クロネコMMA図書館🐾

ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

UFC on ESPN 58 アレックス・ペレス vs. 平良達郎 感想!

対戦カードが二転三転した末に決まった、アレックス・ペレスvs.平良達郎

UFCフライ級のランキング戦として、注目のカードとなりましたね~。

ペレスは今年に復帰して、すでに3戦目という頑張りっぷり。

対する平良は、いよいよ上位ランキング選手へ挑む大事な一戦となりました!

面白かったポイントを書いていきますノシ✨

 

# 「無敗のプロスペクト」平良達郎は、日本のUFCレジェンドを越えるか?

UFC無敗の新鋭、平良達郎のフライ級における強みは、大きく3点です。

「①フレームの大きさ」

「②フィジカル&タフネスの若さ」

「③グラップリングの制圧力」

この3点の強みを持つ日本UFC選手として、ある選手がいつも想起されます。

日本のUFCレジェンド、元ミドル級ランキング3位の岡見勇信です。

 

UFCトップコンテンダーの座に君臨した岡見と近しい強さを、平良からは常に感じています。

一方で、岡見の弱みであった以下3点は、平良にも同様に危惧される不安要素でした。

「❶インファイトを遮断する力」

「❷プレッシャーを耐え、反撃する力」

「❸ヘッドショットを回避&防御する力」

 

今回、平良にとって大きな「格上喰い」のチャンスであるペレス戦は、同時に上記3点への懸念がある程度の範囲で証明される一戦でもありました。

偉大なレジェンドである岡見勇信を越え、日本MMA未踏の栄光を掴めるか。

その試金石となる試合として、楽しみな一戦でしたね~✨

 

# 「レベルチェンジ&コンビネーション」 vs. 「フレーム&タフネス」!

メキシコの系譜を継ぐアメリカ選手であるアレックス・ペレス

ペレスにとっても、かつて敗れた上位陣への再挑戦権を懸けての、重要な一戦であったと思います。

ペレスは平良とは対照的に、フレーム差を克服するテクニックと爆発力を持った選手。

今回の一戦は、新たな才能を如何にペレスが受け止め、対処できるかも大きな注目ポイントでした!

 

1Rは、ペレスの俊敏なフットワーク、レベルチェンジによる視線誘導からのパンチの連打、およびリフトアップTDが印象に強く残る展開となりました。

特に、レベルチェンジからのパンチ連打はペレスの主力といっていいコンビネーションであり、撃ち終わりを狙った着弾など良い場面がたくさん観られたと感じます!

 

対する平良も、この局面で真価を魅せる場面がとても多く観られましたね~!

「❶インファイトを遮断する力」に関して

フレームの優位性を活かした左ジャブの狙撃や、右アッパーカットによる遮断がとても良かったですね~。

コンビネーションを読まれて反撃される場面も多かったですけれども、ここぞという時の詰めを右アッパーカットで遮断できたのは、今後に向けた大きなポイントだと感じます!

「❷プレッシャーを耐え、反撃する力」に関して

ここが最も今回素晴らしい真価を魅せてくれた部分だと感じます!

ペレスのパンチの波状攻撃に対して、平良が最もしてはいけないのが「(打撃に圧され)ハイガードで防御一辺倒に固まってしまう」ことでしたが…

平良はダメージを負う攻撃を受けても、怯まずに距離を維持して反撃を続けることが出来ていましたね~。

特に良かったのがガードを上げて腕を固めずにリードハンド(前腕)を前に出し続けてフレームを維持して柔軟に攻防対処できていたという点で、MMAグローブにおける腕のフレームの活かし方をしっかり遂行できていたのはナイスでした!

若さとフレーム&タフネスというアドバンテージに助けられた部分も多分にあると感じましたが、それでも致命打を貰わずに、時に下がりつつも守りに固まらずに闘い切れたことが、2Rの攻勢を呼び込む一助になったと感じました!

