UFC王者として、新風を迎え撃ったアレシャンドリ・パントージャ。
UFCの歴史で24人目、6年8ヶ月ぶりの👑ダイレクト挑戦者が迎え入れられました!
それでは感想です~ノシ
#1 パントージャの伝家の宝刀、「七色のバックテイク」炸裂!
アレシャンドリ・パントージャはバックテイクの達人です。
佐々木憂流迦戦で魅せたレッグロックからの鮮やかなバックテイクに代表される、多様なポジショニングの連結力は、最も特筆すべきパントージャの魅力ですね~。
今回の試合でも、伝家の宝刀が炸裂しましたね~~!!
2ラウンド、パントージャは左リードフックの予備動作を散らした左ジャブを放ち、朝倉にクリーンヒットを撃ち込んで居つかせます。
朝倉はフックを振るいパントージャを迎撃しようとしますが、パントージャは左リードフック&レベルチェンジで懐に潜みTDを狙います。
パントージャは朝倉の右手をリストコントロールしつつ、サークリングで離れようとした朝倉の足をレッグスイープで見事に刈り取ってTDを成功させます!
背中をマットにつかせたくない朝倉は、反射的にタートルポジションを獲りますが、パントージャはここで一手先を獲りバックテイクに成功、続けてバックパック(スタンディング・バックポジション)の体勢を狙います。
朝倉はケージを活かして脚のフックを防ぎつつリストコントロールしてこれを耐えますが、パントージャはボディロックへ移行しつつ左足に小外掛けて朝倉の体幹を崩し、これを朝倉が踏み止まった間隙を縫ってバックパック&ボディトライアングルを完成させました!
パントージャはこの一連のバックテイクで3度、朝倉の先を獲っています。
①朝倉のサークリングを誘発させ、脱出先にレッグスイープの罠を仕掛けて刈る。
②朝倉のタートルポジションに戻る癖を読み、先手を獲ってバックテイクする。
③小外掛けで崩した体幹を朝倉に踏み止まらせ、その間隙にバックパック&ボディトライアングルを完成させる。
いずれもパントージャが朝倉を巧みに誘導した鮮やかなグラップリングテクニックであり、まさに伝家の宝刀が炸裂した!という感じでしたね~✨
バックポジションで支配したパントージャは右前腕で絞めのプレッシャーをかけて朝倉にツーオンワンで防御させ、朝倉の警戒心が薄くなった左腕のアンダーフックを素早く解くと、左前腕で裸絞めを敢行!
前後不覚に陥った朝倉を再び右前腕からの裸絞めで捕らえ、最後はチョークを外そうとする朝倉の右手を左手で受け止めながら、その左前腕でチョークを押し込みパームトゥパームのように変化させるという離れ業で極めきり一本勝ちで完勝しました!!
まさに御業炸裂!というパントージャのバックテイク&裸絞めでしたね~✨👏👏👏✨
#2 UFCフライ級への適応を見せた朝倉、UFCへの「弾丸登山」は蛮勇に終わる。
朝倉海には、今回のUFCダイレクト挑戦に際して克服すべき課題がおおまかに5段階で存在しました。
①フライ級への適応(減量、およびリカバリーの成功)
②UFCクラスの規格への適応(フィジカル、フレーム、基礎能力、決定力等)
③統一ルールへの適応(判定基準、反則の膝蹴り等)
④5分×5ラウンドへの適応(カーディオ、戦術)
⑤ケージへの適応(「円形」と「壁」を想定した新たなスタイル構築)
この5つの課題は、多くのUFC選手はチャンピオンシップまでに少しずつ経験を積んでいく中で克服していくものです。
最高峰の山嶺であるUFCを登頂するために、経験と力を蓄え、準備を少しずつ積み上げていくという感じですね。
今回の朝倉のUFCダイレクト挑戦は、いうなれば「弾丸登山」⛰。
全ての課題を一気に克服し、更に万全な状態のチャンピオンに打ち勝つという過酷な取り組みでした。
この課題のうち、①②③を朝倉はクリアできていたと思いますね~。
何より、フライ級への減量を成功させ、リカバリーもきちんと出来ていたことは、今後のUFCフライ級への継続参戦も期待できる結果であったと感じますね~。
TJ・ディラショーや
パトリシオ・"ピットブル"・フレイリがダイレクト挑戦のために減量に失敗してしまいましたが、朝倉がこのような難しい減量の課題をクリアできて本当に良かったです!
