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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

【MMAの前史#4 日本編】『L-1 Tournament 1995』…「日本ケージMMA」と「世界の女子MMA」の先駆けとなった「アルティメット・チャレンジ」を紹介!【ケージ&女子MMA】

L-1 Tournament 1995 -Ultimate Challenge- 』

エルワン トーナメント1995 アルティメット・チャレンジ

開催国  日本

主催   LLPW/レディース・レジェンド・プロレスリン

主催者  風間ルミ(斉藤ルミエ LLPW社長)

開催日  1995年7月18日(火)

会場   駒沢オリンピック公園体育館

試合場  6角形ケージ

試合時間 無制限1ラウンド

ルール  ヴァーリトゥード・ルールを採用

     頭突き、肘打ち、寝技の頭部への蹴り、喉への攻撃、髪掴み等が許可される

反則   眼突き、金的への攻撃、寝技での肘打ち、ケージを掴む行為

 

近代MMA成立までの歴史を紹介していく「MMAの前史/MMA Pre History」シリーズ。

第4回は、「日本ケージMMA」と「世界の女子MMA」の歴史を先駆けた大会を紹介します!

 

UFC』が1993年に開催され、日本でも1994年に『VTJ』によって伝来された近代ヴァーリトゥード。

多くのヴァーリトゥード戦が行われた日本MMAの歴史の転換期において、UFCと同じケージ(金網)を試合場とした日本の「ケージMMA」の歴史もまた断続的な「点」として始まっていました。

L-1 1995』は女子プロレスリング組織のLLPW/レディース・レジェンド・プロレスリングが1995年に開催した大会であり、従来の所謂「金網リング」とは一線を画した試合場…六角形の「MMAケージ(当時は「ノーロープ金網」「ダイアモンドジャングル」と呼称)で行われた熾烈な闘いでした。

L-1 1995』は日本ケージMMAの先駆けであり、女子ヴァーリトゥード戦、ひいては世界の女子MMAの先駆けでもありました。過酷なる無差別級、そして黎明期だからこそ未開拓の過酷なルール…この闘いに挑戦した8名の女子選手たちは、近代MMAの生まれる前史において未開の闘いへと挑んだ「究極の挑戦者」たちでした!

 

今回は1DAYトーナメントとして行われた、準々決勝~決勝戦までの7試合をざっくりとレビューしていきます~!

 

🏆『L-1』トーナメント準々決勝 第1試合 無差別級 無制限1ラウンド

堀田祐美子/ホッタ・ユミコ  vs. 遠藤美月/エンドウ・ミヅキ

堀田(全日本女子 168cm/78kg ウェルター級相当)

遠藤(LLPW  162cm/70kg ライト級相当)

 

遠藤がレベルチェンジからボディへ組みTDを狙い、堀田はこれをケージを背負って耐えると、左ジャブから右ストレートで反撃します。

遠藤はボディロックから裏投げでTDに成功、裸絞めや腕十字を狙いますが前に落ちてしまい、堀田がトップを獲ります。

堀田はライディング&パウンド、右サッカーキックとアグレッシブな打撃を撃ち込みます。遠藤は下からオープンガードで対抗しますが、堀田は遠藤の左足首を獲ってガードをパスし、パウンドと頭突きで確実にダメージを与えていきます。

遠藤はクローズドガードを獲るも、ケージ際かつ体格差もあり脱出できず、堀田はトップから喉輪で強烈に首を絞め、パウンドで猛攻を続けます。左眼を腫らした遠藤、コーナーからタオルが投入され、堀田の勝利となりました!