「❸ヘッドショットを回避&防御する力」に関して

ここは、やっぱり一番の不安要素として残りましたね~💦

平良やTHE BLACK BELTのチームだけに関わらず、この部分は日本MMA全体の大きな悩みどころであり、アキレス腱ですね…。

平良もフレーム差や若さに助けられている部分もあり、だからこそディフェンス能力…特に「頭部を守る力」は今後も強化していって欲しいと願っています。

 

# フィニッシュを生んだ、平良達郎のテクニックを紹介!✨🧹✨

2R、ペレスの右膝負傷によるTKO決着となったこの一戦。

アクシデントによる決着ではありますけれども、平良の動きは非常に独創的でしたね~。

 

フィニッシュに繋がった平良のTD&バックテイク。

特筆すべきは、「ブルームスティック(Bloomstick)」という技です。

「箒の柄」という意味の通り、片脚を相手の対角線上の脚へ「箒の柄」のようにかませて、さらに膝裏をフックすることでバランスを崩して引き摺り倒すという、「マットリターン(Mat Return)」テクニックの一つです。

 

「マットに再び相手を戻す」…つまりTDから立ち上がろうとした相手を、もう一度TDしてマットに引き摺り戻すことを「マットリターン」といいます。

マットリターンは、立ち技のあるMMAにおいてグラップラーの普遍かつ根本を成すテクニックの一つであると云えます。

ハビブ・ヌルマゴメドフを筆頭に、マットリターンはMMAグラップラーの支配力を示す技であり…平良も優れたマットリターン&ポジショニングの使い手です。

 

ブルームスティックレスリンブラジリアン柔術など、寝技においては偏在している重要なテクニックです。

レスリングにおいては、ブルームスティックから残った相手のもう片脚を、小内&小外に刈って崩すことでTDを獲ります。

上記のタイプのブルームスティックは、ジョン・ジョーンズの得意技です。

先日のシリル・ガーヌ戦でも、ブルームスティックから小内刈でマットリターンに成功してフィニッシュを獲っていましたね!

 

一方、ブラジリアン柔術におけるブルームスティックは、バックテイクに持ち込む為に使用されることが殆どです。

上記の様にバックパックBackpack、背後への飛び乗り)によってバックテイクを奪うのが主流です。

ヘンゾ・グレイシー近藤有己に対して極めたブルームスティック&バックテイクからの一本勝ちは、このタイプでも非常に印象的なフィニッシュでしたね~✨

 

平良が決めたのは、柔術タイプのブルームスティックからのバックテイク&マットリターンでしたね~。

素晴らしいのは、上体を思い切り逸らせることで強い慣性力を作り、強制的にペレスをグラウンドに誘わんとした柔軟かつ強靭な体幹コントロールです。

この大きな後方への逸らしは、ペレスの右腕を左腕の対角リストコントロールで掴んでるから可能であり、同時にペレスが腕の自重で下がらざるを得ない状況も作り出していましたね~。MMAらしいグラップリングの独創性に溢れていたと思います✨

ペレスは片脚で平良の生み出した重力を耐えきれず、しかし尚耐え切ろうとした結果、膝を負傷してしまいましたね…;;

 

# おわりに

非常にペレスの負傷が心配な結果になってしまいましたけれども、平良のテクニックが生んだ勝利であろうことは、上記の紹介からも感じ取って貰えたかと思いますb

しかし、正直に言えばマットリターンからのペレスとのグラウンドの展開、更にはチャンピオンシップラウンドへの突入が観たかったというのも本音ですね~💦

平良の真価が多く観られた本試合においても、まだまだ平良の観られていない隠された要素は残ったな~とも思いました。

 

現役ランキング5位のペレスを「格上喰い」した以上、平良はチャンピオンシップを射程圏に捉えるトップコンテンダーの一人になったといえます。

私としては、タギル・ウランベコフのようにフレーム優位の効かないウェルラウンダーとの「証明の一戦」が先に観たかったですけれども…

ムハンマドモカエフが次戦のマネル・カペ戦に勝利すれば、同フレーム&無敗同士のトップコンテンダー対決が観られるかも?という期待感も高まりました!

UFCフライ級王座を巡る、トップコンテンダー達の次戦に期待したいです✨👑✨

 

平良達郎の入場曲は、ジョン・レノンの「Power to the People」

師匠の松根良太さんに選んで貰って、修斗の頃からずっと採用されていますね~。

歴史ある名曲に負けない輝きを放つべく、挑戦を続ける平良に注目していきたいです👍