④については、2ラウンドで決着した為、5ラウンド動けたのかはまだ不明です。
⑤については、懸念が露出した大きく課題の残る結果であったと思いますね~;
ケージMMAで闘う上で、もっとも大切なのは「円」と「壁」の攻防です。
このうち、「壁(ケージ際での攻防)」については日本でも広く認知されていますが、もう一つの最重要項目である「円(フットワークの攻防)」については、不思議とあまり認知されていません。
「円」とはケージの特性…すなわちコーナーの「角」が無い、ということです。
この「円」の中で相手を追い詰めるには、MMA独自の特殊なフットワークと優れた「打蹴投」の連携が必要となります。
朝倉のMMAスタイルの場合、最も大きな課題は「壁」よりも「円」…つまり相手を「角」に追い詰める得意のフィニッシュが出来ないということでした。
朝倉の既存のMMAスタイルは、大きく2種類の攻めに大別されます。
一つは、コーナーの「角」に相手を追い詰めてラッシュをしかける「先の攻め」。
もう一つは相手との攻防の中で膝蹴りやアッパーカット等の強打をカウンターで返す「後の攻め」です。
このうち、ケージの「円」では「角」が無くなり、前述の「先の攻め」が使えなくなる為、朝倉は新たなフットワーク等による「円」用の「先の攻め」を構築しなければなりませんでした。
しかし、今回のパントージャ戦では、どうしてもスピードやテクニックで先手を獲られ、「後の攻め」である飛び膝蹴り等のカウンター一本で闘わざるを得ない状況になってしまっていたと思いますね~💦
一方、パントージャの「円」を活かした攻撃に対しても、朝倉は後手に回ってしまっていました。
それが1ラウンドの序盤、パントージャが右パンチ連打で朝倉を壁に追い詰め、サークリングで逃れようとした朝倉に左リードフックを撃ち込んだ場面です。
この場面の動きが、つまりはケージの「円」に最適化されたMMAフットワークです。
パントージャが使ったのは「シフティング」というフットワークです。
1発目の右ストレートを撃った際に、その慣性に合わせて右脚を前に出しています。
これがシフティングであり、左構えに一瞬変わって射程が伸びたことで、2発目の右リードフックを朝倉に撃ち込めています。
被弾した朝倉はサークリングで右側に回避を試みますが、この動きに合わせてパントージャは右構えに戻ります。
最後はリーピング(跳躍)をしながら左リードフックを撃ち込み、ケージで下がれない朝倉はこれを被弾しました。
朝倉は前戦のフアン・アルチュレタ戦においても同様に「円」の動きで追い詰められて被弾してしまうシーンがあり、ここもパントージャ陣営がしっかり弱点を突いてきたな、という印象ですね~!見事なMMAストライキングでした!
勿論、朝倉のボディへの膝蹴りも何度か効果的にパントージャにも刺さっていましたね~。
朝倉は右ストレートのフェイントからレバーへの左膝蹴りを撃ち込み、左シフティングパンチもパントージャに撃ち込めていました。
しかし、「二手」で迷った状態に不意打ちで貰う攻撃と、「一手」で来ると分かっていて予測して待ち構えて貰う攻撃では、相手への影響度は大きく変わってしまうでしょう。
パントージャはこれらの打撃をしっかりと待ち構えて受け止めると、朝倉の膝蹴りの対策として右関節蹴りを朝倉の左膝に撃ち込みます。
MMAで普及しているサイドキック系の関節蹴りではなく、琉球空手等にみられる踵で下段に落とす関節蹴りでしたね~!
日本の極真空手でも「ヴァレリーキック(Valeri Kick、踵下段蹴り)」という技名で知られている蹴りですね!
