2020年のUFCで飛躍を観たい選手を特集する第3弾!
今回はMMAの歴史と発展に欠かせない存在であるヨーロッパから10人の選手たちをピックアップします。
ヨーロッパMMAの中心地とも言えるイギリスや、独自の発展をみせるポーランド、アマチュア最大組織であるIMMAFの設立国であるスウェーデンといった国々を中心にMMAは更なる広がりを見せており、UFCでも魅力的なヨーロッパ出身の選手が数多く活躍しています。
MMA開催が禁じられてきたフランスでも、昨年ついにスポーツ省による認可が行われ、UFCパリ大会が開催される予定です。長年MMAというスポーツへの悪いイメージを払拭し、社会的な意義を生み出す為に献身してきたベルトラン・アムースさん達の努力が形を結んだのはとても感動です(感涙)その先進的な姿勢を規範にしていきたいですね~(´TωT`)
というわけで、ヨーロッパMMAの未来を担う選手たちの紹介です!
<同シリーズの過去記事>
#1 北アメリカ編
#2 南アメリカ編
- #1 ジャック・ヘルマンソン
- #2 ミハウ・オレクシェイチュク
- #3 ジャック・ショア
- #4 ナサニエル・ウッド
- #5 シリル・ギャヌ
- #6 ニキータ・クリロフ
- #7 イスマイル・ナウルディエフ
- #8 アレクサンダル・ラキッチ
- #9 イオン・クテラバ
- #10 マイク・グランディー
"ザ・ジョーカー(The Joker)"
#1 ジャック・ヘルマンソン
出身: スウェーデン ウッデバラ
年齢: 31歳
所属: フロントライン・アカデミー
階級: UFCミドル級
ヘルマンソンは北欧MMAを代表する筆頭選手の一角であるグラップラー。
母国スウェーデンから生活の為にノルウェーへ移住した先でMMAと出会い、現在は二国の旗を掲げて闘うスカンジナビアのトップ選手です。
グレコローマン・レスリングをべースとした近接格闘と長い脚を活かした遠距離からの狙撃を得意とし、二種類の距離で相手をコントロールする事に長けています。四つ組みから小外刈り&内股等の鮮やかな刈り技や、長い脚を活かしてニーシールド&ラッピングをかけて捩じり込むアームイン・ギロチンチョークはヘルマンソンの代名詞となる必殺技です。
長い脚は打撃戦でも最大限に活用され、スティッフジャブやステップインローといった脚を伸ばして打ち込む遠距離狙撃によって最大制空権を作り出します。一方で後退時にステップの両足を揃えてしまう事があり、強打者の圧力を苦手としています。
昨年はデヴィッド・ブランチに必殺のアームイン・ギロチンを極めて鮮烈な一本勝ち。続くホナウド・ジャカレ戦では四つ組みからの激しい投げ合いに加え、後半戦にレベルチェンジからアッパーを決める等打撃戦で真っ向勝負して競り勝つ強さを魅せました。
大きな飛躍を見せた一方で強打者のジャレッド・キャノニアーには圧力を受けレベルチェンジTDにアッパーを合わされ無念のKO敗け。北欧のトップ選手として、今年は苦手なタイプへの課題を克服して更なる飛躍を魅せてくれる事に期待しています!
"ロード(Lord)"
#2 ミハウ・オレクシェイチュク
出身: ポーランド バルキ
年齢: 24歳
所属: ヴィラヌフ・マーシャルスポーツ・アカデミー
階級: UFCライトヘビー級
オレクシェイチュクはポーランドMMAの重鎮ミロスワフ・オクニスキに師事するハードストライカー。
一撃必殺の左ショートパンチを誇るサウスポーであり、序盤の爆発力に特に優れる短期決着が印象的な選手です。試合開始の瞬間からフットワークで一気に距離を詰め、相手の死角に潜り込みリバーショット(肝臓打ち)やアッパーの一撃で戦闘不能に追い込むKOパワーは圧巻です。
昨年に一年間のUSADAサスペンションを終えて復帰したオレクシェイチュクは、ジャン・ヴィランテを肝臓への集中砲火でダウンさせ衝撃の1RKO勝ちを挙げます。続くガジムラット・アンチグロフ戦でも左オーバーハンド&ショートアッパーでタフなアンチグロフを完全KOし、その強打の威力を証明しました。
トップ層入りを狙ったオヴィンス・サンプルー戦でも強打で追い詰めましたが、仕留めきれず逆転一本負けを喫したオレクシェイチュク。自慢の強打だけでは勝ちきれない、トップの実力を痛感する結果になりましたね~。
次戦はジミー・クルートとのストライカー対決。ロマンのある一撃を持つオレクシェイチュクの真っ向勝負に期待したいです!
