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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

8月の「PFL 2024」準決勝をプレビュー!【#3 ウェルター級&フェザー級編】

2024年のPFLプレーオフもいよいよ大詰め!

今週末に開催されるプレーオフ第3大会の選手を紹介します!

今年の最激戦区であるウェルター級&フェザー級は非常に楽しみですね~✨

 

#1 ヘビー級&女子フライ級編

theanswer.hatenablog.com

 

#2 ライトヘビー級&ライト級編

theanswer.hatenablog.com

 

既に試合が行われた上記のプレーオフも、是非観てみてくださいね~ノシ

それでは本編です!

 

 

「PFL 9 (2024)」

日時  2024年8月23日(金)※開催地

開催地 アメリカ合衆国 ワシントンD.C.

会場  ジ・アンセム

リンク Tapology

 

 

 

PFLウェルター

1位 シャミル・ムサエフ (2戦2勝/2KO, 0SUB 10ポイント)

2位 マゴメド・ウマラトフ(2戦2勝/0KO, 1SUB  9ポイント)

4位 ムラド・ラマザノフ (2戦1勝/0KO, 1SUB  6ポイント)

5位   ネイマン・グレイシー(2戦1勝/0KO, 0SUB  3ポイント)

 

新星ムサエフが2連続KO勝ちで10ポイントを勝ち獲り堂々の1位通過を達成!

3位のドン・マッジが負傷によりプレーオフから撤退した為、マッジに直接対決で勝利したネイマン・グレイシーが代役に選ばれました!

 

シャミル・ムサエフ vs. ムラド・ラマザノフ

 

#1シャミル・ムサエフ/"THE SILENT ASSASSIN" Shamil Musaev

ムサエフはPFLに初出場した、元KSWのウェルター級トップコンテンダー選手です!

ムサエフは散打を色濃くルーツに持ち、テイクダウンを遮断して強烈な打撃で一撃KOする純正のストライカーです。

左前足のハイキック&インサイドローキックから左リードフック右ストレートへ繋ぐコンビネーションはどれも強力なKOパワーを誇ります。スピニングフィスト(裏拳)ホイールキック(後ろ廻し蹴り)といった回転打撃の命中精度も非常に高く、正面きっての打撃戦で真価を発揮する選手といえます。

レギュラーシーズンではローガン・ストーリーの小外掛を防いで左ジャブ&右ストレートの連打を効かせ、右シャベルフックでダウンさせ右アッパーカットの追撃で完全KO勝ち。続くムラド・ラマザノフ戦でもシングルレッグを何度も防ぎ、左リードフックでダウンさせてKO勝ちしました。

ムサエフはレスリングの猛者二人のテイクダウンを遮断し、いずれも散打仕込みの打撃で完全粉砕しています。プレーオフでもこの打撃の強さを如何なく発揮して欲しいと願っています!

 

#4ムラド・ラマザノフ/Murad Ramazanov

ラマザノフはPFLに初出場した、ハビブ・ヌルマゴメドフ直系の門下選手です!

ラマザノフはテイクダウンからガードパス&パウンドによる制圧を得意とする強靭なレスリングの使い手です。

散打をベースにした右カーフキックインサイドローキックで牽制し、レベルチェンジからダブルレッグ&シングルレッグTDで得意の寝技へと持ち込みます。ハーフ&サイドでガスを削り、マウントポジションへパスして絨毯爆撃でKOを狙うという王道の戦術を完遂できる選手です!

レギュラーシーズンではラウレアーノ・スタロポリの払腰を物ともせずにボディロックTDすると、ストライドからのパウンド連打で追いつめ、マウントから裸絞で一本を獲り完勝しました!続くシャミル・ムサエフ戦では何度もシングルレッグでTDを狙うもこれを防がれ、ガス欠したところで左リードフックを被弾しKO敗けしてしまいました。

ラマザノフはヌルマゴメドフ直系のレスリング使いであり、今シーズンで最も寝技に特化したダゲスタン選手です。ムサエフとの即再戦というリベンジへのチャンスを、勝利へと繋げることが出来るでしょうか!

 

マゴメド・ウマラトフ vs. ネイマン・グレイシー

 

#2マゴメド・ウマラトフ/"PRINCE" Magomed Umalatov

ウマラトフは過去に2度PFLプレーオフに進出し、今回が3度目となるPFL常連選手です!

