2022年8月21日(日)※日本
クーパー・ボックス・アリーナ開催(イギリス ロンドン)
PFL プレーオフ フェザー級トーナメント準決勝 5分×3ラウンド
いよいよ今年も8月が到来しましたね~🏖️
PFLでも、チャンピオンシップ進出を懸けたプレーオフ準決勝が8月に開催します。
昨年のベスト4、ジェンキンズはリベンジを懸けて本トーナメントに挑みます。
対する工藤は衝撃的なKO勝ちを挙げ一番乗りでトーナメントに初参戦しました!
日本MMAから初めてPFLベスト4に進出した工藤が、前シーズンの強者ジェンキンズと相対するというこの一戦、今年の日本MMA選手のなかでも最注目の試合のひとつです!
というわけで、今回は試合に向けて対戦相手のジェンキンズや、工藤とのカードについてざっくりと紹介していきますノシ
熱い試合になって欲しいな~~~✨👍🏻✨
#1 ババ・ジェンキンズ プロフィールの紹介
Bubba Jenkins "BAD MAN"
年齢 34歳
所属 BKSS(ブラック・コブラ・ストライキング・システム)
師事 デューウィー・クーパー
ルーツ レスリング(フォークスタイル、フリースタイル)
経歴 2007 レスリング世界ジュニア選手権 フリースタイル66kg級 金メダル
2008 NCAA D1レスリング選手権 個人の部 149lb(67.6kg)級 銀メダル
2011 NCAA D1レスリング選手権 個人の部 157lb(71kg)級 金メダル
2011 MMAプロデビュー
2013~2016 Bellator MMA 通算8勝3敗
2018 Brave CF 第2代フェザー級王座(防衛1)
2021 PFL 第3シーズン ベスト4
ババ・ジェンキンズは祖先の国ガーナの血統を継ぐアメリカMMA選手です。
ジェンキンズが9歳のときに亡くなられたお父さんは、ガーナ在住の宣教師でした。
ジェンキンズもまた敬虔なクリスチャンであり、入場や勝利インタビュー時に高揚と共に話される「異言」からは、ジェンキンズのクリスチャンとしてのルーツが感じられます。
試合後の勝利インタビュー、冒頭で「異言」を話すジェンキンズ。
入場時やステアダウン時など、ジェンキンズが異言を話すシーンは要所で見られますね~。
ジェンキンズはバージニア州で高校レスリングを始め、ペンシルバニア州で大学レスリング選手として活躍し始めます。
ジェンキンズは大学ソフォモア(2年)時にジュニア選手権で優勝すると、ジュニア(3年)時にはNCAA D1(ディヴィジョン1)選手権で銀メダルを獲得します。
ジェンキンズはレッドシャツ期間を経てシニア(5年)時に最後のNCAA挑戦を目指しますが、新しいコーチの指導方針と衝突、大学で最後の年にアリゾナ州の大学へ移籍する決断をします。
ジェンキンズは新たにアリゾナ州代表としてNCAA D1レスリング選手権に出場し、個人の部で金メダルを勝ち獲りました。奇しくも決勝戦の相手は、ジェンキンズが去ったペンシルバニア州の代表選手でした。
プロMMAデビューを果たしたジェンキンズはライト級の選手として3連勝し、TUFではジョン・ジョーンズのチームでレスリングコーチを任される等、駆け出し時代から活躍します。
プロ4戦目でBellator MMAデビューを果たすとライト級からフェザー級に階級を転向し、事実上のBellator MMA王座挑戦者決定戦(ジョージ・カラハニャンとの第2戦)まで勝ち上がりました。(通算8勝3敗)
Brave CFでは初戦でいきなりフェザー級チャンピオンシップ(エリアス・ブーデグズダン戦)に挑戦し、王者ブーデグズダンに勝利してBrave CF新チャンピオンに戴冠します。
ジェンキンスはBrave CF王座の初防衛にも成功(ルーカス・マルチンス戦)すると、ガーナ人の優秀なスポーツ選手としてガーナ首長(当時)トグベ・アフェデ14世からスポーツ大使として招かれます。
祖先の国であり、お父さんの亡くなった地でもあるガーナへ訪問も果たしたジェンキンズは、西アフリカMMAの発展という新たな目的を掲げ、2021年にPFLレギュラーシーズンに参戦します。
PFLレギュラシーズンではPFLで2連覇を達成した王者、ランス・パーマーといきなり激闘します。
ジェンキンズは大学レスリング時代にパーマーに連勝しており、レスラー対決となったこの試合で王者パーマーから見事な勝利を挙げます。
ジェンキンズはプレーオフに進出、準決勝でクリス・ウェイドに敗れてPFL第3シーズンの戦績はベスト4となりましたが、その功績を以て2022年の今シーズンにも出場しました。
ジェンキンズは今シーズンも2連勝でプレーオフに進出、前シーズンでは越えられなかった準決勝での勝利と、もう片方のブロックにいる優勝候補ウェイドへのリベンジを懸けて決戦へと挑みます!!