遠藤はコーナーに中井祐樹がつき、シューティング(修斗)の動きをとても果敢に遂行していたと感じます。一方で、あくまでもヴァーリトゥードに近い試合であることから堀田の頭突きや喉輪といった攻撃には対処しきれず…体格差もあり深刻なダメージを負ってしまいまっていました…。

改めて階級制の存在する意義、反則攻撃の「反則」たる意義を痛感させられる一戦です。

勝者 堀田祐美子 12:20 パウンド連打

🏆堀田祐美子が『L-1』無差別級トーナメント準決勝に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント準々決勝 第2試合 無差別級 無制限1ラウンド

スヴェトラーナ・グンダレンコ vs. ミシェル・アボロ

グンダレンコ(柔道   195cm/120kg   ヘビー級相当 道着を着用)

アボロ   (ムエタイ 165cm/56kg  フライ級相当)

 

アボロはボディへ左ジャブ、右の内ローキックを撃ち込み、グンダレンコが詰めたところをサイドへ脱出、続け様に右オーバーハンドを放ちます。

アボロは右ローを放ち左右へ動きますが、グンダレンコは前手でアボロの手を払い圧力をかけ、ケージ際で両腕を掴み捕らえることに成功します。

グンダレンコは首を抱えて払巻込、袈裟固からボディにアボロの顔を圧しつけスマザーチョーク(窒息絞め)を極めて一本勝ちしました!

現代でいえばヘビー級とフライ級の階級差のある試合で、グンダレンコは一度組みに持ち込めば独壇場でしたね…無差別級の脅威を感じる一戦です。

アボロは左右へのフットワークもキックボクシングの速射打撃も素晴らしく、この大会の後にボクシングで無敗の王者となった経歴を実感させてくれる美しさでした✨

勝者 スヴェトラーナ・グンダレンコ 0:56 袈裟固(スマザーチョーク)

🏆スヴェトラーナ・グンダレンコが『L-1』無差別級トーナメント準決勝に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント準々決勝 第3試合 無差別級 無制限1ラウンド

神取忍/カンドリ・シノブ  vs. リズ・アフリカーノ

神取    (LLPW 170cm/72kg ライト級相当 道着を着用)

アフリカーノ(中国拳法 165kg/65kg フェザー級相当)

 

アフリカーノが右ローのフェイントから左リードミドルキックを撃ち込み、神取はこれを耐て左足首を捕獲、そこからボディロックに変化させ一気にTDを獲ります。

神取はTDからハーフポジションを獲り、アフリカーノがうつ伏せになったところでバックマウントへ以降します。神取はパウンド連打、そこからバックグラブ&裸絞めを極めて一本勝ちしました!

神取はルーツである柔道を活かした攻めで完封勝ち。試合前には渡米しホイス・グレイシーに師事したという神取、強引な組みに頼らず慎重に遠距離を作り、アフリカーノの蹴りに下がらず間合いを一瞬でゼロに詰めTDへ繋げたところに、グレイシースタイルの「MMA」の訓えの見事な遂行を感じさせてくれて良かったです!

勝者 神取忍 0:42 裸絞

🏆神取忍が『L-1』無差別級トーナメント準決勝に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント準々決勝 第4試合 無差別級 無制限1ラウンド

フィーニ・クレー vs. サンドラ・ユルヴィー

クレー  (キックボクシング    168cm/55kg フライ級相当)

ユルヴィー(シュートファイティング 163cm/58kg フライ級相当)

 

ユルヴィーが右ローをカットしながら四つ組みに持ち込み、クレーは首を抱えるとそのまま首投げで反撃します。

クレーは左脇にユルヴィーの首を抱えてロックし、右腕で髪を掴んで引っ張る、パンチを撃ち込むなど攻め続けます。

ユルヴィーは攻撃を受けながらもボディロックで耐え続けますが、クレーが髪を掴んで捕獲しつつ右アッパーを放ちユルヴィーをダウンさせ、そのままマウント&ボディへのパウンド連打でKO勝ちしました!