ウマラトフはボクシングにルーツに持ったストライカーであり、特に発射後に加速する一撃必殺の右パンチの使い手です。

ダッキングから放たれる右クロス右オーバーハンドはいずれも高い威力を誇り、どの距離からでも正確に相手を射貫けるウマラトフの主砲です。右カーフキックやボディや顎を狙う膝蹴りも強力であり、寝技でも長い手足を活かしたボディロックTDライディングで攻める幅広いテクニックの持ち主です。

レギュラーシーズンではアンドレイ・コレシュコフ右オーバーハンド右ショートクロスの2連撃でグラつかせ、優れたボディコントロールで終始バックを獲って勝利。続くブレナン・ワード戦では逆に右オーバーハンドを効かされるも、即座にニータップに切り替えてTDし、バックライドからアナコンダチョークに変化させて一本勝ちしました!

ウマラトフは冷静な判断力に「必殺の右」を併せ持った素晴らしいMMA選手です。ダルギンの血統を継ぐ才能が、更なる覚醒を魅せてくれることに期待しています!!

 

#5ネイマン・グレイシー/Neiman Gracie

 

グレイシーはPFLに移籍した、元Bellatorウェルター級トップコンテンダーです!

グレイシーは寝技で真価を発揮する特化型のグラップラー。打撃戦では左ジャブ右ローキックを撃ち、クリンチ&レッグダイブでTDを狙います。

バックテイクからボディトライアングル裸絞で一本を獲るのが最も得意で、アームバーニーバーなど多彩な連携ができるのも魅力です。小回りが利くスタイルでは無いのですけれども、フィジカルを活かした攻めに要所で技巧を光らせることができる選手だと感じます!

レギュラーシーズンではゴイチ・ヤマウチへリベンジを懸けた再戦に臨むも、ダブルレッグを阻まれ右リードパンチからの連打に苦しみ二度目の完敗。続くドン・マッジ戦ではシングルレッグ小外刈りでTDに成功し、下からの仕掛けを封じ切ってパウンド連打で勝利しています。

マッジの負傷欠場によって、プレーオフへの出場資格を得ることになったグレイシー。ダゲスタン包囲網を、伝説の一族の末裔が乾坤一擲の極めで突破することが出来るのでしょうか!!

 

ウェルター級の展望

レギュラーシーズンで鎬を削ったムサエフとラマザノフが、プレーオフでも即再戦となりました(ポイント制の妙ですね~)。前戦ではラマザノフが果敢にシングルレッグに組みつくも、これを耐え切ったムサエフが見事なKO勝利を飾っています。

ムサエフは散打一筋でキャリアを積んできたMMA選手であり、その打撃の破壊力は目を見張るものがあります。レギュラーシーズンではTDを耐え切って打撃で完勝しており、既にスタイルの証明を果たしてはいますが…ラマザノフとの即再戦はいよいよストライカーとして正念場の一戦となるでしょう!

対するラマザノフはTDが獲れずにガス欠したことがKO敗けに繋がっていて、寝技に持ち込めなかった事により強者故の動揺が出てしまったと感じます。短い時間での再戦となりますが、やや強引さのあった前回から打撃を混ぜてテイクダウンを確実に獲れるかがリベンジへの布石となるでしょう。この再戦は非常に楽しみです!!

ウマラトフは先の二人と異なりボクシングをルーツとする打撃の持ち主であり、右クロス(右オーバーハンド)のグンッと伸びる貫通力は一級品といえます。それでも今シーズンでは打撃戦で苦労する場面もみられ、総合力が試されるプレーオフとなるでしょう。PFLでは二度の途中欠場でトーナメントを断念してきており、「三度目の正直」となるのでしょうか!

ダゲスタン共和国による包囲網が敷かれた中に、唯一人挑むネイマン・グレイシー。卓越した柔術スキルを持ちながらも、ノーギ&打撃ありのMMAにおいて真価を発揮しきれていない選手の一人であると感じます。代役というチャンスを活かしてこの包囲網を突破できれば、それは最早グレイシー一族の伝説の再臨というべき奇跡でしょう!是非観たいです!

