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【南アフリカ】『EFCA 24』試合レビューとか。【ソルジャーボーイの帰還】

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2013年10月10日(木)
=EFCA 24=, -Smith vs. McLellan 2-,
EFC Africa主催, 南アフリカヨハネスブルグ)大会



画像元:© 2013 EFC Africa | EFC Africa 24 Gallery より

×王者 ミドル級 チャンピオンシップ
5分5ラウンド
1ラウンド サブミッション(リアネイキッドチョーク)
○挑戦者
ジェレミー・スミス
Jeremy Smith
本名 ギャレス・マクレラン
Garreth McLellan
ピットブル
Pitbull
ミドルネーム ソルジャーボーイ
Soldier Boy
南アフリカ 出身 南アフリカ
XFCアフリカ 所属 ファイトフィット・ミリシア
28歳 年齢 31歳
178cm 身長 183cm
パンチ、パワー、安定したバランス スタイル 攻撃性、パワー、サブミッション
8-1-0 戦績 10-2-0


仇敵ピットブルからベルトと誇りを奪還したソルジャーボーイ。激闘に震えるカーニバルシティ!!
デビュー以来ほとんどの試合を1ラウンドで決め初代王者となった「ソルジャーボーイ」マクレラン。厳つい髭を貯えた剛力の戦士が主役となるはずだったミドル級は、初防衛戦で彼を打ち倒した新星の前に波乱を迎えました。
「ピットブル」スミスは無駄のないナチュラルな筋肉と強力なパンチで無敗のままEFCAミドル級のベルトを手にしました。ミドル級の中では小柄ではありましたが、それ故の高速回転の拳は非常に強力な彼の武器です。
二人にはすぐさま再戦の機会が訪れます(EFCA 15)。しかしスミスの負傷により試合は流れ、試合は幻に終わりました。その後スミスは初防衛戦に勝利し、マクレランは二度の試合に勝利することで再び挑戦権を手にしました。ここに1年越しの因縁の再戦が実現しました。EFCAの歴史でもここまでドラマチックなカードは初めてではないでしょうか。あるいは「ポッツvs.ヴァン・ジルⅡ」以来かもしれません。

大歓声と罵声が混ざり合いカーニバルシティ場内が最高潮に達し、両者の視線が激しい火花を散らし睨み合います。
1ラウンド、パンチラッシュで追い詰めるスミスをボディクリンチで捕えることに成功したマクレランは、テンカオで攻めます。これがローブローになり試合はいったん中断してしまいますが、すぐに再開します。やや勢いの落ちた感のあるスミスですが、プレッシャーをかけて果敢に攻めます。しかしミドルキックやハイキック、右のロングフックで距離を捉えたマクレランが、スミスのパンチを掻い潜りテイクダウンに成功します。
ガードからハーフで抑え込んだマクレラン。ソルジャーボーイとジェレミーの大歓声が響き渡る中、強烈な肘打ちがスミスの顔面にヒット。そこから一気にアームトライアングルのフェイントからリアネイキッドチョークに捉えるマクレラン。一度は脱出したスミスですが、もう一度捉えられ残り22秒で痛恨のタップ。ソルジャーボーイが劇的な勝利でリベンジを果たし、かつて失われたベルトと誇りを奪還したのでした。



マクレランは距離を潰しそして離れ、スミスの高速回転パンチの間合いをしっかりと測れていたのが勝利につながった印象を受けました。テイクダウンを狙った場面で決められたことも大きく、またラストのアームトライアングル→リアネイキッドチョークへの切り替えの早さがスミスを捉えきれた最大の理由であると感じました。
何よりマクレランのひたむきさ、フィニッシュへの心構えは素晴らしく、まさにベルトへの執念が生んだ鮮やかなサブミッションでした。ベルトと共に誇りを取り戻したソルジャーボーイは、これからも1ラウンド決着するような白熱した試合でEFCAミドル級を発展させてくれるでしょう。

敗れたスミス。ローブローを受けて若干打撃に乱れが出たところを攻められてしまったことは不運でしたが、下になってからディフェンス能力に差があったことも事実でした。これまで劣勢になる場面が(わたしの知る限りでは)あまりなかったからか、ディフェンス力がまだまだ伸びきっていないような印象を受けました。グラップリングの弱点を克服することも課題だと感じます。
一方で持ち前のパンチ力は相変わらずであり、王者としての熱い気構えも立派でした。まだ28歳。若きピットブルが今度は自分のリベンジににむけて、3度目の対決に執念を燃やし強くなってくれることを願っています。


