『Road to UFC Asia 2023』が、いよいよ昨日の5月27日からスタートしましたね~!
今年はアフガニスタンやカザフスタンからも有力な選手が参戦する…との触れ込みでしたが、最終的には東アジア~東南アジア~南アジアの3地域からUFCを目指す選手たちが招聘されました。
先日の準々決勝1、2も、どの試合も楽しく観させていただいています😊
The submission wizard gets it done with style points! 🧙♂️🪄
— UFC (@ufc) 2023年5月27日
A sneaky keylock gets the finish for 🇯🇵 Rei Tsuruya! #RoadToUFC pic.twitter.com/snb5V1HOBM
フライ級トーナメント1回戦、鶴屋怜 vs. ロナル・シアハーンにおいて、「スカーフホールドアームロック」によるフィニッシュが披露されました!
スカーフホールド・アームロック(Scarf Hold Armlock)
「スカーフホールド(袈裟固め)」で捕縛しながら、「アームロック(腕緘)」を両脚で極めるというトリッキーなこの技は、以前にもブログで紹介させていただいた私のMMAお気に入りテクニックの一つです✨
詳しく紹介した記事はコチラ↓
わたしはMMAの技名は国際的な呼称を用いるマンなので、「スカーフホールドアームロック(Scarf Hold Armlock)」と呼んでいますが、日本MMAでは和製英語の「Vクロスアームロック(V Cross Armlock)」*1という技名がよく使われていますね~。
この技名は日本以外の地域ではあまり使われていない、いわゆる日本MMA発祥のダイアレクト(地方言語)に該当する技名です。
そして、「Vクロス」等の日本MMAダイアレクトのルーツには、シューティング(修斗)創始者、佐山聡が初代UWF~初期シューティング時代に試案・考案したオリジナルの技名があるんだな~と、常々に感じています。
日本MMA前史におけるマスターピースであるシューティング(修斗)において、創始者の佐山聡は、まだ日本で観慣れなかったサブミッション技を認知させるため、様々な技名を独自に試案・考案しました。
佐山聡に師事したシューティング(修斗)選手たちは、シューティングの試合において佐山によって体系化された技術を実践し、その技術の真価の向上に臨みました。
件の「Vクロスアームロック」等に代表されるこれらオリジナルの技名たちは、MMAが誕生し普及していった2000年代以降においても、途切れることなく日本MMAの系譜の中でダイアレクトとして残り続けています。
『修斗 プロフェッショナル・シューティング第7戦』 1990年7月7日
キャッチウェイト戦(171.9lbs、78kg グローブハンディキャップ戦)
東城直樹 vs. 伊藤裕二
1990年、シューティング(修斗)のプロ部門の最初期における、スカーフホールドアームロックが極まったシーンです!
東城(黒レギンス)はボディロック&小外掛で捨身投を試みますが、伊藤(青レギンス)は首相撲(プラム)をかけて腰のベースを残し、そのまま袈裟固めを獲ります。
伊藤は東城の右腕に両脚をかけ固定すると、腿を支点に力を作用させてスカーフホールドアームロック(アームバー)を極めて見事に一本勝ちしました!
当時のシューティング(修斗)におけるライトヘビー級(180.8lbs、82kg)の東城と、ミドル級(163.1lbs、74kg)の伊藤によるキャッチウェイト戦であり、伊藤が階級の差を乗り越えた勝利でもありましたね~b
この試合の後には、佐山聡によるデモンストレーションが行われ、スカーフホールドアームロックについても丁寧に解説をされています。
スカーフホールド(袈裟固め)の状態から、はじめはアメリカーナ、次いでアームバーへと以降して技の解説がされていますね~。
佐山聡が「Vクロス」と同様に考案したと云われる、現在の「アメリカーナ(Americana)」に該当する「V1(ブイワン)アームロック(V1 Armlock)」*2 も、日本MMAにおいて現在も残されている和製英語の技名、日本MMAダイアレクトの一つですね~。
私が強く印象に残っているシューティング(修斗)におけるスカーフホールドアームロックの極めは、1990年9月8日の「修斗 プロフェッショナル・シューティング第8戦」、修斗ライト級(136.7lbs、62kg、現修斗フェザー級)における田中健一 vs. 坂本一弘の👑初代王座決定戦です。
この一戦は前戦の「王座認定戦(選ばれた認定資格者が勝った時のみ王座が認定される)」で、認定資格者の坂本にアンダードッグの田中が一本勝ちしたことで、改めて仕切り直された王座決定戦でした。
この一戦で田中は首投げから引き込み袈裟固めに捕らえると、坂本にスカーフホールドアームロックを極めて見事な一本勝ち!再戦にも連勝し、初代チャンピオンに認定されたのでした。
奇しくもこの流れは先日の鶴屋vs.シアハーンと同じアテンプト&フィニッシュであり…この「Vクロス」の系譜が見えない道で繋がれていることを感じますね~✨
佐山聡が現在の日本MMAダイアレクトに残した影響は、非常に大きなものがあると感じています。
「レッグダイブ(Leg Dive)」の諸技術を包括した日本MMAダイアレクト「タックル(Tackle)」等にも、佐山聡がシューティング(修斗)を開催し、その技術の普及にいちはやく努めたことがその後に影響している側面は大きいのであろうと感じていますね~。
佐山聡の残したシューティング(修斗)の技術体系は非常に先進的でした。
相手のTDを切り返すカウンター技「スイッチ(Switch)」に該当する「スイッチバック(Switch Back)」、腕や脚の「フレームディフェンス(Frame Defense)」の諸技術に該当する「ストッピング(Stopping)」、股関節を極める「バナナスプリット(Banana Split)」に該当する「サイレンド(Thigh Rend)」…
これらは現代において日本MMAのダイアレクトとしては残れなかったものの、現代のMMAにおいて国際的に普遍性をもった技術の多くを試案されていたことを感じさせてくれます。
なにより、現在のMMAでも発展し続けるダースチョークの起点ともなる「スリークォーターネルソン(3/4 Nelson)」に該当する「クォーターポジション(Quarter Position)」に触れていたり、サンボを由来とするであろう「ツーオンワン(2 on 1)」の組みから投げる「アームホールディングタックル(Arm Holding Tackle)」「ハンギングアームスロー(Hanging Arm Throw)」を紹介しています。日本MMAの発展において必要不可欠な立ち技技術おいても、「ブロッキング(Blocking)」について「シングルカバーブロッキング(Single Cover Blocking)/ダブルカバーブロッキング(Double Cover Blocking)」と細かく分類して解説を行う等、その先見性の高さと普遍的な技術体系を作らんとする意欲的な試みの数々は、MMAにおいて改めて再評価を受けるべき魅力を秘めていると感じます。
無論、現代のMMAの技術と、佐山聡の思案したシューティング(修斗)の技術とは、完全なる一致をみせるものではありません。それらの根幹には近しい要素が多くありながらも、あくまで「=(イコール)」ではない「≒(ニアリーイコール)」の関係性であるといえます。
しかし、佐山聡が試案し、考案した熱量ある数々の技名が、日本MMAのダイレクトとして現在も無意識下に残り続けていることは、MMA前史におけるその先見性の高さを大いに示すものであると、改めて感じるのでした!(パイオニア~✨)
鶴屋怜のような新たな若い日本MMAの才能たちが、先人たちが受け継いできた「≒」の系譜を現代MMAでさらに発展させてくれることを大いに願っております!!🙏