"タンク(Tank)"
#3 ジャック・ショア
出身: ウェールズ アバーティレリー
年齢: 24歳
所属: ティレリー・コンバット・MMAアカデミー
階級: UFCバンタム級
「ウェールズの戦車」ショアは、異名通りの圧倒的な制圧力を誇るパワーグラップラー。
オーバーハンドやヘッドキックの遠距離砲からのダブルレッグ&ボディロックTDで相手をマットに這わせる卓越したレベルチェンジMMAの使い手であり、優れたポスチャーコントロールから放たれるパウンドの集中砲火と、脱出を許さないバックテイク&ボディトライアングルで相手を制圧します。
昨年にUFCデビューしたショアは、ノヘリン・ヘルナンデスのTDDをケージピン&ボディフォールド(サバ折り)で打ち破りマットに捕獲すると2、3RにもレベルチェンジTDを次々と決めて、最後はパーム・トゥ・パームで捩じり込む裸絞めで見事な一本勝ちを挙げました。
ショアはMMAを「Human Chess(人間のチェス)」と称し、アスリートとして「完全試合」を狙うスマートな魅力を持つ選手です。次戦のジェラウド・ジ・フレイタス戦でもウェールズの戦車が完全試合を決める事ができるのか、注目したいですね~!
"ザ・プロスペクト(The Prospect)"
#4 ナサニエル・ウッド
出身: イングランド モーデン
年齢: 26歳
所属: グレートブリテン・トップチーム
階級: UFCバンタム級
ウッドは英国MMA筆頭の期待株、ブラッド・ピケットの愛弟子である新星ストライカー。
精密なパンチの連射で相手を打ち砕くハードパンチャーであり、シフティング&スイッチから慣性を乗せた強打でKOを狙います。右ストレートの連射で圧力をかけてシフトイン、ショートを避け後退する相手を左リードフックでKOする等、巧みに位置と角度を変化させ、死角からコンビネーションで相手を追い詰めます。
打撃戦から柔術をベースにしたグラップリングへ瞬時に切り替えられるのもウッドの特徴であり、裸絞めは得意技の一つです。3/4ネルソンによるTDディフェンスから切り替えるダースチョークもウッドの特徴的な極め技です。
昨年のホセ・キニョネス戦で小外刈りからの裸絞めを極めて一本勝ちし、今年は更にステップアップを狙っていきたいポジションにいるウッド。次戦は遂にレジェンドの一角ジョン・ダドソンとの対戦が決まっており、この試合を乗り越えてバンタム級王座戦線へ殴り込みを狙いたいところです!
"ボン・ギャマン(Bon Gamin)"
#5 シリル・ギャヌ
出身: フランス パリ
年齢: 29歳
所属: MMAファクトリー
階級: UFCヘビー級
ギャヌはフランスMMAの重鎮フェルナンド・ロペスに師事する両利きのストライカー。
スティッフジャブやチェックフックを狙う遠距離狙撃型のサウスポーと、ティープやストレートニー(テンカウ)、右ストレートで攻め込む接近戦格闘型のオーソドックスの二種類のスタンスを使いこなす技巧派であり、スイッチによりスタンスを瞬時に変化させる打撃で相手を翻弄します。
昨年にUFCデビューすると2ヶ月スパンで3連勝を重ねて大きく飛躍したギャヌ。タナー・ボーザー戦では得意のスイッチ・スタンスでビッグヒットを打ち込み打撃戦に勝利。ハファエウ・ペソア戦では肩固め、ドンテール・メイズ戦ではヒールフックを極めるなど、サブミッションの強さも披露しました。
次戦はシャミル・アブドゥラヒモフ戦が決定しているギャヌ。フランスMMAの未来を背負う新鋭は、KOパンチャーであるアブドゥラヒモフの強打を乗り越えて更なる飛躍を魅せる事ができるのでしょうか!
