クロネコMMA図書館🐾

ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

1896年の「リュミエール映画」で、『アジアMMAの祖先』が観られる!…かも!【最古のMMA記録映像かも…?】

 

「1896年(昭和29年)に撮影された最初のMMA映像」

という動画に出会いました~!🎥

 

屋外で撮影された映像で、お祭りの中の催し物なのかな?

2人の戦士が音楽に乗せて、軽やかな演武を魅せてくれていますね~✨

 

 

映像では、掌打で牽制しながら間合いを詰め合い、レベルチェンジからダブルレッグ&ニータップTDを成功させているのが分かりますね~。

時折、飛び蹴り裏拳などを繰り出して奇襲する打撃の攻防が観られ、さらにはハーフポジションからガードパスを狙い、それをエレベーションスイープで防ぎ返すような寝技の攻防も観られます!

現代のMMAにも通ずるエッセンスに魅ちた映像であると感じますね~!✨

果たして、この演武の映像には如何なるルーツがあるのか…。

今回は、その道のりを辿ってみました!

 

 

#1 「日本の力士達」というタイトルは…本当?

 

件の動画では、「Japanese Wrestlers(日本の力士達)」と紹介されているのですけれども…

楽器や服装を見ると、「日本の文化じゃ無いよね…?」と感じます💦(うーむ)

原典である「リュミエール映画」のタイトルから引用した、とのことですが…

 

件の動画は、アメリカ議会図書館に所蔵されている映像資料とのことです。

ならばと「アメリカ議会図書館」の原典も、閲覧させていただきました!

 

「#56 Lutteurs Javanais(作品56 ジャワ人の力士達) 」

所蔵:アメリカ議会図書館

↑こちらが図書館の原典になります!ぜひ一観あれ~ノシ

 

「映画の始祖」リュミエール映画(シネマトグラフ)の貴重な映像でしたね~✨

映像資料として、世界で最も最古の映像の一つでしょう!(ロマン~)

 

リュミエール兄弟が世界中にスタッフを派遣し、様々な地域の文化を撮影した映像の一つだったとわ…😳💦

映像内でも、「Lutteurs Japonais(日本の力士達)」と書かれていますね~…?

件の図書館では、「Lutteurs Javanais(ジャワ人の力士達)」と別のタイトルが付けられています。

 

#2 映像内の楽器から、ルーツを辿る!

 

ジャワ人という紹介に変わっても、どうも演奏されている楽器がしっくりきません。

ジャワ(インドネシアであれば、ガムランだものな~…?

と、考える中で、一番右の演奏者の方の楽器って「サウン」じゃない?と思いました。

 

 

「サウン」こと「サウン・ガウ(Saung-Gauk)」は、ミャンマーの弦楽器です。

ビルマの竪琴という通称で、日本でも親しまれていますね~。

特徴的なデザインなので、件の映像の楽器も「サウン」じゃないかな~?と感じます。

 

中央の方々の楽器も、ミャンマーの鍵盤打楽器「パッタラ」によく似ていると感じます。

 

 

「パッタラ(Pattala)」の演奏のほか、金物のリズムパートの方も聴こえますね~。

件の映像の左の方がリズムパートであると思いますが、どんな音だったのかな?

そう考えると、無声映画から音が聴こえてくるような、素敵なイメージも湧きました😊

 

#3 「アジアMMAの祖先」たち、その出身は!

 

調べていくうちに、↑で感じたことを裏付ける証言や資料にもいくつか出会えました。

 

ロンドンに遠征したミャンマー演者の方々であった可能性が高いようです。

この映像を撮影されたのは、映像撮影技師のアレクサンドル・プロミオさん。

1896年7月ロンドンの「ザ・クリスタル・パレス水晶宮)」に招聘されていた演者の皆さんを撮影したのが、この映画であったそうです。

 

実は、件の「ジャワ人の力士達」以外にも、同じミャンマー演者の方々を収録した「#53 Jongleur Javanais(作品53 ジャワ人のジャグラー)」という映画があります。

こちらの映像では、ミャンマーの球技「チンロン」(「セパタクロー」や「蹴鞠」のような足で蹴り合う球技)の選手がリフティングを行っています!(なので「ジャグラー」と思われたのかな?)

 

こちらのチンロン選手の人は、件の動画でも左端で巧みな足技によるボールコントロールを魅せており、二つの動画は同じ演者の方々を収録した映像なのだな~というのが分かります(このチンロンの方もシンプルに凄いよな…)

いずれにせよ、ほぼミャンマーの人達であるというのは確実なようですね~!✨

 

#4 気になる「MMA演武」そのルーツは?

 

さて、気になるのはMMAエッセンスに溢れたミャンマー演武のルーツです。

ミャンマーの伝統武術は数あれど、徒手空拳のみであれば、ほぼ二つに絞られます。

一つは日本でもお馴染み、ミャンマーの立ち技「ラウェイ(Lethwei)」です。

もう一つはミャンマーの伝統ある民族レスリング、「ナバン(Naban)」です。

 

「ラウェイ」では、スパーリングの際に掌打で撃ち合う映像がみられます。

 

「ナバン」も「廻し」のようなベルトを使うレスリンで、件の動画に類似します。

 

件の動画の闘いは演武ですが、ラウェイやナバンを嗜んでいた可能性はあります。

果たして、「ラウェイ(打)」と「ナバン(投)」を使いこなした、正真正銘「ミャンマーMMAの祖先」であったのか…

はたまた、かつてのナバンは掌打も包括した、より実践的な総合武術であったのか…

いずれにせよ、現代では眠りについた「ミャンマーMMA」の一遍が記された貴重な史料であることは疑いないでしょう!!

 

#5 おわりに

 

近代に興ったMMAルネサンスは、未だ研究途上にある魅力に満ちた世界です。

 

18世紀に、世界各国に多様な民族でMMAの祖先」が存在し、

19世紀に、様々な格闘ルールにより、研ぎ澄まされた「スタイル」が生まれ、

20世紀に、研ぎ澄まされたからこそ、「スタイルvs.スタイル」の概念が生まれ、

21世紀に、MMAは新たな格闘スポーツとして「再誕」した…。

 

そんなMMAルネサンス…時代のうねりの出発点が、ミャンマーにも存在していた…。

ミャンマーにも「MMAの祖先」が在ったなら、本当にカッコいいことです✨😍✨

 

MMAの歴史…知られざる魅力に満ちた世界の一端を感じさせて貰える映像でした💖