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ミックスドマーシャルアーツ(MMA)という格闘スポーツについて、コラムや試合レビューを書いています。

MMAお気に入りテクニック十選 その一~五【めっちゃ好き】

 

MMAで観れると「おぉ~!!」と嬉しい技から、十個を選んでだらだらと語ります

自分のお気に入りの技や攻防を見つけるのも、MMAを観る楽しみですね~

 

1.スティッフジャブ

スティッフ(stiff=固い)ジャブはステップジャブとも呼ばれ、MMAにおいて重要な役割を果たしているジャブです。

打つ前にやや前足を前方にスライドさせることで、通常のジャブよりも遠い距離を打つことができる反面、強いストレートを続けて打つことは難しくなります。

日本でいうと空手の「刻み突き」が近く、この技の名手にはGSP(ジョルジュ・サンピエール)がいますね。GSPは本当にレベルチェンジ※1と組み合わせたスティッフジャブが見事です。

とにかくシュパッと打ってすぐ最初の位置に戻るのが特徴で、威力は通常のジャブより落ちますが、遠い間合いから相手を打ち抜くことができるのでMMAで重宝されています。

実際の試合においては、パワージャブ※2と混ぜて使われたりして、相手に予測させずに打ち抜くことでダメージをより深く与えることができます。

上手な人はステップの中で瞬時に出すこともでき、相手は懐に全く入れなくなります。

 

※1…「頭の位置を変える」。頭の高さ(レベル)という意味で、上下運動全般を指す。

※2…「強いジャブ」。スティッフと逆に後ろの足を踏み込んで打つジャブ。順突き。

 

GSPのスティッフジャブ解説。

ジョシュ・コスチェック戦は今観ても衝撃の連続ですね~(ほれぼれ)

2.カーフラウンドキック

カーフ(Calf=ふくらはぎ)を打つラウンドキック(Round kick=回し蹴り)です。

カーフキックは相手の前足のふくらはぎを狙うローキックで、MMAで急速に発達するボクシングスタイルに対し、前傾した前足を狙う対抗技として非常に効果的です。

MMAで広く使われてきたローキックは太もも打ち(ジョゼ・アルドなど)と膝の裏打ち(エジソン・バルボーザなど)の二種類で、ふくらはぎは第三の急所です。

ボクシング勝負などパンチの打ち合いをしていると足元は視覚外になるため防御が遅れ、また相手の踏み込みに合わせて放つ事で強烈なカウンターになります。

上記の特徴はローキック全般に言える事ですが、カーフキックは最も視界から離れた部位を打つため察知され辛く、他の部位を打つと思わせてフェイントで放つことで深いダメージを与え、その他の二つの急所(太もも、膝の裏)と組み合わせることでより深いダメージを与えることができます。

近年ではジェレミー・スティーブンスが三種の急所を組み合わせるローキックでギルバート・メレンデスの左足を破壊してTKO勝利しました。スティーブンスはジャブに合わせて前足にカウンターでカーフキックを打ち込み、これが決定打になったと思います。ダグラス・リマなどは昔から得意技としていますね。

また上記のローキックの得意なメンバーを観ると、強力なパンチの圧力があってこそ、ローキックによる攻めがより効果的になることが分かります。

 

ティーブンス兄貴のローキック解説。メレンデスめっちゃ痛そう…(´;ω;`)

カーフキックは最初に一発、また最後に一発打っています

ローキックを放った際のパンチの防御についても解説されていますね~

3.ライディング&リストコントロール

ライディング(Riding=乗りこなす)は、レスリングにおけるトップポジション※3やパーテールポジションから相手を抑え込む動きのことを差し、タートルポジション※4にも近いです。

代表的なのがサイドライド(Side Ride=横乗り)で、うつ伏せの相手を横から片腕でフックして抑え込み、もう片腕でパウンドを打ち込みます。ほかにも相手の足に跨るレッグライド(Leg Ride=足乗り)、相手の片足を4の字フックで固めるクロスボディライド(Cross body ride=体を十字に交差して乗る)など多くのバリエーションがあります。

このポジションではベン・アスクレンが有名です。アスクレンの圧倒的な支配力に代表されるように、ライディングはうつ伏せの相手をコントロールできるため、MMAでも一方的にパウンドを打てる凶悪なポジションといえます。

同時に、手首を掴むリストコントロール(Wrist Control=手首の操作)も併用されています。例えばレッグライドから自分の座った側と反対側にある手首を掴むことで、相手の腕と足を対角線状でロックすることができ、これにより安定した状態でパウンドのダメージを与えることができます。近年ではライアン・べーダーがリントン・ヴァッセルにライディング&リストコントロールで完封勝利したことが印象的でした。

 

※3…レスリングでは、ライディングの状態がトップポジションと呼ばれる。

※4Turtle position=亀の位置」。亀のように丸まった相手を抑え込むポジション。

 

アスクレンのライディング&リストコントロール解説。

リストコントロール以外にも、相手の脱出を阻むさまざまな方法が紹介されていますね~

コーミエちゃんやヌルマゴのライディングについても、ちょっぴり解説してくれています

4.スカーフホールドアームロック

スカーフホールド(Scarf hold=襟固め)アームロックは日本でいう袈裟固め※5の状態から足を使って極める※6トリッキーな関節技です。

相手の上腕を自分の太ももに乗せて支点を作り、の字に足を閉じて手首を固定し力点を作ることでセッティングは終了。徐々に力を込めて、ロックした腕や肩にダメージを作用させて極めていきます。