この蹴りを何度か受けて、朝倉も警戒して動きを躊躇してしまう場面が観られました。
パントージャは朝倉に右関節蹴りのフェイントからパンチ連打やミドル&ローキック、頭部への右膝蹴りを撃ち込んで攻める等、朝倉の攻め手を打撃戦においても徐々に封じることが出来ていたと感じます。
朝倉の動きを観ると、左膝への右関節蹴りのダメージも蓄積されていたと感じますね~💦
今回、朝倉の膝蹴りが「Mr. Knee」と海外でも賞賛されてしまっていたことは、逆にしっかりと脅威に対策を練れることにも繋がってしまったと感じますね~。
1ラウンドのファーストコンタクトで、朝倉の右飛び膝蹴りに対してパントージャはカウンターでシングルレッグTDを合わせていましたし、全局面から朝倉を徐々に切り崩していったのは流石でした!
①新しい「円」用の「先の攻め」が構築しきれなかったこと
②その為、「後の攻め」一本で攻めるしかなく、パントージャ陣営は対策し易くなったこと
以上2点が、今回の朝倉の「弾丸登山」が蛮勇に終わった一つのポイントであろうと感じます!
3 おわりに
今回の朝倉のUFCダイレクト挑戦、個人的な心情を言えば「10:0でパントージャ応援」でしたね~💦
朝倉本人はもちろん好きですけれども、日本MMAの「箱庭」の世界観から「弾丸登山」で一攫千金!…という博打のノリは、なんともビミョーなものです。
UFCという最高峰に挑む為に、朝倉にはUFCという山嶺を見据え、準備をしっかり整えて段階を踏んで挑んで欲しかったな~というのが本音です。
日本MMA選手はこれで3回もUFC王座にダイレクト挑戦させて貰っていて、それでいて3回とも王座獲得に失敗しています。
それは、そもそもUFC側に日本MMAの「強さ」があまり信用されていない、という背景があると感じてしまうんですね~。
UFCが日本MMA選手にたくさんダイレクト挑戦権を与えるというのは、裏を返せばチャンピオンシップに辿り着く前にどこかで敗けてしまうだろうから、「商品価値」があるうちに先に当ててしまえ、という判断でもあろうと感じます。
本当に強くて信頼されているのであれば、プレリムからガンガン試合を組んでも勝っていってチャンピオンシップに登ることが出来るのですから。
こーゆー「特別待遇」って、本質的には軽んじられている感じがするので嫌ですね…💦
是非とも、日本MMA選手にはUFCから「強さ」への信頼を勝ち獲って、準備を万端にして堂々最高峰の登頂に辿り着いて欲しい。
そういう風に願っています!⛰
とはいえ、「箱庭」から単身飛び出し、自らの実力を世界に証明しようと果敢に挑んだ朝倉海とJAPAN TOP TEAMの皆さんには、万雷の拍手を送りたいです!!
言い訳のきかない、UFCという最高峰の「技術の鏡」の前に自らの姿を写すことを恐れない。
その勇敢さが、蛮勇を越えて頂点に到達していくことを、これからの活躍を願っています!!!
そして、「証明の一戦」に挑んだ朝倉達のその姿に、是非とも日本MMA選手達が奮起してくれることにも期待しています✨
アレシャンドリ・パントージャの入場曲!
50セントの「Many Men」!!
「大勢の男達が俺を狙ってる…!」という、緊迫感と達観、悲壮感のある歌詞に、もの悲しいメロディーが合わさった美しくも退廃的な一曲ですね~。
王者として、様々な「敵」に囲まれている…パントージャの歴戦が生んだ貫禄とマッチした入場曲で好きですね~😊
朝倉海も、入場曲の冒頭で佐伯栄一の「Theme of RIZIN」を披露!!
RIZIN FFのテーマソングで、クロスプロモーションを印象付ける演出でした。
いや~、これは絶対やったら熱いよな~と思っていたので、嬉しいですb✨
なんとレニー・ハートさんのコールも曲の中に混ぜるという荒業で入れてくるという、なんとも粋な計らいでしたね~。
「Theme of RIZIN」は「PRIDE」の趣を残しつつ、軽快なドラミングから壮大に展開していく非常に良い曲だと思うので、是非これからも入場曲で使っていって欲しいな~と思っています!