○王者 フェザー級 チャンピオンシップ
5分5ラウンド
5ラウンド 判定(3-0)
×挑戦者
デマルテ・ペナ
Demarte Pena
本名 アレイン・イルンガ
Alain Ilunga
ザ・ウルフ
The Wolf
ミドルネーム コマンダー
Commander
アンゴラ
南アフリカ
出身 コンゴ民主共和国
南アフリカ
ファイトフィット・ミリシア 所属 パンサー・ファイティングアーツ
24歳 年齢 22歳
170cm 身長 178cm
爆発力、スピード、ムエタイ スタイル 身体能力、リーチ、テコンドー
7-0-0 戦績 5-1-0


アンゴラの猛き狼、コンゴコマンダーを退け5連続防衛を達成。王者の強さと今後の課題。
アンゴラに生まれ南アフリカに亡命した「ザ・ウルフ」ペナ。アフリカの恐るべきムエタイ使いである24歳の狼は、EFCAフェザー級王者として四度の防衛を果たしてきました。
対するは「コマンダー」の異名を持つテコンドー使い、身体能力の高さを持つ22歳のコンゴの新鋭イルンガ。ウェズリー・ホーキーらEFCAファイターに三連勝し、ついにアフリカの若き頂点を決める決戦の火ぶたが切って落とされました。
試合は予想とは反するクレバーな組み合いの神経戦へと突入します。1ラウンド、身体能力を活かしてペナを金網に磔にすることに成功したイルンガですが、王者の予想外の身体能力にテイクダウンを奪えません。逆に豪快なリフト・テイクダウンを見せたペナが釣り鐘チョークに移行したところでラウンドが終了しました。
2ラウンド、3ラウンドと共に消極的な試合内容が続きチャンピオンシップ・ラウンド(4ラウンド)へと突入したところで、ペナがボディクリンチからついにテイクダウンに成功。ハーフで脱出を試みるイルンガを抑え込みながらパンチと肘でヒットを重ねます。
5ラウンドにもテイクダウンから同様の攻めを見せたペナ。イルンガの身体能力の高さと打撃に苦しめられた王者でしたが、ユナニマス判定でEFCA初の5度目の防衛を果たしました。



イルンガの敗因は予想外にペナをテイクダウンできなかったことでしょう。2ラウンドにはテイクダウンを取りましたが、ペナのディフェンスにまったく動きを見せられずにブザーを聞いてしまったのは痛かったです。ブレイクをとるべきタイミングだったと思う程でした。
そして何より挑戦者としてクレバーすぎる試合は印象が悪かったです。リーチで勝り蹴り技を使うイルンガは、王者の踏込を待つばかりで自分からはついぞ攻めることがありませんでした。
若くしてクレバーな試合ができるのは良いことです。しかしリスクを逃れるばかり攻めるべきときに攻められない選手は大事な局面でチャンスを失ってしまうでしょう。挑戦者としてリスクを取れなかったことで、イルンガはベルトを獲るチャンスを失ってしまったのでした。

一方王者であるペナにも大きな課題が見えました。今までの彼はムエタイで培った圧力と持ち前の身体能力、反射神経が合わさったプレッシャーで試合をコントロールしてきました。しかし今回一回り体格の大きいイルンガに対し、踏み込むことができなかったのです。テイクダウンもかなりヒヤリとするもので、イルンガの消極性に救われたところもあったという印象を持ちました。
一言で言ってしまえばリーチに勝る相手への接近戦に穴があるということです。プレッシャーは勿論ありましたが、ボクシングでみられるヘッドスリップなどで近づければ、より楽に試合を終わらせられたように感じました。
無論今の純ムエタイスタイルも魅力的ですが、MMAは多種多様な技を扱えてこそ頂点に立てるスポーツです。課題が見えたことで、ペナが更に一回り大きい脅威となりEFCAフェザー級を席巻する姿も見てみたいですね。


○青コーナー ヘビー級
5分3ラウンド
1ラウンド サブミッション(トライアングルチョーク)
×赤コーナー
ルアン・ポッツ
Ruan Potts
本名 リッキー・ミショラス
Ricky Misholas
ファングス
The Fangzz
ミドルネーム アポカリプス
Apocalypse
南アフリカ 出身 コンゴ民主共和国
南アフリカ
マーク・ロビンソンMMA 所属 ホットボックス
35歳 年齢 33歳
188cm 身長 187cm
テイクダウン、柔術、ポジションテクニック スタイル ボクシング、パワー
7-1-0 戦績 2-3-0


