・デルカッチ vs. ダヴィッド・アラフヴェルディエフ
『Zaruba FN』の出場選手はウクライナの若手MMA選手が中心ですが、今後の成長によって海外選手の招聘も視野に入れているとのことです。まだまだ発展登場のプロモーションではありますが、これからの成長に注目ですね~。
ウクライナでは他にも2021年11月に『B1 MMA』という新プロモーションが活動開始するなど活性化をみせています。来年も「MMAの始祖」の一角であるウクライナMMAの飛躍に期待していきたいです!
#5 LFL(レベルス・ファイト・リーグ)
本拠地 オランダ アムステルダム
代表 バート・デウス/ドノヴァン・パナヨティス
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『LFL 1』より クライド・ブルンズヴァイク vs. ポーラン・ベガイ
『LFL』は2021年5月から活動を開始した、オランダのアムステルダムを拠点とするMMAプロモーションです。
『LFL』はオランダ人実業家のバート・デウスと元MMA選手であるドノヴァン・パナヨティスの2人によって創設されました。デウスがオーナーを、パナヨティスがプロモーターをそれぞれ務めています。
『LFL 2』より ボラージ・オキ vs. アイラム・ロドリゲス
「Levels(レベルス、複数の段階)」という名称には、アマチュアからメジャーの大舞台へと連なる「選手のキャリア段階」を踏まえた育成リーグを目指す、という意味が込められているといいます。
母国オランダやオランダ語圏の国々(カリブ海三国、ベルギー、スリナムなど)を中心に、近隣ヨーロッパ諸国や中東、中央アジア圏に至るまで幅広く選手を招聘しています。
出場選手はMMAキャリアを始めたばかりのフレッシュな若手選手が中心です。まだまだ粗削りながら思い切りのよいアグレッシブな試合が多いのが魅力的ですね~。
『LFL 3』より マーテル・フルーンハート vs. クリストフ・キルシュ(ダイジェスト映像)
直近の『LFL 3』ではキックボクサーとして『GLORY』で活躍していたマーテル・フルーンハート(マーセル・グローエンハート)がMMA選手としてデビュー戦を行っており、ダッチ・キックボクサーの新たなオランダMMAへの登竜門としての発展にも期待しています。
オランダではパンデミックへの警戒態勢が続いており、『LFL』もすべて無観客開催されています。次大会の『LFL 4』も残念ながら開催延期が発表されてしまいましたね~…(´;ω;`)
苦しい状況の中でも新たな一歩を踏み出した、若きオランダMMAプロモーションを応援していきたいです!
#6 ATF(アミール・ティムール・ファイティング)
代表 ムザファル・ラジャヴォフ
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『ATF 1』より ボブルジョン・アブドゥラジゾフ vs. トヒルジョン・ムロドフ
『ATF』は2021年5月から活動を開始した、中央アジアのウズベキスタンを拠点としたMMAプロモーションです。
『ATF』はウズベキスタン史の英雄「ティムール長(アミール)」の名前を冠しており、ムザファル・ラジャヴォフ代表によって創設されました。ラジャヴォフ代表はIMMAFに連なるUMMAA(ウズベキスタンMMA協会)の副会長も務めています。
『ATF 1』より サンジャルベック・エルキノフ vs. ルステム・クダイベルゲノフ
ラジャヴォフ代表は元MMA選手であり、現在は自身で「クラブ・アミール・ティムール」を経営しています。2020年9月にラジャヴォフ代表はIMMAFの協力を得てウズベキスタン初のアマチュアMMA選手権大会を開催しており、それから半年後にウズベキスタンのプロMMAリーグ『ATF』をスタートさせたのでした。
『ATF』には母国ウズベキスタンの若手MMA選手たちがズラリと並び、激しい試合で鎬を削っています。タジキスタンやキルギスタンなど近隣の中央アジア選手も少し出場していますが、現時点ではウズベキスタンMMAの国内若手育成リーグであると感じます。
『ATF 2』より サルドルベック・ソディコフ vs. ムハンマドアミルハン・アラハジャエフ
『ATF』にはウズベキスタン人の若手MMA選手を中心にアグレッシブな試合が行われています。ロシアMMAの影響を受けて中央アジアMMAは急速な発展をみせており、ウズベキスタンにおいても「最大公約数を獲る」東スラヴMMAスタイルの余波を感じるレベルの高い攻防がみられますね~。
ウズベキスタンでは『UFC』初のウズベキスタン選手マフムート・ムラドフが代表を務める『MPL(ムラドフ・プロフェッショナル・リーグ)』も2021年10月に活動開始しています。他にもいくつかのウズベキスタンMMAプロモーションが旗揚げされ、2021年はウズベキスタンMMAにとって黎明の年になったと感じます!
