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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

UFCファイトパスで楽しむMMAの古典 ②環太平洋MMAフィーダーショー「Icon Sport / Super Brawl」前編【設立~修斗提携】

MMAの「紀元前」こと20世紀、VTからMMAへと移り変る過渡期に存在していた「古典」と呼べる格闘団体たちを紹介するコーナーです。

 

第一回はブラジルの「IVC」を紹介しました!

 

今回紹介するのは、ハワイのMMA団体「Icon Sport(アイコン・スポート)」です。

Icon Sportはハワイ&グアムといった太平洋に本拠地を置き、アメリカや日本、ブラジル等の若手選手たちが才能を開花させた「環太平洋MMAフィーダーショー」といえる存在でした。

 

Icon Sportは元々「Super Brawl(スーパー・ブロウル)」という団体で、20世紀に「NHB(ノー・ホールズ・バレッド)」(VTの別称)の大会として始まりました。

Icon Sportは20世紀MMAの先進的な存在であった修斗と提携するなど、安全性を高めるルールをいち早く模索した団体です。そうしてMMA統一ルールが作られるよりも一足先に「NHB」から「MMA」へと発展していきました

 

このIcon Sportの先見性は、後にUFCやPrideで活躍するトップ選手諸国MMAの発展に尽力するレジェンド選手の若手時代にとって貴重な経験の場になりました。

「Extreme Challenge」「International FC」と並び、20世紀の黎明期を支えたMMAフィーダーショーとして押さえておくべき団体であると感じます。

 

Icon Sportの階級は、設立当初はヘビー級(無制限)、ミドル級(90kg)、ライト級(75kg)の3階級でした。

後にミドル級→ライトヘビー級、ライト級→ミドル級に名称を変更し、新設のライト級(68kg)を合わせた4階級になりました。

修斗と提携後は修斗階級で公式戦を行い、2001年にMMA統一ルールが作成されると、統一ルールの階級に準拠していく事になります。

 

ピート・ウィリアムス「Super Brawl 2」でミドル級トーナメントに優勝しました。当時のヘビー級は無差別級だった為、ウィリアムスの一回戦の相手ドナルド・"ヤボ"・デラクルース体重186kgのでっぷり体型でした。

この試合はNHBルールで行われた為、マウントから頭突き&肘の垂直打ち落とし等で攻め続けてウィリアムスはTKO勝ちしました。

ウィリアムスはこのトーナメント優勝から連勝、後にUFCで活躍する事になります。

 

ライアン・ボウ雷暗暴「Super Brawl 11」ライト級トーナメントを全試合一本勝ちで優勝しました

準々決勝と準決勝をアームバーで制したボウは、決勝でシェイアン・パデケンにもアームバーを深く極めていきます。パデケンが窮地を耐えきりますが、ボウは素早くバックを奪い裸絞めで完勝しました。

ボウSuper Brawlと修斗の提携が実を結んだ象徴の一人でした。若くして日本へ移住しアマチュア修斗を始めたボウは、両団体の提携により修斗へ「帰還」したのでした。

 

ボウがトーナメントに優勝した「Super Brawl 11」では、同時に中尾受太郎が当時の現役UFC王者を相手に大番狂わせを起こした大会でもありました。

中尾はUFCライト級(現ウェルター級)の現役王者であったパット・ミレティッチ四つ投げ&パウンドで試合を支配されながらも、必殺技の三角絞めで見事な逆転勝ちを収めました。

 

ハワイMMAチームのジーザス・イズ・ロードは、Icon Sportと修斗の両団体で活躍する選手を輩出しました。 

レイ・クーパーステファン・パーリングロナルド・ジューン…日本とハワイを股にかけて活躍した彼らは、ハワイMMAの草分け的存在になりました。

四つ組みの強さと、組み際の隙を狙うパンチの連打を中心とした攻撃的なジーザス・イズ・ロードのストライキングは、レイ・クーパーⅢ世など現代のMMA選手達にも継承されています。

 

そして「Super Brawl 13」では、Extreme Challengeなど各地から選手を集めたヘビー級トーナメントが開催されました

この大会はUFC選手のラヴィス・フルトンやECで連勝中のボビー・ホフマンが出場していましたが、彼らを押さえて優勝したのはAMCの若手選手ジョシュ・バーネットでした。

バーネットは首相撲からの打撃と関節技を駆使しして勝ち上がり、決勝戦ではホフマンと一進一退の熱い攻防を繰り広げました。バーネットはIcon Sportの闘いを経てUFCに参戦し、当時のUFCヘビー級王者ランディ・クートゥアを打ち破りUFC王座を手にすることになります。

このトーナメントは後にMMAトップ選手となったヒース・ヒーリングリコ・ロドリゲスも出場していました。ヒーリングは坊主頭でシングレットを着用するレスリング選手らしい姿で闘っており、まだ垢抜けていない時代のヒーリングを観れる貴重な映像でもありますね~。

 

予想以上に長くなってしまったので、一旦区切ることにします💦

次回は修斗との提携を終え、Pro EliteStrikeforceへと続くIcon Sport後半期を紹介したいと思います!