 

PFLフェザー級

1位 ブレンダン・ラフネイン(2戦2勝/2KO, 0SUB 11ポイント)

2位   ガブリエウ・ブラガ  (2戦2勝/2KO, 0SUB 10ポイント)

3位 ティムル・ヒズリエフ (2戦2勝/0KO, 0SUB  6ポイント)

4位   カイ・カマカⅢ世   (2戦2勝/0KO, 0SUB  6ポイント)

 

フェザー級は4名が2勝した為、分かりやすくプレーオフ進出者が決定しました!

フィニッシュ勝利したラフネインとブラガが上位にランクインして、判定勝利したヒズリエフとカマカⅢ世がそれに続いています。

 

ブレンダン・ラフネイン vs. カイ・カマカⅢ世

 

#1ブレンダン・ラフネイン/Brendan Loughnane

ラフネインは2022年にPFLフェザー級王座を獲得し、2度目の戴冠を狙います!

ラフネインはスタンス(構え)をスイッチさせて闘う両利きのストライカーで、左右の動きで相手を攪乱するキックボクシングの使い手です。

左右のカーフキック&インサイドローキックで切り崩し、右ストレート右クロスの主砲で撃ち落とすのが最も得意とする戦法です。ダイヤモンドステップクラウチで構えをスイッチさせながら、相手への攪乱と死角への侵入を同時に行うことで打撃戦に競り勝つ強さを持っています。

レギュラーシーズンではペドロ・カルヴァーリョを右ストレートでダウンさせ、フレーミング&右アッパーカット連打でTKO勝ち。続くジャスティン・ゴンザレス戦では右スイッチクロスなど構えを変化させて攪乱し、右ストレートでダッキングを誘発させて頭部へカウンターの右膝蹴りを着弾、ゴンザレスの額をカットさせてTKO勝ちしました!

ラフネインは昨年に2連覇を狙うもプレーオフ進出に失敗してしまっており、今年はリベンジを狙う形になります。優れたフットワーク使いとして、二度目の優勝を果たすべく更なる真価を魅せて欲しいです!!

 

#4カイ・カマカⅢ世/"FIGHTING HAWAIIAN" Kai Kamaka III

 

カマカⅢ世はPFLに移籍した、元Bellatorフェザー級コンテンダーの一人です!

カマカⅢ世はレスリンをベースしたムエタイ型のストライカで、より長く打撃戦の時間を作ることで試合の主導権を握るタフな選手です。

右カーフキックティーの蹴りで崩し、左レバーショット右オーバーハンドといったパンチのコンビネーションを得意とします。KOパワーに秀でる印象は薄いものの、確実にダメージを蓄積させていく後半戦に強い選手であると感じます!

レギュラーシーズンではPFL常連のババ・ジェンキンズに競り勝ちます。ジェンキンズに一度バックを獲られかかるも、見事なシェイクオフで脱出したシーンは印象的でした。続くペドロ・カルヴァーリョ戦もローに合わせた右ストレートリアクリンチによる攻撃で勝利しました。

カマカⅢ世は大岩を削って崩すようなタフな打撃が魅力で、この強みを活かして闘い切れるかが重要になってくると思います✨

 

ガブリエウ・ブラガ vs. ティムル・ヒズリエフ

 

#2ガブリエウ・ブラガ/Gabriel Braga

ブラガはPFLに2度目の参戦となる、昨年のPFLリーグで準優勝した選手です!

ブラガはムエタイをルーツに持ち、相手の隙を鋭く見抜いて射貫くストライカーです。

貫通力の高い右ストレートボディへの膝蹴り右ミドルキックの使い手です。初めは遠距離からボディへの三日月蹴りローキックで牽制し、徐々に攻防が激しくなったところで相手の隙を狙撃してKOを狙うスタイルを得意とします。

レギュラーシーズンではジャスティン・ゴンザレスのTDを耐えきり、1ラウンド終了1秒前に左リードフックを炸裂させるブザービートKOで勝利。次戦のババ・ジェンキンズ戦でもダブルレッグTDをハンドポスティングで耐え、構えをスイッチさせながら打撃戦を展開。最後はジェンキンズの右腕負傷によって負傷TKO勝ちとなりました。

ブラガは昨年の決勝戦にピネドに敗れたことで、スタイルの新たな模索を試みている印象がありますね~。ブラジルの才能あるスナイパーが、更なる進化を遂げてくれることに期待しています!