#7 CFL(ケージ・ファイティング・リーグ)
代表 ヒムダッド・アリ・ハッサン
『CFL 1』より ナモ・ファジール vs. ハカル・ハジャル
『CFL』は2021年1月に活動を開始した、イラクのクルディスタン地域に拠点を置くMMAプロモーションです。
『CFL』はクルディスタンのスポーツ振興チームにより創設されました。ヒムダッド・アリ・ハッサン代表は散打のキックボクシング選手としてクルディスタンの旗を掲げて闘っていた経歴を持ち、現在はクルディスタン出身のアスリートへの支援やスポーツ新興を目的に活動しています。
『CFL 1』より モルタザ・ヤドゥーラ・プル vs. アブドゥルサマート・ラテフ
『CFL』は「国を持たない最大民族」クルディスタン人による「国境を越えた」クルディスタン人の為のMMAプロモーションです。
『UFC』で活躍してきたヴォルカン・オズデミルやマクワン・アミルハニといった選手たちはクルディスタンの血統を持つMMA選手たちであり、『UFC』は国旗表記をクルディスタンにするなど彼らの民族ルーツを尊重してきました。
オズデミルたちクルディスタンMMAの先達者たちの孤軍奮闘を観てきただけに、クルディスタンMMAを支援するネットワークが徐々に形成されてきている事にはなんだかジーンとくるものがありますね~(泣)
『CFL 1』より マレワン・アリ vs. モハマド・ラフマニ
『CFL』ではクルディスタンの旗の下、イラクやイランといったクルディスタン地域をはじめ、ヨルダンやフィンランドといった多くの国々からもクルディスタンの血統を持つ選手たちが集まっています。
『CFL』の未来は決して楽観視できるものでは無いと思いますが、民族という繋がりで結束するクルディスタンMMAの存在は、ルーツの旗を立て示すに値するスポーツへとMMAが成長したことの証明であると感じます。ここからのクルディスタンMMAの歩みに更に注目していきたいです!!
おわりに
MMAというスポーツは、元々は「自由」を目指して始まった純粋な闘争の歴史を持ちます。
そして、その「自由」さを追い求めた中から新たなる「規律」が生まれたこと…これこそがMMAが最も誇るべき偉業であると感じます。
古今東西、あらゆる地域がMMAという輪郭の見えない「自由と規律」を持つ闘争の新たなる形を模索してきました。
時代なかで発展した技術と受け継がれた伝統とが合わさり、急速な進化とともに奇跡のように形を持つことでMMAは生まれました。
これからの10年間、MMAは真に国際的なスポーツ足りえるのかを問われる段階に入ったと感じます。
2023年に活動開始を予告する『WFL(ワールド・ファイト・リーグ)』のような新たな挑戦者が現われることは喜ばしいことで、ここから10余年に大きな「うねり」が起こせるかは非常に重要になってくるでしょう。
MMAは世界の「共通言語」足り得る可能性を持ち…しかし、この奇跡のような瞬間が一瞬の火花で終わってしまう可能性が未だ残っています。
今回紹介したMMAプロモーション達も、来年には活動を休止しているかもしれません。
しかし、成功にしろ失敗にしろ、MMAの価値を間違いなく影響を与えていく代え難い存在になるでしょう。
MMAが世界に問われる日は徐々に、しかし確実に近づいて来ており…そこに辿り着くためにはまだまだ様々な視点からの試行錯誤が繰り替えされていくべきであると感じます!
2021年も終わりが見えてきましたね~(はやい)
今でもこれからも、MMAの大いなる発展と挑戦を観守っていきたいと感じます!