"ザ・マイナー(The Miner)"
#6 ニキータ・クリロフ
出身: ウクライナ クラスニー・ルーチ
年齢: 27歳
所属: インダストリアルズ・チーム
階級: UFCライトヘビー級
クリロフはロシアにルーツを持ち、母国ウクライナの「炭鉱夫(マイナー)」へのリスペクトを込めた異名を取るハードストライカー。
極真空手をベースとした一撃必殺のラウンドキック(回し蹴り)を持ち、三日月蹴りやブラジリアンキック等の多彩な打ち分けを行う蹴り技の名手です。近年は上半身のバルクアップによりレスリングとパンチが更に強化され、全局面で真っ向勝負のできる選手へと進化を遂げています。
昨年はオヴィンス・サンプルーと5年越しのリベンジマッチに挑み、激しい四つ組みの攻防からオーバーアンダー&ダブルレッグTDを奪い裸絞めで見事な一本勝ちを獲りました。続くグロヴェル・テイシェイラ戦では判定2-1で敗れたものの、寝業師テイシェイラにグラップリングで互角に拮抗し、一度は裸絞めであと一歩まで追い詰めたのは素晴らしかったです。
攻めの姿勢を崩さないクリロフはまだまだ粗削りな部分もありますが、真っ向勝負を経て確実に進化を遂げる姿は応援したくなりますね~。次戦はトリッキーなKOアーティスト、ジョニー・ウォーカーと対戦が決定。クリロフのMMAキャリアを左右する大一番となりそうです!
"ジ・オーストリアン・ワンダーボーイ(The Austrian Wonderboy)"
#7 イスマイル・ナウルディエフ
出身: チェチェン共和国 グロズヌイ
年齢: 23歳
所属: トップチーム・ザルツブルグ
階級: UFCウェルター級
ナウルディエフは打撃の速射連打で攻めるオーストリアのスピードストライカー。
「ワンダーボーイ」の異名はホイールキック(回転蹴り)の名手である事に由来し、その名の通り二段式ヘッドキックや水月蹴り等の鮮やかな蹴りで相手を翻弄します。
ナウルディエフはチェチェン共和国にルーツを持ち、9歳で戦乱の地から移住したオーストリアに市民権を持ちます。ナウルディエフはルーツを大切にしながらも、全てを与えてくれたオーストリアの国旗を掲げて闘う多国籍選手です。
昨年にUFCデビューし、現在は2勝1敗のナウルディエフ。チャンス・レンカントレ戦では得意の蹴りを掴まれTDから押さえ込まれてしまい無念の敗北。一方でミシェウ・プラゼリス戦とシアー・バハドゥルザダ戦では序盤にビッグヒットを奪い、後半にレベルチェンジTDを取って勝利しました。
次戦は組技巧者のショーン・ブレイディーとの一戦が決定しています。今年のUFCで生き残る為に、ナウルディエフの試練の一戦となるでしょう!