「髪を掴んで捕獲してパンチを撃ち込む」という動きは90年代のヴァーリトゥード大会では時折見られた攻撃方法です。(代表的な例は『WCC』のジェームズ・ウォーリングvs.エリック・ポールソン戦など)

「髪掴み」は主に組み付いてきた相手を引き剥がそうとする攻防で行われることが多かったと思います。これも前述の堀田vs.遠藤戦と同じく、反則技が「反則」となった所以が実感できる試合でしたね…💦

勝者 フィーニ・クレー 0:47 右アッパー&パウンド連打

🏆フィーニ・クレーが『L-1』無差別級トーナメント準決勝に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント準決勝 第1試合 無差別級 無制限1ラウンド

スヴェトラーナ・グンダレンコ vs. 堀田祐美子/ホッタ・ユミコ

グンダレンコ(柔道    195cm/120kg   ヘビー級相当 道着を着用)

堀田    (全日本女子 168cm/78kg  ウェルター級相当)

 

堀田はケージを背にサイドへ動きながら右ローキックを撃ち込み、グンダレンコは堀田の動きに合わせ左右の構えを変えながら前手のリードジャブ&左右ストレート連打を撃ち下ろしていきます。

堀田はグンダレンコのパンチに合わせて右ローキックを差し、グンダレンコも右の蹴手繰りで反撃します。

グンダレンコは堀田の右ローキックに合わせて膝裏を捕獲してカットすると、そのまま前傾しTDに成功。サイドを獲ると一気に袈裟固からのスマザーチョークを極めて一本勝ちしました!

グンダレンコは堀田戦ではパンチも多様していましたね~。パンチと同時に構えへをスイッチさせるシフティングの要素もあり、堀田の動きを常に追い続けていていたのが良かったです。

堀田は体格差を埋めるべくローキックから果敢に攻めましたが、やっぱり時間無制限のルールでは厳しいものがありましたね~💦

勝者 スヴェトラーナ・グンダレンコ 1:17 袈裟固(スマザーチョーク)

🏆スヴェトラーナ・グンダレンコが『L-1』無差別級トーナメント決勝戦に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント準決勝 第2試合 無差別級 無制限1ラウンド

フィーニ・クレー vs. 神取忍/カンドリ・シノブ

クレー(キックボクシング 168cm/55kg フライ級相当)

神取 (LLPW     170cm/72kg ライト級相当 道着を着用)

 

神取が左ジャブ&レベルチェンジから組みのタイミングを狙い、クレーはそこに左リードフックを被せ前進を阻み、序盤からピリピリとした制空権争いが展開します。

神取は左の関節蹴りで牽制をかけ、さらに右の関節蹴りを放つとクレーも蹴り終わりに左ローを撃ち返します。

クレーは神取の左ジャブに合わせて右ローキックを鋭く撃ち込みますが、これを耐えた神取は一気に間合いを詰めて組み付くことに成功します。クレーは首を抱えパンチを放ちますが、神取はボディロックで捕獲すると左脚裏を小外に掛けてTDします。

神取はバックライドに以降し、立ち上がらんとするクレーをクロスボディライドに捕らえて脱出を阻止します。そのまま右腕で首を獲ると、裸絞めに引き込んで一本勝ちしました!

明確な「ストライカーvs.グラップラー」となった一戦でしたね~。階級差があるぶん神取にアドバンテージが大きかった試合ですが、クレーも蹴りを獲られないよう慎重に組み立てていたのが良かったです。

神取のクロスボディライドからバックグラブに引き込んでの裸絞めには、現代のMMAにも通ずる技術の普遍性、そしてその理号を遂行できる神取の柔道をルーツとする洗練された動きの完成度の高さを感じました!

