『UFC on ESPN 52 -Holloway vs. Korean Zombie-』
日時 2023年8月26日(土)
開催国 シンガポール
会場 シンガポール・インドア・スタジアム
『Road to UFC Asia 2022』バンタム級優勝者、中村倫也がUFCデビュー戦に臨みます!
対するは『DW Contender Series』契約者のメキシカンストライカー、ファーニー・ガルシア。
名実ともにアジアMMAのプロスペクトとなった中村に対し、連敗からの逆襲の一手を掴みたいガルシアというカードであり、レスリングとボクシングという得意分野がくっきり浮き出た両者の闘いでもあります。
中村をはじめUFCでは日本選手4名の対戦カードが発表されており、まずは中村の対戦相手、ガルシアについて紹介していきます✨
#1 選手のプロフィール
Fernie Garcia
出身 メキシコ/アメリカ合衆国
年齢 31歳
MMA戦績 10勝3敗(1KO/3SUB)
UFC戦績 0勝2敗
#2 経歴とMMAスタイル
ファーニー・ガルシアはメキシコ系譜のラテンアメリカ選手です。
メキシコに隣するアメリカのテキサス州エル・パソに生まれ、メキシコのチワワ州シウダー・フアレスで幼少期を過ごしました。現在はテキサス州ダラスに移住しており、ルーツであるメキシコの旗を掲げて闘っています。
ガルシアはオーソドックス(右構え)から伸びのあるパンチの連打を放ち、打撃戦を好むボクシングスタイルの選手です。得意な距離、得意なコンビネーションがハッキリしているタイプで、汎用性に脆いぶんハマった時の突貫力の高さが魅力といえます。
基本的には一定の制空権を守って闘うのが得意であり、相手の踏み込みに左リードフックのカウンターを合わせてダウンやダメージを与えるシーンが特に印象的です。UFCではブレイディー・ヒーステンドを開幕の左リードフックでダウンさせていますね~。
相手の左ジャブ等の攻撃に潜り込んで振り抜く右オーバーハンドもガルシアの大きな武器です。メキシカンボクシングらしいダッキング&ルーピング(円周軌道)から横合いを撃ち抜くパンチです。UFC契約を決めた『DWCS』ジョシュア・ウィームズ戦はこの右で一撃KO勝ち、UFC本戦でもジャーニー・ニューソンに右オーバーハンドのカウンターで動きを止めるシーンがありました。
相手の踏み込みに即座に合わせるカウンターパンチ、特に左前手リードフックの反射の速い一撃はガルシアの大きな魅力で、このパンチが機能するかが勝敗に直結するといっても良いと感じます。
『DWCS 2021 -Week 6-』 ジョシュア・ウィームズ vs. ファーニー・ガルシア戦
ガルシアはフィニッシュ率の高い選手ではありませんでしたが、『DWCS』にて大きなビッグヒットを生み、その好印象で一発契約となった「青田刈り」の選手です。
試験で合格することが=実力を表すことでは無いように、ガルシアもUFC契約を勝ち獲ったものの、そのMMA選手としてのスタイルの練度は粗削りで弱さも多くみられ、UFC本戦で成長していくことが求められる選手であると感じますね~。
ガルシアのボクシングに偏ったスタイルはハマれば強いものの、フルラウンド強打を放つためのカーディオ(心肺能力)が不十分、かつコンビネーションが固定されている為に後半になる程に攻め手が欠けてしまう大きな弱点がみられます。
パンチに偏った打撃戦から、少しずつ右ローキックや膝蹴りを混ぜることで幅が広がっているものの、MMAとして重要なノード(戦術の"節")や「際を獲る」攻撃には不足がみられ、その為にやはり後半戦に不安を残すことになっています。
また、得意のボクシングにおいてもバックステップに固さがみられ、特定の距離に居ついてしまい勝機を逃す場面もみられます。ディフェンスにおいても若さとタフさで圧しきる場面が多く、しっかりと回避&防御できないと先行きは不安といえます。