MMAでのスカーフアームロックの使い手もかなり増えたと感じます。近年ではLFAでイアン・ハイニッシュがルーカス・ホタをこのタイプのアメリカーナ※7で極めたシーンが、流れの美しさも相まってお気に入りです。イアンはレッグマウント※8から素早くマウント&ネックロック気味の袈裟固めに移行し、スカーフアームロックを極めて鮮やかに勝利しました。

 

※5…「けさがため」と読む。袈裟とはお坊さんの法衣のことで、袈裟固めはマフラーのように腕と体を相手の首に巻き付け、片腕を伸ばして抑え込むポジション。

※6…「きめる」。「きわめる」では無い。絞め技、関節技で決定的な状態を作ること。

※7…「Americana=アメリカ人」。アームロックの一種で、相手の上腕に腕をクロスさせて支点を作り、バンザイさせながら手首を掴み力点を作り、力を込めて作用させ極める。アメリカーナという技名はかなり古い起源で、その理由は謎に包まれている。

※8…「Leg mount=足馬乗り」。足の上に跨るマウントポジションのこと。

 

イアン・ハイニッシュがスカーフアームロック極めた試合。技が観れるのは3:20頃からです

ネックロックから袈裟固めを完成させたイアンは、(3:28)ホタの手首をコントロールし4の字フックでマットに固定し、(3:31)そのまま極めきって勝利しました

 

こちらはスカーフアームロックの解説。手首をどう固定しているかが分かりやすいです

ストレートアームからの変化など、極め方についても色々と話してくれています

5.ポスチャー&スタッキング

ポスチャー・イン・ガード(Posture in guard=ガードの中で背筋を伸ばした姿勢)は、ガード※9に入ったまま相手をコントロールするオーソドックスなMMAポジションです。

ここではポスチャーアップ(Posture up=直立)とローポスチャー(Low posture=うつ伏せ)との二種類に分けます。どちらも膝立ちのまま姿勢を維持し、ガードを解いて打破します。

スタッキング(Stacking=上に積み重ねる)はガードをパスする※10前段階の動きですが、MMAではスタッキングの状態のままパウンドや肘打ちを落とすことも有効です。中腰のまま足を抱え、相手の後頭部や肩に体重を浴びせてガードを潰し打破します。

GSPはポスチャーアップとローポスチャー、スタッキングという三種類のガード破壊技を組み合わせ、BJ・ペンやニック・ディアズのガードを打破しパウンドで勝利しました。このGSPの成功により、MMAのパウンドはより発展したと感じます。

近年ではガードの更なる進化に加え、ガード自体を封じるライディングやレッグマウントがトップポジションで台頭してきていますが、トップとボトムとが力強く拮抗するポスチャーやスタッキングもまだまだ健在。フランキー・エドガーがヤイール・ロドリゲスを抑え込む時に使われたり、マイケル・チャンドラーがゴイチ・ヤマウチを三種のガード破壊技で完封した場面も印象的でした。

 

※9…「Guard=護衛」。背中をつけたボトムポジションで、足を使ってトップポジションの相手をコントロールすること。

※10…「Guard pass=ガードを通過する」。ガードを乗り越えてポジションを取ること。

 

GSPがマット・セラのクローズドガードを打破したシーンで解説します

1R、ハーフマウントを取られたセラはクローズドガードを行いますが、(2:37)GSPはローポスチャーから前腕で隙間を押し開き、勢いよく肘打ちを振り下ろします(2:53~)セラはガードを組み直そうとしますが、(3:00)GSPは即座にポスチャーアップして立ち上がり、パウンドで更に深いダメージを与えます(3:03~)

セラは再度クローズドガードを行いますが、(3:07)GSPは前腕で首を押しながら腰を浮かせてガードを解くと、(3:21)鋭い肘打ちを落としつつ脱出しようとするセラをスタッキングで潰し、(3:22~)パウンドのプレッシャーをかけながらハーフポジションへパスすることに成功しました(3:27)

 

こちらはジョアオン・ゼフェリノによるクローズドガードの打破です

1R、ヘルマン・テラードはクローズドガードを行いますが、(2:10)ジョアオンは即座に腰を浮かせ、スタッキングから肘打ちを強く振り下ろします(2:12~)ジョアオンはローポスチャーのまま肘を打ちつつ密着してヘルマンの脱出を防ぐと、(2:24~)ヘルマンがガードを開いた瞬間に再びスタッキングの体勢でガッチリと抑え込み、小さい肘打ちを落とします(2:50~)

ジョアオンはローポスチャーに戻って肘を打ち、(2:54~)ヘルマンが脱出しようとした所を右足のかかとを掴んで脱出を防ぎ、(2:58~)ハーフからサイドポジションへのパスを成功させました(3:01~)

 

とりあえず十選のうち五つの技までの紹介でした

あと半分もチマチマと書いていきたいですね~ノシ

 

2018.3.21

できました!→ MMAお気に入りテクニック十選 その六~十【最高じゃーい!】

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