#2 ババ・ジェンキンズ ファイトスタイルの紹介
NCAA D1レスリング選手権(2011年) 個人の部 157lb級 決勝戦
ババ・ジェンキンズ(アリゾナ)vs. デヴィッド・テイラーⅢ世(ペンシルバニア)
ババ・ジェンキンズはフォークスタイル・レスリングのルーツを色濃く残すMMA選手です。
上記はジェンキンズのレスリング最高戦績であるNCAA D1選手権の決勝戦です。
対戦相手は当時フレッシュマン(1年)ながら破竹の勢いで勝ち上がり、後に東京オリンピックで金メダルを獲得する天才レスラー、テイラーⅢ世でした。
ジェンキンズは第1ピリオドからフレームの長い両腕を駆使してテイラーⅢ世に懐に潜り込ませません。
カラータイやスナップ&アウトで巧みに距離をコントロールする堅牢さをみせるも、第2ピリオド開始時にエスケープしたテイラーⅢ世が1ポイントを先取します。
テイラーⅢ世はシングルレッグで潜り込みますが、ジェンキンズはシットアウトからアンクルピックでこれを耐えきり、即座にクロスフェイス・クレードルに切り替えます!
ジェンキンズはガッチリとテイラーⅢ世を捕らえて一気にピン!これが完璧に極まり、ジェンキンズが堂々のフォール一本勝ちを獲っていますね~!
ジェンキンズはペンシルバニア州大学で培われたフォークレスリングのピンの力を持ち、腰を落としたクラウチングスタンスから長いフレームの「前脚」を巧みに駆使して相手をコントロールする力に長けていると感じます。
そして、ジェンキンズはこのスタイルと強みをMMAでもそのまま転用しているタイプの選手です。
PFL 第3シーズン レギュラーシーズン第1戦
ランス・パーマー vs. ババ・ジェンキンズ
ジェンキンズの強さの根幹は、レスリングで培われた「前脚」を用いた力強いピンと打撃にあります。
ジェンキンズはパーマー戦で1ラウンドの左ローキックに合わせて懐に潜り込むと、そこからクロスフェイス・ライドに捕らえてパーマーをコントロールし始めます。
立ち上がったパーマーを金網で挟み込むようにクロスフェイスで追跡、リフトアップでTDしてからライディングで相手を体幹コントロールすると、パウンドを打ち込んで優勢を獲ることに成功しました、
ジェンキンズは低空のダブルレッグ等はあまり放ちませんが、腰を落としたまま懐や背後を獲って押さえ込むレスリングをMMAでも好んで使います。ジェンキンズはパーマー戦に続き、次戦のボビー・モフェット戦でも同じ型で削って優勢を獲っています。
クリス・ウェイド vs. ババ・ジェンキンズ
一方、ジェンキンズは絞め技や関節技といった極めの力はそれほど高くはない印象で、レスリングの押さえ込みは一級品ながら、柔術のようなガードファイトからの切り返しは少ない印象があります。
クリス・ウェイド戦ではまさにその弱みが出てしまった試合だったと思いますね~;
ウェイドは前述のクロスフェイス・ライドを獲られましたが、鮮やかなスイッチで死地から脱出して魅せました。
ジェンキンズのもう一つの弱点として、レスリングのスタンスが色濃く残る為に首を獲られやすいのですが、ウェイドはここも上手く活かして二度目の脱出も成功しています。
ジェンキンズの攻めをキムラで返して正対すると、アナコンダーチョーク&ハイエルボーギロチンの連携技でカウンターを獲って反撃、ジェンキンズが辛くもリバーサルした所をキッチリと押さえ込んで優勢を獲りました。
ウェイドとの再戦が実現するのであれば、ジェンキンズにはポジショニングの隙を与えない体幹コントロールを魅せて欲しいな~と思いますね~。
ババ・ジェンキンズ vs. ボビー・モフェット
打撃に関しては、同格のフレームを持つストライカーのモフェット戦が分かりやすいです。
ジェンキンズの根幹はレスリングのクラウチングスタンスなので、打撃ではそこに上乗せされたサウスポーのキックボクシングを得意とします。
最も得意とするのは左ミドルキックで、近年ではボクシングの進化に力を注いでいる印象ですね~。特に左ストレートの伸びがBellator時代から格段に強くなっています。
右リードフック&ジャブもフレームの長さが活きる重要な武器ですね~。ジェンキンズがレスリング時代に培った強い「前脚」は、ボクシング技術を向上させるほど強い武器になっていると感じます。
ジェンキンズの打撃での最も魅力的な技が、遠距離からスイッチして放つ飛び膝蹴りです。
上記のモフェット戦では2ラウンドの初撃で飛び膝蹴り&そこからレスリングに持ち込むというグラップラー理想の展開を作れていますね~。
ジェンキンズはBrave CFで王座を防衛したマルチンス戦において同じく「飛び膝蹴り&レスリング」を開幕で極めて一本勝ちを獲っており、必勝の型のひとつであると感じます!