EFCAのエース、打撃戦に不安を残すも王座へのリベンジに向け無傷の白星を飾る。
EFCA前ヘビー級王者「ファングス」ポッツ。多くのMMA団体でヘビー級選手は顔役ですが、ポッツもEFCAのエースとして期待を背負う選手です。柔術に裏付けされるグラップリングテクニックは光るものがあり、2度の防衛を果たしました。しかし1度は退けたアンドリュー・ヴァン・ジルとの再戦で判定負けを喫し、出直しを図ることになりました。ミショラスはボクシング出身のコンゴ人で、一度は流れてしまったカードが再び組まれることになりました。

1ラウンド序盤にミショラスをケージに磔にして、シングルレッグからサイドを獲るポッツ。ギロチンに一瞬トライするも中断し下になりコントロールすると、トライアングルチョークをガッチリ極めてほぼノーダメージで試合を制しました。
内容は完璧に近いものの、序盤の不用意な打撃のミスや組み付き時の打撃のディフェンスに怖いものがあります。ミショラスはポッツの立ち位置からすると決して強い相手とはいえず、完勝したとはいえ打撃技術のレベルアップは必要不可欠であるという印象を持ちました。
とはいえEFCAヘビー級でも素早いグラップリングができるのは強力な武器であり、ヴァン・ジルとの3度目の決着戦への切符は手に入れたといっていいでしょう。エースが強いモチベーションを持ち、EFCAの期待に応えられるかに注目していきたいです。

[フェザー級]
○ブレンダン・カッツ × ギャレス・ビュルスキー×
3R カッツ 判定(3-0)

[ミドル級]
×JC・ランプレクト × ドゥリカス・ドゥ・プレスィ○
2R ドゥ・プレスィ サブミッション(リアネイキッドチョーク)


~おまけ~ 
EFCAの紹介 [Youtube公式アカウント]
エクストリーム・ファイティング・チャンピオンシップ・アフリカは南アフリカを拠点とし、8つのTV局で107国に配信されているアフリカ最大のMMA団体です。
多くの選手がUFCを目指すなか、EFCAUFCシステムをアフリカ式にアレンジし、独自の世界観を築いているのが特徴です。(尤もいずれはUFCとも関係を持つかもしれませんが…)
階級は現在ヘビー級~バンタム級まで存在し、バンタム級以外の6階級でチャンピオンシップが行われています。試合ルールはユニファイドルールに準拠し、試合場にはヘキサゴンケージ(六角金網)が使用されます。
身体能力の高いアフリカ人選手が、ボクシングや柔道、柔術を基盤にMMA選手として成長を重ねていて、MMA団体として団体の規模、試合内容ともに著しい成長を遂げている印象を持ちます。
映像技術やサイトのレイアウトなど演出面にも力を入れていて、最新のエンターテイメント性と質の高いMMAの試合による王座へのステップシステムが両立している良い団体という印象です。
惜しむらくは日本では視聴期限付き(メイン試合のみ)のネットPPVを購入するくらいしか公式から観る方法がないということです。日本では知る人ぞ知る団体といえるでしょう。
EFCAに出場する選手たちは個性と異国情緒にあふれ、それでいてMMAファイターとしても完成度の高さと可能性を感じます。日本でもこの世界感を堪能できるような視聴方法が生まれることを期待して止みません。

~おまけのおまけ~
ルアン・ポッツのミドルネームである「ファングス」。「牙」を意味する言葉と同じ発音ですが、これはポッツと奥さんが歯科技工士であることに由来します(歯医者さんではなく義歯を作る仕事です)。入れ歯からマウスガードまで幅広く作っている彼の会社が「FANGZZ」といい、そこから彼の周りの選手にブラジリアン柔術の「ファング(フックの業界用語らしいです)」と捩って呼ばれることになったことで、ミドルネームとして使用するようになったといいます。
前から面白いミドルネームだなと思っていたので意味が分かって納得するとともに嬉しいですね。選手のミドルネームには由来があり、スタイルとも密接に関係しています。その由来を探ることで一層奥深いMMAの一面を感じることができますし、これからもチマチマ調べていきたいですね。
「私たちは歯を作り、それを取ることはしません。それは歯科医の仕事です。」byファングス