 

#3ティムル・ヒズリエフ/Timur (Imam) Khizriev

ヒズリエフはPFLに移籍した、元Bellatorフェザー級コンテンダーの一人です!

ヒズリエフはルーツである散打とレスリングに加えて、卓越した両利きのボクシングを使いこなす非常に高度なテクニックを持った新鋭です。

左ジャブ&右ストレートの直線打撃と右アッパーカット左レバーショットといったアングルをつけた打撃を自在に使いこなすハードパンチャーであり、散打仕込みのレッグスイープ縦軌道の前蹴りを混ぜた奇襲も得意とします。組技もクリンチが強く、ダブルレッグ小外掛でTDを決めて攻め続ける攻撃的なスタイルですね~!

レギュラーシーズンではブレット・ジョーンズを左ジャブ連打からダブルレッグTDで捕らえると、パウンド連打で攻めて勝利しました。次戦のエンリケ・バルゾーラ戦では真っ向勝負の打撃戦に挑み、右ローキック左リードフック、更には右スイッチクロスといった「両利き」ならではの高等テクニックを魅せて競り勝ちました!

ヒズリエフは卓越したテクニックと若さ溢れるアグレッシブさを兼ね備えた選手で、メジャーの舞台でもその強さを証明して来てくれていますね~!新世代のエース候補が、一気に優勝を掴み取るのかに注目したいです!

 

フェザー級の展望

決勝進出者のうち3名がストライカーとなったフェザー級。フィニッシュ力の高さで上位にランクインしたラフネインとブラガですが、総合力で優勝候補のヒズリエフ、レスリングも強く地力のあるカマカⅢ世と実力拮抗のトーナメントとなりました!

ラフネインとカマカⅢ世は共にババ・ジェンキンズとペドロ・カルヴァーリョに勝利している同士で、2人ともキックボクシング型のストライカーなので打撃戦になる可能性は高いと思います。蹴りから崩してパンチへ繋ぐスタイルも似ていますが、ラフネインはスイッチを多用して頭部を撃ち抜くのが得意で、カマカⅢ世は右構えは変えずにボディを撃ってさらに崩していくのが得意です。

ラフネインは優勝経験者であり、かつカマカⅢ世はラフネインほどスイッチを多用する選手とは経験も少ないと思うので、ラフネイン側にアドバンテージがあると感じます。但し、カマカⅢ世は同系統のスタイル故に相性が悪いわけでは無いので、スイッチに幻惑されずに対応できれば勝負は分からなくなってくると感じます!

ブラガは昨年シーズンでリードハンド(前手)を伸ばして射程を測る闘い方をしていましたが、自分よりフレームの大きいヘスース・ピネドには射程を合わせきれず敗れてしまっています。その克服の為か、今年は長距離から打撃を当てるスタイルを模索しているように感じ、この試行錯誤がヒズリエフ戦にどう影響するかは重点の一つとなると感じています。

ヒズリエフはテクニック&パワーに優れ、優勝候補と言うべき選手でしょう。一方で攻め急いでガス欠してしまった事もあり、まだ精神面で粗削りさを感じる場面もあります。ブラガはTDに対して素早くうつ伏せなりハンドポスティングで捌くのが得意なので、打撃では拮抗する両者がテイクダウンの攻防でどう差が付くのかも重点の一つかな~と感じます!

 

おわりに

既にPFLプレーオフも2/3が終了し、チャンピオンシップまであと僅かとなりました。

今年はアラブ圏の「PFL MENAが始まり、「PFL Europe」と共にリージョンリーグも2つ開催しています。

来年には第3のリージョンリーグ「PFL Africa」が始まることもアナウンスされていて、更にラテンアメリカやアジア、オーストラリアといった後続リーグも検討されているとのことですね~。

これらのリージョンリーグシステムは、PFLの前身である「WSOF(ワールド・シリーズ・オブ・ファイティング)」で既に構想が発表されていたものであり、長年の構想が遂に形になってきたことになります。

100万ドルリーグに加えてリージョンリーグも行うのは非常に挑戦的ではありますが、是非とも全圏にPFLリーグが拡大して「ワールドシリーズ」が開催してくれることを願っています!

まずは今週末、ウェルター級とフェザー級の新翼たちの活躍に期待していです!!