グラップリングにおいては更に発展途上の色が強く、パンチを振らなければ勝てないスタイル故に相手のレベルチェンジTDを貰ってしまうシーンも多いです。一方で腕力は強く操作性も高い為、若さで相手を弾き飛ばせるシーンもあり、今後の発展がみたいですね~。
ここまで「青田刈り」故の弱みの多さを書くことになってしまいましたが💦
一方で、それだけの不安要素を跳ね除けてUFC契約を引き寄せた「一撃」の威力を持っているという才能があることも事実でしょう。
ガルシアにとって大事なのは月並みながら「下がらない」こと…相手の打撃とTDの脅威に臆さず素早く迎え撃つことで、制空権に入った相手を叩き落とすハードパンチの破壊力&コンビネーション能力を最大限に発揮できると感じますし、そのフィニッシュの為に不安要素を削ぎ落していって欲しいと願っています!🥊
#3 中村倫也戦への展望
中村倫也はレスリングをルーツに持ち、それだけに留まらない打撃とグラップリングの進化を魅せています。
そんな中村との試合は、ガルシアにとって0勝2敗から一発逆転を懸けた正念場です。
ガルシアは2連敗中ながら、前戦のブレイディー・ヒーステンド戦でも左リードフックで先制ダウンを獲っており、パンチの撃ち合いに持ち込めれば秘めた拳の爆発力が解放される可能性があると感じます!
一方で、中村のレスリングの制圧力はガルシアにとって大きな脅威とあると感じます。
いずれにせよ、ガルシアはやる事は一択に絞られます。
「パンチでダメージを与え、ハードな打撃戦に引き摺り込む」この一点に尽きます。
この「パンチでダメージを与える」部分が出来るかが重要であり、圧力とハンドスピード如何で大きく試合の展開は左右されるでしょう!
中村にとっては「相手の得意な打撃戦にあえて挑む」か「優位なグラップリングで確実に仕留める」かの二択に分かれます。
前者はガルシアの得意な戦場でもあり、中村にとってKO敗けのリスクは大きくなります。
後者は逆に中村にとって大きなアドバンテージがあり、組技の圧力でガルシアのパンチを鈍らせられれば、勝利へと大きく近づくことになりますね~。
わたし的には、中村に狙って欲しいのは一本勝ちです。
打撃戦をチラつかせ、ガルシアのパンチを読めるタイミングまで鈍らせてからTDする…というのがガルシアに最も勝ち筋を与えないノード(戦術の"節")であり、かつフィニッシュを獲れれば大きな飛躍になり得ると思いますね~。
ただし、UFC初戦という「魔」が潜む試合において、中村の心情に何かしらのラグが生まれれば、アクシデントが発生する可能性は捨てきれない…とも思いますね~。
もしそうなれば、ガルシアにとっては千載一遇のチャンスが舞い降りることになります。その折には「拳の開放」を是非観たいと感じますね~🔥
その上で、もしアクシデントに陥ったとしても、中村にはガルシアの拳を切り抜けていくポテンシャルを期待したいですね!
この試合はUFC選手たるやを問う登竜門であり、前述した盤上をひっくり返すような試合を魅せてほしいとも思っています。
中村が新たな未踏の道を拓くことが出来るのであれば…それは日本MMAの次代の実力を証明することになるでしょう!
#4 おわりに
中村vs.ガルシア戦は中村にとってフィニッシュの期待の懸かった試合であろうとは思いますが、背伸びはせずにしっかりと「ファイトIQ(相手の弱点を突く力)」を魅せてフィニッシュまで持って行ってくれると、一番嬉しいな~と思います!
ガルシアにとっては厳しいカードには感じますが、そのパンチの威力は十分にKOを狙えるものですし、この逆境で花開く才能を魅せて欲しいとも思っています!
UFCと契約する日本MMA選手も、一時期から少しずつ増えて来ていますね~✨
登竜門の時点で高いMMAの最高峰、日本UFC選手の皆さんにとっても一筋縄ではいかない試合ばかりですけれども、一戦一戦を大切に闘っていって欲しいです!
「UFCファイターたる資格」を懸けた闘いに挑む選手たちを、応援していきたいです👍