#8 アレクサンダル・ラキッチ
出身: オーストリア ウィーン
年齢: 27歳
所属: ジム23/アメリカン・トップチーム
階級: UFCライトヘビー級
ラキッチはセルビアにルーツを持つオーストリア人であり、バルカン半島を代表するハードストライカー。
鍛え上げたストライキング技術と内に秘める野生の解放をMMAに求めたというラキッチは、強烈なローキックと無尽蔵の強振フックで相手を打ち砕く強打者です。
下段を崩し上段のラッシュを打ち込む基本戦術をベースに、近年ではブロッキングを強固にしてパンチの圧力を増した攻撃的なスタイルへと進化しており、接近戦の強さが強化されていると感じます。
昨年はジミ・マヌワに右オーバーハンドで接近し、左フックをフェイントにしたヘッドキックを炸裂させ衝撃の秒殺KO勝ちを挙げました。次戦のヴォルカン・オズデミル戦では判定2-1で敗れたものの、遠距離から飛び込むアッパーなど、新たな打撃の引き出しを見せています。
野性味あふれるラキッチの打撃は時に粗さに繋がってしまう事もありますが、UFCの激闘を生き抜くために徐々にブラッシュアップをしてきた成長スピードの速さは魅力的ですね~。次戦はまだ決まっていませんが、今年もラキッチの更なる活躍に期待したいです!
"ザ・ハルク(The Hulk)"
#9 イオン・クテラバ
出身: モルドバ キシナウ
年齢: 26歳
所属: MMAファクトリー
階級: UFCライトヘビー級
「モルドバのハルク」クテラバは強靭なレスリング力と剛腕を誇るパワーハウス。
グレコローマン・レスリングを根幹とするグラップリングに加えて柔道仕込みの鮮やかな刈り技とコンバットサンボの剛腕パンチを併せ持ち、正面きってのぶつかり合いで無類の強さを発揮する選手です。
アンダーフック&フレーミングにより相手のTDを遮断するディフェンス力の高さに加え、体幹の強さが生み出す強烈なパンチや膝蹴りで相手を真っ向から粉砕するパワーファイトは圧巻です。
昨年はグロヴェル・テイシェイラを裏拳でKO寸前まで追い込み激闘を繰り広げるも、ガス欠と自身のミスにより転倒し無念の一本敗けを喫しました。しかし、カイル・ラウントゥリー戦ではツリートップから谷落とし&小外刈りを決めて試合を掌握し、パウンド爆撃で鮮やかに完勝しました。
豪快な試合っぷりが時に粗さに繋がってしまう弱点もあるクテラバですが、ラウントゥリー戦の柔道技と強打の連携の完成度は素晴らしかったですね~。次戦の新星マガメット・アンカラエフ戦に生き残る為にも、クテラバの更なる進化を観たいです!
#10 マイク・グランディー
出身: イングランド ウィガン
年齢: 32歳
所属: チーム・カーボン
階級: UFCフェザー級
グランディーはウェルラウンドな強さを発揮する英国MMAの新星レスラー。
フリースタイル・レスリングをベースとしたトップキープの制圧力からダースチョークや肩固めを狙うレスリングスタイルの選手であり、近年はボクシング技術の急速な進化により優れたレベルチェンジMMA使いへとブラッシュアップを遂げています。
昨年のUFCデビュー戦ではナッド・ナリマニとの英国MMAトップ選手同士の対戦が実現、ナリマニに先制ヒットを奪われるもリードフック&右クロスでダウンを奪い大逆転のKO勝ちを挙げました。立ち上がり際にフレーミングで照準を合わせて右クロス&ジャブの連打で追い詰めたのは見事で、ストライカーとしての才能の片鱗も観れた試合でしたね~。
今年はUFC2戦目となるマクワン・アミルハニ戦が決定しているグランディー。寝業師アミルハニに対してどのように勝ち筋を見つけるかで、グランディーのスタイルが更に明かされることに注目しています!
というわけで、第3弾のヨーロッパ編でした!
改めてフランスMMAの解禁は本当に素晴らしいニュースでしたね~!!
フランスMMAについては4年前のラピリュスの記事でもちょっと紹介していましたが、本当に長年の悲願が達成されたのは感動でしたね~(泣)
#この記事の真ん中らへんに書きました⇩
今回の特集ではロシアをあえて外しているので、そこも含めて続きを書いていきたいですね~。
書いている中で調べて知識が増えて行く事がいちばん好きなので、じっくりと書いていければな~と思います!