#3 ババ・ジェンキンズ vs. 工藤諒司 対戦カードの紹介
TTF Challenge 09
山本健斗 vs. 工藤諒司
ジェンキンズが準決勝戦で相対するのは、29歳の日本人MMAストライカー、工藤諒司(クドウ・リョウジ)です。
工藤は空手をルーツに柔道と大学レスリングを習熟、素早く多彩なフットワーク&ハンドトラップで相手を捌き、一気に踏み込み撫で斬りの強打を叩き込むという、スピードとパワーを併せ持ったMMAキックボクシングの使い手です。
素早く小刻みに動きながらも上体をブラさず、パンチ&キックともに全身連動のシャープな打撃を放てるのが魅力の選手ですね~。
上記の山本戦では、右オーバーハンドで踏み込みながらシフトチェンジし、死角へ回り込んだ瞬間を狙った左リードのチェックフックを炸裂させてKO勝ちしました。
PFL今シーズンに唯一の日本MMA選手として参戦した工藤は、素晴らしいパフォーマンスを魅せて日本MMA初のPFLベスト4入りを果たしました。
第1戦(ブレンダン・ラーフネイン戦)ではラーフネインの右ローを尽く回避し、シフティングから左リードフックでダウンを先取して追い詰めます。
ラーフネインも徐々に修正し右ローキックを打ち込み、工藤も離れ際をフック連打で狙う…という競り合った好試合となりましたね~。それだけにバッティングでの終了は何とも悲しかったです(´;ω;`)
工藤のラーフネイン戦で一番目を見張るのが多彩なフットワークで、VステップやダイヤモンドステップといったMMAにおける打撃の根幹を成す技術を使いこなしているのは本当に見事でしたね~。
PFL 第4シーズン レギュラーシーズン第2戦
アレハンドロ・フロレス vs. 工藤諒司 フィニッシュシーン
第2戦(アレハンドロ・フロレス戦)では真骨頂である撫で斬りの右を炸裂させて一撃KO勝ちし、フェザー級プレーオフへ一番乗りで進出を果たしました!!
工藤はフットワークを活かし左右へ振りながら金網へフロレスを詰め、左ハンドトラップから右ストレートを放ちます。
フロレスが右ボディストレートを打ち込むと、工藤は即座に距離を詰め再びフロレスを金網に詰めます。
フロレスは左スウェーから右膝蹴りでカウンターを狙いますが、工藤が左ハンドトラップからの右オーバーハンドで完璧に頭部を捉え、この一撃により鮮烈なKOフィニッシュとなりました!
一発目の右ストレートを布石にしたフィニッシュの右オーバーハンドといい、最後の打ち終わりに一気にギアを上げたテンポの崩し方といい、工藤の爆発力が見事に勝利へ繋がった試合でしたね~!
ババ・ジェンキンズは今シーズン2つの判定勝ち(カイル・ボクニャク戦とヘイナウド・エクソン戦)を抑えてプレーオフへ進出しました。
どちらの試合も要所でしっかりと優勢を獲っての勝利でしたけれども、前シーズンの爆発力はまだ魅せられていないな~とも思いますね~。
大一番となる今回の準決勝。ラーフネインとフロレスという実力者のMMAストライカーたちを相手に確かな実力を魅せてきた工藤に対して、ジェンキンズが持ち前の強さを発揮してメジャーの壁となれるのかは注目です。
ジェンキンズの一番の勝ち筋は、1ラウンドの開幕から飛び膝蹴り等で一気に間合いを詰めて、工藤をレスリング勝負で削ってしまうことかな~?と思いますね~。
工藤は爆発力を誇るストライカーですが、精密さが強みのキックボクシングができる分、その威力はラウンドを重ねるごとに減っていってしまう弱点もあると感じます。
ラーフネイン戦でも3ラウンドは機動力が保てず徐々に合わせられてしまっていましたし、工藤の今までの試合を観ても「1ラウンドに打撃勝負をさせない」というのはレスリングでアドバンテージのあるジェンキンズが工藤に優勢を獲るなら欲しいところだな~と思いますね~。
尤も、ジェンキンズは今シーズンわりと打撃戦を好んでいるというか、色々と今までに無い動きを試しているようにも観られるので、打撃戦できっちり1ラウンドから攻める、というのも十分考えられるかな~と思います。
その場合は工藤に「蹴りを出させない」プレッシャーをかけるのが重要かな~と感じます。
工藤はとても丁寧で奇麗なキックボクシングが出来る選手で、まず蹴りから入ってテンポを作り、攻防の中で一気に撫で斬りに行くスタイルです。その為、パワーに勝るジェンキンズはまず蹴りを乱してTDを散らすことで工藤のテンポを崩すことが大切かな?と思います。
さらにジェンキンズは左ミドルキックや右リードのアッパーでボディを打つことで工藤のガス欠を誘う、というのもアリかな~?と思ったりもしますね!