勝者 神取忍 0:56 裸絞

🏆神取忍が『L-1』無差別級トーナメント決勝戦に進出した。

 

🏆『L-1』トーナメント決勝戦 無差別級 無制限1ラウンド

神取忍/カンドリ・シンブ vs. スヴェトラーナ・グンダレンコ

神取    (LLPW 170cm/72kg  ライト級相当)

グンダレンコ(柔道   195cm/120kg   ヘビー級相当 道着を着用)

 

神取がサイドへ動きながら関節蹴りや右ミドルキックを撃ち込み、グンダレンコがそこに合わせて組み付こうと前進して追う展開になります。

神取はグンダレンコの右前脚に重点的に蹴りを放ち、右ミドルを掴まれかけるもバランスを維持して脱出します。

グンダレンコは右の蹴手繰りから左フックを放ち、そのまま神取の首を左腕で巻き込んで組み付きに成功します。神取はグンダレンコの道着を掴みつつ胴回りに組み、グンダレンコの首投げに体重を浴びせて崩すと脱出することに成功します。

仕切り直した神取は再び関節蹴りで下段を攻めますが、グンダレンコはタイミングを読み蹴りに左ジャブを合わせて反撃します。

神取はグンダレンコの右前蹴りを掴み、右オーバーハンドを振るいます。グンダレンコは首相撲で捕まえ、神取の首を抱えたままケージに圧して固定、そのまま首へ体重を浴びせてケージに神取を引き摺り落としてTDに成功します。

神取はエビの態勢を獲りますが体格差もあり脱出は難しく、グンダレンコが袈裟固からのスマザーチョークで一本勝ちを極めました!

六角形ながらも「角」のないMMAケージにおいて、グンダレンコの左右へスイッチさせて歩く圧力のかけ方は非常に効果的でしたね〜。体格差は勿論大きな勝因の一つですが、遠距離でも左ジャブのカウンターを当てて神取を自由に攻めさせなかった事も、勝因に繋がるポイントであったと感じました!

勝者 スヴェトラーナ・グンダレンコ 5:55 袈裟固(スマザーチョーク)

🏆スヴェトラーナ・グンダレンコが『L-1』無差別級トーナメントに優勝した。

 

おわりに

というわけで、MMA前史シリーズ『L-1』トーナメントの紹介でした~!

 

L-1 1995』は近代ヴァーリトゥードの始まりである『UFC』初開催から1年半という黎明期において、ヴァーリトゥードとケージを導入するという大きな挑戦を果たしました。

この大会には「VTJ」を開催しルール変換機にあった修斗(シューティング)の小方康至レフェリーを招聘する形で行われ、最後まで徹底したルールの施行が成された大会であったという所に、最もMMAの歴史として語るべき魅力を感じます。

ルールという面では、修斗VTJの系譜とも繋がりの強かった大会であり…その徹底したルールの完徹ぶりには、手探りの時代だったからこその純正MMAの魅力が詰まっていました!

 

L-1』開催の翌年、1996年には日本オクタゴンMMAの先駆けである『U-Japan』が開催されます。

そして、1997年には『UFC』の日本大会「Ultimate Japan」シリーズが始まり…日本のケージMMAの歴史は「点」を繋ぎながら続いていきました。

2005年には日本ケージMMAプロモーションの先駆けである『D.O.GCage Force』が開催され、2007年には西日本MMAの『HEAT』がケージを導入し、それらの「点」は徐々に数を増し、現代の日本ケージMMAの軌跡となりました。

 

女子MMAの歴史という意味においても、重要な始まりの点の一つであると感じます。

1996年には全日本女子プロレスリングにおいて女子無差別級トーナメント『U★TOP Tournament』が開催され、1997年にはアメリMMA初となる女子試合が『International FC 4』ニューヨーク大会で行われる等、女子MMAの歴史も一歩ずつ歩みを始めていきます。

L-1 1995』はその歴史の先駆けの一歩となった大会でもありました!

 

L-1 1995』を振り返ることで、日本のケージMMAの歴史、ひいては世界の女子MMAの原初にも立ち返ることができましたね~!

過酷なトーナメントへ挑んだ8名の「究極の挑戦者」、その闘いがMMAの歴史にしっかりと刻まれて欲しいな~と願っています!!

 

MMAの前史」シリーズ

第1回

theanswer.hatenablog.com

第2回

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第3回

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