工藤にとってはジェンキンズ戦が「メジャー規格のMMAレスラー」とのプロ初邂逅となりますね~。
今まで工藤が闘ったラーフネインとフロレスの2人が工藤と近しい「丁寧なキックボクシングをするオーソドックスのストライカー」だったぶん、今回の「サウスポーで圧力の強いフォークスタイル・レスラー」という対照的な相手との対戦は試金石となる大事な一戦であると感じます!
工藤の一番の強みはやはりフットワークを駆使した一瞬の死角への踏み込みと、空手の引手を使った特有で先手を獲れる撫で斬りの一撃だと思いますね~。
ジェンキンズはレスリング出身だけに打撃の圧力に真っ直ぐ下がってしまうところがあり、また「ワンツー」をしっかり見切れるも「ワンツースリー」の3撃目までは対処が間に合わない、というシーンが見られます。
工藤は山本戦のように右から死角に回って強い「スリー」を打つことができる選手なので、ここを狙って金網にジェンキンズを下がらせられたらテンポを崩せるかも?とも思いますね~。いずれにせよ空手の特有な捌き手や踏み込み、リズムを活かせるかは大きな勝機へのポイントになると感じます。
同時に、レスリング勝負になってもジェンキンズの型に嵌らず勝機を待てるかも大事になってくると感じます。工藤がレスリングで拮抗できるかは実際に組んでみないと分からない所もありますけれども、組み合えるのであれば空手や柔道を経験したことはアドバンテージになり得ると感じますね。
もし組み合いが厳しければ、打撃へのガスを残すために無理に脱出や極めを狙わず回避に徹するのもアリかもしれませんけれども…3ラウンド制なのでこの局面はやはり厳しいところですね~;
この一戦は今年の日本MMA選手の試合でも一番注目しているカードかもしれません。
ジェンキンズは確かな実績を持つメジャーMMA規格の選手ですし、そこにしっかりと良い試合を魅せて工藤が挑む、というのは非常にワクワクしますね~✨
今回の試合でいろいろと日本MMAにとって証明されることもあるな~と思いますし、ジェンキンズにとっては全盛期でいられるか、今後のキャリアを左右する一戦になるかもしれませんね~。
工藤はこの舞台でジェンキンズという「格を喰う」大一番に辿り着いてくれたことが本当に有難いですし、自分のポテンシャルを発揮して思い切り挑んで欲しいです!!
#4 おわりに
というわけで、ガーナを祖先に持つアメリカンレスラー、ジェンキンズの工藤戦の紹介でした!
ジェンキンズはBellator MMAが勢力的に頑張っている「若手カレッジレスラーのMMA青田買い」の先駆けのような選手としてデビューしました。
はじめのころはまだミドルを蹴って、TDを狙って…という若さをぶつける初々しいスタイルでしたね~、ちょっとスターリングに似てるな~とかも思ってました。
そこから二度負けてしまったカラハニャン戦など、苦しい試合も経験しながらドッシリと構えた現在の歴戦MMA選手へと進化してきましたね~。
大きな転機となったのはBrave CFでチャンピオンとなれたブーデグズダン戦で、そこから一気に精悍さを増した深みのあるMMA選手へと進化していったと感じています。
防衛戦で圧倒したマルチンス戦は、今のところパーマー戦と並ぶジェンキンズのベストバウトであると感じます!
今回のPFLフェザー級プレーオフは優勝候補のウェイドに次ぐ位置にいるジェンキンズで、ラーフネインと工藤が上がり調子で格を喰らいに来ている、という熱いカードになりました。
PFLの準決勝はレギュラーシーズンの順位で決まるので、このカードになったのも不思議な巡りあわせだな~と思いますね~。
4人ともリージョン時代から長く観てきている選手なので、全力をぶつけ合うグレートな試合になってくれることを期待しています!!!🔥👑🔥